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第6話

忙しくなるので投稿ペース落ちます。

 ざわざわと周りが焦りや戸惑いの渦に巻き込まれる。先程までは皆で王子のことを馬鹿だと思っていたけれど、流石にここでやらかすとは思っていなかった。

 王子の近くに控える側近らしき生徒や校長、教師も大慌てしているのが遠目でも分かる。


 王子以外はみんな知っている。私が一番強いことを。


 じぶんが注目されているのに良い気になっているのか、王子は私を指差して偉そうに笑う。



 「ふん、騒がしいと思ったらお前だったのか。まあいい、この場で俺様と貧相な愚民の差を見せつけてやろう。こっちへ来るがいい」



 一応これでも王族なので、平民が逆らう訳にはいかない。今にも突っかかりそうなアルガスとソーニャを宥めて、渋々壇上の方へ向かった。

 ここからそちらへの距離は意外とあるので、生徒が私を見る視線がいたたまれない。注目されているので逃げたくても逃げられない。


 なるべく時間を稼いで歩いている私に痺れを切らしたのか、王子は声を荒げて怒鳴り散らかした。



 「遅いっ! いつまで待たせる気だ。早く来い!!」



 うるさいなぁ。不本意ながらも歩くスピードを速めた。


 私は壇の下手の方に寄った。こいつに見下される立ち位置は癪だけど、また癇癪を起こされても面倒だ。



 「何をしている。早くこっちに上がれ」



 意外だ。この王子がわざわざ自分と同じ高さの場所に立たせるなんて。少しはマトモになったのかな。



 「ふん。高いところの方がお前の無様な姿が知れ渡れるからな」



 前言撤回。こいつは傲慢なクズだ。よし決めた。絶対ボコボコにしよう。無様な姿が知れ渡るのはどっちかな。



 闘志を宿した私は嬉々として壇の横に付いている階段を駆け上がる。背景には青い炎がメラメラと燃えて、私の闘志を表している。王子から三十メートルほど離れた場所に立った。

 満面の笑みを浮かべる私に恐れをなしたのか、王子は後ろに後ずさった。



 「お、おい、無駄にやる気だな。まぁ、俺様が勝つことには変わりない!」



 声が裏返っている。虚勢を張っているだけとしか思えない。その姿が面白くってついつい笑みを深める。



 「王子サマ、時間が勿体無いですし、早く始めましょう?」



 ニカっと無邪気にわらう。ヒィと目の前のやつが顔を青くする。

 本当に時間の無駄なので早く始めてもらいたい。腕を組み足でリズムをとる姿に、王子ファンクラブの方々が不敬よとか言っているが、これに払う敬意は無い。



 「勝負はシンプルにお互いに魔法で戦うだけだ! 死なない程度なら何をしてもいい」



 さっきまで震えいたことが嘘のように、王子は残虐な笑みを浮かべる。多分私をボコボコにしている姿でも想像しているのだろう。死なない程度か……。


 王子は学園長を睨み付け指図した。



 「おい! お前が審判をしろよ!」


 「はっはいっ!?」



 急に指名されて驚いていたが、王子に逆らえるわけもなく。私に困ったような、謝るような視線を向けてくる。そうだよね。たとえ私が勝っても王子の勝ちだもの。


 私が座っていた席に目を向けると、アルガスとソーニャがやってしまえと、アイコンタクトとハンドサインをする。おーけー任せて。



 「で、ではお二人ともいいですね。よーい初めっ!!!」



 学園長の合図で試合が始まった。



 王子は私に向かって片手を突き出し、呪文を紡ぐ。



 『ファイヤーブレスッ』



 青と赤が混じり、綺麗な紫色の炎が私を襲う。轟々と音を立てて、一瞬で迫ってくる。熱気が押し寄せる。



 「キャーーーー」


 「おいっ! 死ぬぞっ!!!」


 「高位呪文が打てるのか!?」



 そう、これは高位呪文。一流の魔術師が使える技。すごいけど……。


 

 この人はこの呪文しか使えない。



 私が焼きゴケてしまうと思っているのだろう。耳を裂くような悲鳴が聞こえる。炎に包まれる直前。王子がニヤリと口角を上げた気がした。


 久々に打たれた高位呪文だ。期待していた。でもこのレベルじゃダメだ。



 「……つまらない」



 私を包んだ炎はキラキラ輝く光の粒に変わった。辺りの気温が下がる。メキメキと壁が端から凍っていく。



「……氷?」



 ステージにある霧が晴れていく。髪の水色がかり透き通るような氷を連想させる。瞳は青く強く輝いていた。氷の精霊と言われた方が頷けるほどの容姿をした少女が立っていた。



 「ねぇ、一発だけってことないよね」



 少女は期待を裏切られたかのように。悲しそうに呟いた。



 「死なない程度なら何をしてもいいんだよね!!!」



 両腕を広げて無邪気に笑う。

 その場で嬉しそうにくるりと回る姿は、



新しいおもちゃを見つけて喜んでいる幼い少女にしか見えなかった。

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