第9話
土日は1話ずつ投稿出来るようにがんばります!
「静かにしなさい」
ミランダ先生の一言で辺りは水を打ったように静かになった。
流石ミランダ先生!
生徒はビクビクしながら先生の話に耳を傾けた。震えすぎて貧乏揺すりになっている人もいる。地震は来ていないんだけど……。
先生は片手でメガネをクイっとあげる。
「召喚する前に、使い魔についておさらいします。まぁ、この学園に入学できた方々なのでわかると思いますが」
先生の視線を奪っているのは貴族だ。不正をよしとしない性格なので、貴族の生徒を疑うのは当然。五十年も務めているし色々あったのかな?
「フェリアさん」
「は、はいっ」
思考を巡らしていると急に声を掛けられた。思わず声が上ずってしまった。先生、ご指名ですか!
意気揚々と先生に答える。
「なんでしょう。ミランダ先生っ」
「一旦落ち着いてください。……使い魔召喚における重要な点、分かりますよね」
「もちろんです!」
こほんと先生の真似をして口を開く。あ、私メガネかけてないや。……買おうかな。
メガネのことを考えてるとは思っていないだろう。
生徒は先生に指名された私に視線を向ける。
「使い魔は、魔法使いの化身と呼ばれるほど大切なパートナーです。例えば契約主が死んだら使い魔も死にます。ですが使い魔が死んでも契約主は死にません」
再び話し声が波のように押し寄せる。
死ぬことは知らなかったらしい。常識なんだけどな。
つまり使い魔契約とは命を預かるということ。だから強い絆が生まれる。
「ですが契約はどちらからでも破棄出来ます。まぁ見限られないようにしてくださいね」
貴族サマには無理だろうけど。そんな言葉を飲み込んだ。貴族に使い魔があまりいないのはそれが理由。ぷぷぷ。
私の言葉の裏を読んだのか、先生は呆れに似たため息を吐き出す。あれ? なんか最近私呆れられること多いよね。
「その通りです、フェリアさん。他にも強い使い魔が出てきたら殺されることもありますがそれは無いでしょう。ではチョークと見本を配りますので、魔法陣を描いてください。行うときはきちんと広がってくださいね」
先生が手を振ると紙とチョークが宙に浮いて配られた。紙には魔法陣が黒字で描かれている。
目を輝かせたソーニャはふんすと意気込んだ。
「頑張ろう。フェリアー」
「ソーダネ」
「どうしたのー?」
首を傾げるソーニャに私の隣にいる人物を見せる。すると思い出したのか頷いた。
「あー。フェリアはもうアルガスさんがいるもんねー。流石にもう無理……」
「そうとは限りませんよ」
『え?』
驚いて振り返ると、ミランダ先生が席の前に立っていた。どどどどういう……?
挙動不審な私を見ながら教えてくれた。
「過去に一人、二人の使い魔をもつ人がいたらしいですよ」
「そ、それって……」
「まぁ、確かめる価値はあるでしょう」
そう言って紙とチョークを差し出す。微笑んだ先生はそれだけ言って他の生徒を見に行った。
「出来るかなぁ……」
「出来るよー!」
私の不安を吹き飛ばすような笑顔を浮かべた。
「アルガスさんを喚んだくらいだもん。天才フェリアならできるよー!」
「そーにゃぁ……!」
親友の励ましは温かい。うるっとして抱きついた。うぅ、ありがとー!
「私は反対です」
不機嫌な声がしたかと思えばソーニャから引き剥がされた。こら! 今感動のシーンだよ!
「む、どういうこと? 出来るかもしれないじゃん」
むすっと膨れっ面をする。私だって挑戦してみたいよ。
「そういうことではありません。姫が召喚したら十中八九あいつが……」
「あいつ?」
どういうことだろうか。アルガスの様子からするに、とてつもなく強くて恐ろしい者が来るのかな。
「早くやろーよー! 皆終わってきてるよー」
辺りを見回すと、地面に膝をついて崩れている人や、小さい動物が側にいる人が増えている。
「そうだね! 召喚出来るとは限らないし」
アルガスの制止を振り切って床に魔法陣を描き始める。
見本の通りに描かなくてもいい、個性があるからこそ人によって使い魔が違うのだ。
使い魔召喚を入学前は楽しみにしていた私は魔法陣を完璧に覚えている。このチョークを持って描いている瞬間が1番ワクワクする。やっぱり好きだなぁ。
……あれ。私今まで魔法陣を描いたことあったっけ?
チョークを走らせていた手が止まる。急に手を止めたのを不審に思ってアルガスが顔を覗いてきた。
「止める気になりました?」
「違うからっ!」
そうだ。多分楽しみすぎて夢で一度やったのだろう。そうに違いない。
「できたっ!」
勢いよくその場の立つ。私より先に描いていたソーニャよりも早く終わった。
アルガスはまだ顔に憂いをともらせている。
「……本当にやるんですか」
「もちろん!」
意を決して魔法陣の手前に立つ。
大きく深呼吸をして呼吸を落ち着かせる。
大丈夫、私なら出来る。
『この世を統べるものよ。護るものよ。再びとして我の前に姿を現せ』
すると、魔法陣が共鳴するように金色に、強く、激しく輝いた。中心から溢れんばかりに光が出てくる。その眩しさに思わず目を瞑る。
「あー! 久しぶりの人間界だっ! ……この匂い」
光は蝶の鱗粉のように辺りに散った。この声、聞いたこと……
「ひーめっ!」
「うわっ」
急に何かに飛びつかれて下敷きになった。ぐえ。鼻にフリルが当たってくすぐったい。
「お、おい。見ろよあれ……」
「ま、まさか」
「獣人っ!」
「……へっ!?」
まさか……。見上げようにも重くて動けない。ぐりぐりと頭を擦り付けてくるので余計に負担が。
意識が遠のく寸前にアルガスがストップをかける。
「レア、姫が困っているぞ」
「はーいはーい。もう、アルガスもひめがいるなら教えてくれればいいのに」
「お前がいるとうるさいからな」
「ひどーい!」
急に体が軽くなった。ゆっくり身を起こすと、アルガスと言い合ってる少女が目に入る。
首のチョーカーは胸元のフリルと繋がっていて、ミニスカートの下にはベルトで固定されたナイフが。髪はポニーテールで高く結んでいた。髪と同じ白に近い灰色の耳が2つにふさふさの尻尾が一つ。
「へぇ……?」
「姫っ」
「ひめー!」
キャパオーバーになった私はバタンと床に倒れた。
……どういうことなの。
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