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23 湯治場(5)
フランチェスカの頭の中に、”彼女”の記憶がよみがえった。それは二つの魂の記憶が同時にある状態になったため、少なからず混乱を招くことになった。そのため、シモーネの胸の中で崩れ落ちた。
「く、苦しい・・・」
「少し辛抱して。その状態で生きていかないといけないのよ、しばらくは」
「し、暫くって・・・いつ?」
「少なくとも、本来のフランチェスカ様が見つかるまで。その時、なんとかなるかもしれないから」
「なんとかなるって? どういうこと?」
「わからないわ、でも、もしかすると私で出来るかもしれないわ、魂移しが?」
「魂移しって、でもそれは邪法では?」
「そうよ、邪法よ。でも、それぐらいしか出来ないわ。でも、それぐらいしか思いつかないわ」
「そうか・・・」
そういうと、フランチェスカは気を失った。そしてシモーネは強く抱きしめて湯舟に沈まないようにした。そのとき、シモーネは不安な顔をした。
「そういったけど、本来のフランチェスカ様の魂があるのは、あの古文書と一緒なら出来るけど・・・アベルの身体に戻せなければ、二人とも・・・」
その時、シモーネは最悪な場合を想っていたが、それが現実だと思い知らされるのは、相当後の事であった。




