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酷い怪我を負ったセシルは這いつくばるようにフランチェスカの元に向かっていた。危険を知らせるために。全身の骨が折れ内臓も損傷しているらしく口から血が流れていた。もし、この時点でも癒しの聖女がいれば助かるかもしれなかったが、残念な事にここにいなかった。セシルが癒しの聖女だったからだ。癒しの聖女は自分自身に対してその能力を使えないからだ。与える事しかできなかった。
「ふ、フランチェスカ様・・・」
このとき、セシルの脳裏には今までの記憶が走馬灯のように回っていた。そうなると、もう長くないのは自分でもわかっていた。セシルの両目から涙があふれていた。痛いというよりも、くやしさの方で。憧れで、越えなければならない壁で、姉のような女として聖女として好きなフランチェスカ。彼女ともう会えなくなるのが。
全身の骨が折れているので、動くのが難しいはずなのにセシルはほんの少し先にいるフランチェスカの元に向かっていた。時間としては少しのはずなのに永遠のように感じていた。その永遠な絶望といえる時間はもうすぐ閉じようとしていた。その時、目の前に駆け寄ってくる足が見えた。
「セシルさん、どうして・・・酷い事に?」
酷い、たしかに人に見せれないだろう。上半身を起こしてもらったが、白い聖女の服は血が至る所で滲んでいた。
「は、はやく逃げてください。副騎士団長の身体にモンスターが潜んでしました。そいつにやられました。そいつは・・・」
そのとき、セシルは吐血してしまった。そして意識は薄れていった、セシルの命の灯火は消えていった・・・




