47 油断
北部と南部に派遣された聖女騎士団が足止めされている頃、フランチェスカがいる東部は平穏に近かった。もし異界の門の出現がなかったら、王都への撤退もしくは二方面のいづれかに移動する事になっていた。しかし、それは叶わなかった。少しずつであるが事前の予想のように異界の門が開き始めた。
異界の門は、大規模な襲撃の時に巨大な門扉のようなものが現れることから命名されたものであるが、小規模な場合は空間上に黒い穴のようなものが出現する。東部では当初そのようなものが予想よりも数多く出現した。
「ほお、北部も南部もそれほど深刻でないようだな」
北部や南部から伝書鳥によってもたらされる定時連絡に東部を指揮している第二副騎士団長はリラックスしていた。現在のところ配下では異界の門から出現するモンスターはか弱いものばかりで、新兵や聖女見習いでも簡単に始末できるものであった。
「そのようですが、ここ三日は伝書鳥からの通信がありません。こちらから派遣したものも戻ってくるので、悪天候のようです」
伝書鳥を管理運営している小隊長は戸惑った表情をしていた。聖女騎士団の伝書鳥は大抵の嵐なら問題なく飛行できるはずであるのに、この事態は異常だと感じていた。
「そうか? 問題ないだろ? とりあえず、事態が収束した場合にはすぐ撤収できるように準備するように」
そのとき、東部方面は完全に油断していた。これは超絶な大攻勢の嵐の前の静けさであったことを、誰もが思っていなかった。




