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さっきまで一緒に戦っていた配下の者は全て無残な屍というなの物体になっていた。ある者は焼かれ、ある者はバラバラになり、ある者は・・・とにかく地獄のようであった。周囲は血の匂いに交じり異界の竜族が発する瘴気で満ちていた。絶体絶命な状況にアベルは死を覚悟した。
「貴様! フランチェスカ様をどうしたんだ!」
おびただしい血が流れ落ち意識が遠くなろうとしていてもアベルは自分が仕えていた聖女の運命をしりたかった。
「フランチェスカ? ああ、いま纏っている人間の聖女か? そいつなら今頃配下の者の朝食にでもなっているはずさ。残念だったな!」
フランチェスカの姿を奪った何者かはそういった。それはフランチェスカは死んだということであった。
「てめえ! 許せねえ! 最後にこれをくらえ!」
左手に持っていた「聖女の槍」をアベルは彼女の胸に突き立てた。すると傷から真っ青な液体が流れた。フランチェスカの姿をした者は一瞬苦痛な表情をしたが、すぐに元に戻った。
「ほお、おめえはやるなあ! ただの騎士かと思ったが油断したな。この身体の聖女が持っていた能力以上のものを持っているな! その潜在能力は素晴らしい!」
そういって、フランチェスカの姿を盗んだ竜族の何者かは、アベルの腹の傷に光を放つとたちまち元に戻った。一体何をしようとしているのか分からなかった。