44 北部戦線(2)
北部の海岸に張り付いた聖女騎士団と周辺地域から集められた兵は異界の門から出現してくる異界の者たちとの戦いを断続的に続けていた。だが時間の経過とともに違和感が指摘されるようになった。あまりにも散発的かつ消極的ではないかと。
従来の異界からの侵入者は、おおよそ住民の拉致や物資の収奪が目的とみられており、それを阻止するため聖女たちが戦う事が通常であった。しかし今回の場合、出現しても戦端が開かれても小競り合いに終始しており、適当な時点で瞬時に撤退するのだ。まるでおびき寄せるかのように。
「兵士の犠牲者も負傷者もほぼ皆無でありますが、疲弊しておりますし、戦力が分散されております。おそらく向こうの作戦だと思われます」
前線の指揮官からの報告にアベルは難しい顔をしていた。あまりにも今までの攻勢と違っていたのは分かっていた。
「騎士団長! 批判を覚悟して申し上げます。もしかすると、我々主力をこちらに釘付けにしておくのが、相手の目的ではないでしょうか? 別の方面の・・・南部ないし東部のいづれかに強力な攻勢をかけるのではないでしょうか?」
現場の小隊長の指摘であったが、アベルもそう思わないわけではなかった。この時までに南部からの伝書鳥による戦況報告で似たような指摘があったから。これほど大規模に異界の門が開かれているのに、規模の割には出現する連中の戦力が少ないのだ。




