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フランチェスカは聖女として戦うと、異界の者に対し容赦なかった。特に竜魔に対しては完膚なきまで叩き潰すため、騎士団の兵士ですら嫌悪感を抱くものが少なくなかった。
だが、孤児院にいる時の彼女は穏やかな表情をしていた。戦場の表情から想像できないような。ここでは孤児たちの良きお姉さんであった。
「おじさん、お姉ちゃんのなんなの?」
幼い子供がアベルを質問攻めにしていた。ここに来るのは初めてだったから。
「騎士団長よ! お姉さんを守ってくれているのよ」
「ふーん」
孤児たちの関心はフランチェスカが持ってきた食材で作った夕ご飯に移っていた。そのタイミングでアベルは退散した。団欒を邪魔しないように。この時が、まさかフランチェスカにとって最後の心休まる時だったとは誰も思っていなかった。




