28 ムリージョ議会
ムリージョはサラハール王国の版図の一部であったが、辺境部とされていた。周囲を険しい山岳に囲まれた高地にあり、王都からも周辺諸国からもアクセスが困難な事が理由だった。最も近い地域を管轄する地方行政府が置かれた町まで三日の旅程がかかるほどだった。ましてや王都まで行こうとすると50日かかるところにあった。これは、王都から周辺諸国の首都に行くよりも時間がかかるというありさまだった。
また特定の貴族の領地とされず国王直轄領のムリージョの行政は半ば自治区の様相を呈しており、地元の有力者が務める総督を首班とする議会が行政を司っていた。
その議会が開催されるのが、修道院がある村から半日かかるマティの町だった。この町はムリージョ最大の都市であったが、それでも人口は一万人いるかどうかの小さなところであった。
「もうすぐ着くわ。二人とも知っているかもしれないけど」
シモーネたちは郊外の丘の上に立つ城館に到着した。そこがムリージョの総督府兼議会が置かれたところだ。強固な石垣の上にある三階建ての小さな木造の館であった。広大な辺境を管轄しても人口が希薄なのでそれで充分であった。
議場のオブサーバー参加席に案内された三人の目の前では、議員全員が集まっていた。議員といっても各地の村長や町長が兼任しているうえに、町村も少ないので二十人しかいなかった。しばらくすると、議長も兼任する総督ジャッケルフォードが入場してきて全員が起立して迎えた。
「本日はこれから臨時会を開催する。議題は前日の官報にあった、この国の統治者が変更された件だ。皆が知っていることだが、我がムリージョの出身者であるアベル・アーシタ聖女騎士団長が帝位に即位したという。そこで、本日は今後の対応策について協議する」
そう宣言すると議場の視線はシモーネ・アーシタに集まっていた。彼女こそ「皇帝」の実姉だからだ。




