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第5話

 背景に般若を浮かべる幼馴染に、涙を浮かべながら洗いざらい話した。少し嘘をつこうとしても何故だかすぐにバレてしまう。そうなると余計に怒られるので震えながら尋問に耐えた。



 「つまりそいつは、フェリアの使い魔ってことだねー」


 「はい……」



 普段怒らない人って怒ると恐いよね。私と話していたソーニャはそこで区切ると、アルガスに視線を向けた。笑顔だが目が笑っていない。



 「アルガスさんは人の家に勝手に入った挙句、フェリアが嫌がってるのに姫って呼んでるんだー」


 「そ、それは……」


 「話していいって言ってないよー」



 カウンターを見事に食らったアルガスはその場で悔しそうに顔を歪ませた。高位種の悪魔を黙らせるって、私の幼馴染は最強ではなかろうか。



 「フェリアー?」


 「ひっ」



 すこーし現実逃避してたら呼び戻された。はははと乾いた笑い声を上げても見逃してくれない。考えろ私、考えろー。どうしたらこの状況から逃げれるのだろう。


 はっ、私がダメなら違う人に頼ればいい。私はそおっとアルガスを見上げる。




 「姫が、嫌がっている……」




 ダメだ。まるでお通夜のような顔をしている。幼馴染はアルガスに九百九十九のダメージを与えた。


 そんなことよりも、やばいどうすれば……。

 はっ!

 この手を使うしか



 「あぁっ!? ソーニャは、早くしないと学校に遅れるよ!」


 「……うーん。それもそうかー」



 我ながら上手くやった。ソーニャは最初は訝しげな顔をしていたが、カバンの中から懐中時計を取り出して見ると、意外と時間が経っていたらしい。すぐに私の方を向いた。



 「結構ギリギリかも! フェリア、準備できたー?」


 「もちろん。…… アルガス、ほら行くよ」


 「はい」



 意外と私が声をかけたら復活した。

 未だ同じ言葉を呟き続けるアルガスの腕を掴み引き寄せる。

 私たちはカバンから魔法陣が描かれた小さい紙切れを取り出して空高く放り投げた。



 『転移ーーレステリア魔法学園ーー』



 その瞬間、魔法陣がキラリと金色に輝く。その光に包まれて彼女達の姿は消えた。











※ ※ ※


 姿を表したのはレステリア学園の校門の前だった。


 目の前には高くそびえ立つ城。同じ色で白く塗られた高い塔が三つぐるりと囲んでいる。お城に行くことは女の子なら必ず一度は憧れる。

 もちろん私もその一人。見惚れて立ち止まってしまう。

 でもすぐに手を引かれる。



 「時間がないよ!急いでー」



 私たちの周りには誰もいない。そのことに危機感を覚えて走り出した。





 入学式が行われる会場は、城の中の大きなホールで行われた。

 来てなかったのは私たちだけのようで悪い意味で目立ってしまう。こそっと椅子に座った瞬間に、拡声器から声が聞こえた。



 「皆さん、今日はこのレステリア学校に入学してくれてありがとう。私はこの学校の校長だ。ここでは……」



 声の聞こえる方向からするに台の上でスピーチしているらしい。だが最後に来た私達は後ろの席なので、その姿を見ることは叶わなかった。決して私の背が低いわけではない。



 「膝に座ります?」


 「大丈夫っ!」



 流石にここで大声を出す訳にはいかない。親切心からのものだろうが私にとっては地雷だよ?

 それよりも後ろから変な光が校長のいる台を照らして……。



 「めっちゃハゲてないー?」


 「ハゲでデブって典型的な金持ちの図じゃん」


 「神々しすぎるッ」



 他の生徒が私の心を読み上げてくれた。でも最後のはどうかと思う。

 こういうやつの話は無駄に長い。なんだか眠くなってきた。うとうとしてるとうるさい声が鼓膜を突き破る。何人かの生徒がガタンと椅子を鳴らした。

 


 「皆ども、俺様はこの国の王子キリスティアンだッ。俺の言うことは絶対だ!!」



 キャーと女の子達のうるさい声が聞こえる。金髪の髪を片手で整え、黄金の瞳でウインクする姿はキラキラの王子だが、顔だけはいいただのナルシストだ。


 王子を射殺そうとするほどゾッとする瞳で見据える私に何人かの生徒がまた椅子を引いた。そんな私にアルガスが問いかける。



 「大丈夫ですか?」


 「そんな訳ないよ!!!」



 思い出すと腹が立ってくる。私は一気にまくし立てる。



 「あいつ権力に物言わせて本来一位のはずの私を引きずり下ろしてトップに成り上がるし平民に対して差別用語しかいわないの!!」



 それを聞いた周りの生徒もうんうんと頷く。未来の王様は平民の求心力はゼロらしい。ぷぷぷ。



 「なるほどあいつが……。ちょっとやってきます」


 「落ち着いて!」



 目が血走っているよ! 大丈夫と言いたいのはこっちだよ。慌ててアルガスの暴走を止める。



 「そうだね、アルガスさーん」



 ソーニャ! この暴走を止めれるのは君しかいない!


 そんな期待もすぐに砕け散った。



 「ソーニャも協力するよー」



 なんで!? 二人して殺そうとしないでよ。ほら殺気を感じ取っていかにも強そうな騎士達がこっちへ来たよ!

 段々と騎士達が間合いを詰めてくる。

 終わったな。どうやら私の華々しい未来はここで終わるようだ。みんな、今までありがと……。



 「そこうるさいぞ!」



 無駄に騒ぎを感じ取った王子はこちらを睨みつける。注目されて二人はやっと落ち着いたようだ。

 !

 今、目が合ったような。

 嫌な予感がして立ち去ろうとするも悲しいかな、それを許してくれなかった。



 「お前はあのときの平民じゃないか。今日こそ格の違いをいせてやるッ!!」



 運命とはどうも残酷なようです。

読んでくださりありがとうございます!

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