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「なにをした?」
アベルは自分のお腹の傷がみるみるうちに塞がる事に驚いていた。
「決まっているだろ、助けてやるのさ!」
目の前のフランチェスカの皮を被ったやつは彼女の可愛らしい声でいった。
「助けるだと? どうせてめえが役に立つと思ったからだからだろ!」
アベルは分かっていた。侵略行為をしている竜族は自分たちの利益にならない事はしないはずだと。
「ほお、分かっているじゃねえか! なら、話は早い! お前のその能力で協力すればいいだけさ! 悪い話じゃねえぞ! そうすれば、この世界の王にしてやってもいいぞ!」
目の前の奴はそう言ったが、その姿に纏う瘴気の中に聖なる何かの光があった。
「くそ! あの女の残滓があるじゃねえか!」
それが何を意味するのかアベルにはその時わからなかった。
「なにいっているんだ! 死んだっててめえの協力者にならねえ! だからさっさと始末しろ! 俺を!」
アベルは死を覚悟していた。でも、抵抗するための残された手段はなかった。あるとすれば協力せず死ぬことしかなかった。
「気に入った! ますます! お前をいただくことにするぞ!」
そういって、目の前のやつはアベルの身体を抱き寄せた。その腕はフランチェスカであったが、彼女のものではない邪悪な力を纏っていた。