86話 正体バレ
今カミラは俺のことをルークと呼んだか?
確かに俺の前世はルークなのだがカミラにバレるようなことは何もしていないはずなのになぜ俺の前世がバレたのか意味が分からない。
とりあえず俺はどうしたらいいか分からず寝たふりを続ける。
「寝てないのは分かっているよ。私はいつもデニスちゃんの寝ている姿を見ていたんだから。本当に寝ている時はもの凄く規則正しい寝息をしているけど今のデニスちゃんは全く寝息を立てていない」
カミラは俺が寝ていないことを確信しているようだ。
俺は仕方なく体を起こす。
「カミラ何言っているのルークって誰のこと」
俺はまだ誤魔化せると思いとぼける。
俺はカミラにバレるようなヘマをしていないはずだ。
「まだとぼけるんだ。私がどれだけルークのことを見ていたと思っているの」
どうやらカミラは何か確認をもって話しているようだ。
「そんなわけないじゃない。本当にそう思うなら証拠は」
俺は必死に誤魔化そうとする。
「まず朝の訓練の時にしてる型ってキール国の奴だよね。しかもあなたのしている型はかなり特徴的でルークしかしているのを見たことなかった。それにこの前の戦っている時前世の戦い方と全く同じだったよ」
カミラは何にも躊躇いなく言う。
「そんなの偶然かもしれない」
もし俺の正体がバレたら今までの自分の行いがバレるのはとても恥ずかしい。
「ダンさんの店であなたが買った剣は前世であなたしか使っていなかった剣だった。他の人は癖が強すぎで誰も使えなかったのにあなたは買ってすぐだったのにすぐに使いこなした。私は前世で契約の条件を聞いていたからやっぱりあなたはルークなんじゃないかと疑いを持った。」
やっぱりカミラは契約する条件を知っていたか。
まあ俺もソフィアに聞いたのだから前世でかなりの長い付き合いのあるカミラが知らないはずはないか
「それであなたがルークだと確信した理由は熊の魔物の倒し方。熊の魔物を一人で倒せる人で全く自身で身体強化を使わずに倒していた。あなたは身体強化を使えないのよね。あれだけ動き回れるのに身体強化を使わないのはそれを使えないからだと思った。そんな人私は一人しか知らない。ルークあなただけよ。もし言い訳があるのなら聞くけど」
カミラに言われて俺はどうしても言い訳を思いつかない。
「はい、そうです。私の前世はルークです。」
俺は正直に俺の正体を言うしかなった。
「やっぱりね。もしかしたら隠せているつもりだったんだろうけど、あれで隠せていると思っているとは相変わらずね」
カミラは呆れた表情で言う。
しかし今の俺は全く気を許すことが出来ないでいる。
前世では必ず守ると約束したのにカミラを守ることが出来ず結果的に死なせてしまった。
カミラは俺に遠隔で魔法を使うことが出来るが俺がカミラに危害を加えることが出来ない。物理的にも心理的にもだ。
それにいつものカミラはよく笑顔で話してくれるのだが今のカミラはずっと真顔だ。
これはカミラは怒っているのだろう。
「それで聖女様は私に何を望みですか」
俺は前世でカミラと接していた時と同じように話す。
カミラは先ほどと同じように真顔のままだが少し表情が硬くなったような気がする。
「相変わらずあなたは私を突き放すような言い方をするんですね」
「私は聖女様の護衛騎士なので気軽に接することは出来ません」
もう俺の上司や咎める人はいないがそれでも俺の精神はカミラの護衛騎士だ。
「それに私は貴女に恨まれているはずです」
俺の正体を知ってからカミラは先ほどまでの親しげ話していたが今は距離のある話し方をしている。
カミラは俺のことを知って本当に怒っているのだろう。
「前世で聖女様を守れなかった私に罰をください」
せめて今世ではその償いをしたい。
俺はカミラからの言葉を待つ。
続きます




