83話 一人だけ
「ほらソラ君おいでー」
俺はソラ君に触れ合おうと名前を呼ぶ。
しかしソラ君はレットの体を動き回るばかりで俺の方には来ない。
「やっぱりだめか、ちょっとくらい触れ合いたいのに」
俺は苦笑いしながら言う。
「そうだね。ソラは人見知りなのかな。なかなか私から離れようとしないね」
レットも俺と同じように苦笑いしているがどこか自分から離れないソラ君の姿を嬉しそうに見ている。
しかしレットもソラ君が何を考えているのか分からずおのずと俺とレットの視線はこの場で唯一ソラ君の言葉が分かるカミラに向く。
「はいはい今日の私はソラ君の通訳係なのね。えーとソラ君は『男の子は嫌いだから嫌だ女の子がいいそれに体が大きな人は踏まれそうで嫌だ』らしいよ」
カミラは言うとソラ君はその通りとばかりに頭を縦に振る。
なるほどこの子は女好きなのか
なんだかその言葉を聞くと途端にこの小動物がおっさんに見えて来た。
「あーだから朝来た大人のところにはいかなかったのか…あれ?ならなんでデニスさんのところに行かないの」
レットの言葉に俺がギクっとなった。
もしかしてこの精霊は俺の中身が分かるのか。
「ソラ君はなんか雰囲気が男の感じがするって言ってるね。全くデニスちゃんはこんなにかわいい恰好をしたかわいい女の子なのになんて失礼な」
ソラ君の言葉を翻訳しながらカミラが怒る。
カミラに恰好のことを言われると途端に恥ずかしくなる。
やっぱり着替えてこようかな
「あはは、全くデニスさんは男の子みたいにな事ばかりしているからソラに勘違いされるんだよ。今度からは貴族の女の子みたいにおしとやかにしろってことだね」
レットは笑いながら言う。
そんなにソラ君の言葉が面白かったのだろうか
「別は私は女の子に見られなくてもいいし。私は気にしてないし」
俺の精神は男なので別に男と間違われても気にしない。
しかし俺の行動がやせ我慢している風に見えたのかカミラに「全く無理しちゃって」と言われた。
相変わらずカミラに女の子扱いされるのに慣れない。
「別に私はこのままでいいし、男の子と思われていいから大丈夫だから」
俺は慌てて言い訳をするとこの話を終わらせた。
「やっほーやっと終わった。」
結局あの後何度もソラ君と触れ合おうと挑戦したが結局一度もこっちに来てくれなかった。
「あ、エマ様お疲れ様です」
「エマちゃんお疲れー」
入ってきたのがエマちゃんだと分かるとレットとカミラは挨拶をする。
「エマちゃんお疲れ様。ノックせずに中に入るのはどうかと思うよ」
俺だけはエマちゃんを注意する。
流石に見知った仲でも礼儀は必要だと思う。
「まあまあデニスさん。エマ様だから大丈夫だよ」
「全くデニスちゃんは堅苦しいな。レットちゃんがいいって言ってるから大丈夫だよ。それよりデニスちゃんの今日の格好かわいいね」
まあレットが気にしていないのなら大丈夫か。
そして予想通りと言うかエマちゃんにも今日の格好を言われた。
俺は恥ずかしがりながら「勘弁して」と言う。
エマちゃんが入ってくるとまっすぐ俺たちの傍に座る。
するとずっとレットから離れなかったソラがエマちゃんを見つけると勢いよくエマちゃんの元の走り出した。
「ん?何こいつ」
ソラはエマちゃんの元にたどりつくとそのままエマちゃんの手に体を擦りつける。
「あ、エマちゃん羨ましい」
俺はソラと普通に触れ合えるエマちゃんを見て羨ましくなる。
「その子は私と契約したソラって名前の精霊だよ。かわいいでしょ」
「へーレットちゃんも精霊と契約したんだ。この子人懐っこいね」
エマちゃんはソラ君を見ながら言う。
そのエマちゃんの言葉にカミラが笑い出した。
「そんなことないんだよ。ねえデニスちゃん」
別に俺だって嫌われたくて嫌われているわけではない。
「エマちゃんソラ君をデニスちゃんのところに連れて行ってあげて」
「え、まあいいけど」
カミラはエマちゃんにそういうとエマちゃんはソラ君を持ち上げ俺の傍に連れて行こうとする。
しかし俺に近づけば近づくほどソラ君はエマちゃんの手にしがみついて離れようとしない。
「あれ?デニスちゃんのことは嫌いなんだね」
相変わらずソラ君は俺のことが嫌いなようだ。
ちなみにカミラとは触れ合うことが出来た。
この中で一人だけソラ君に嫌われている。
「うーんソラ君はエマちゃんは大丈夫だったか」
俺はそういうと少しがっかりした。
ソラ君はロリコンおっさんです。




