74話 初めての弟子
「デニスさんどうか俺を強くしてください」
クラスの中でテオ君は登校するとすぐに俺に頭を下げた。
昨日はエマちゃんのおかげで周りに注目されたが普段は空気扱いされている。
それなのにテオ君のおかげで俺は久しぶりに注目されている。
「デニスさんお願いします。俺は強くなりたいんです」
テオ君は周りを気にせず頭を下げる。
「テオ君頭を上げてください。ここでは注目されてます。」
俺はこのまま教室での目に耐えられなくなる。
「では俺を鍛えてくれるんですか」
頭を上げたことで今日初めてテオ君の顔をみる。
一昨日会った時は血を流しすぎたせいか顔色が悪かったが今は数日経ったことで顔色は良くなっている。
腕はきちんと繋がってるようだ。
「えっとテオ君だったよね。腕大丈夫?何か違和感ない?」
昨日休んでいたため体調を確認することが出来なかった。
カミラは気になっていたのだろう。
「はいエマ様に治療して頂いたので今まで通りです。」
テオ君は問題ないことを証明するために腕を動かす。
とりあえず怪我の心配をするのはさすがカミラだ。
「とりあえずここだと目立ちますので、お昼にもう一度話しましょう」
これ以上目立ちたくない俺は話を後回しにする。
「はいお願いします」
テオ君が何を考えているのか分からないがとりあえずお昼までに対応を考えておこう。
「デニスさんお願いします」
お昼休みになるとテオ君は真っ直ぐ俺の元に来た。
結局テオ君の考えが分からなかったため仕方なく時間を引き延ばす。
「私はいつもレットと食べてるけどテオ君はいつもの人と食べなくていいの?」
とりあえずテオ君を遠ざけるためにいつも食べてる人と食べるように勧める。
「いつも食べてるトムはもう」
彼の反応を見て俺はしまったと思った。
そういえば二人は剣術の授業も一緒にペアを組んでいた。
二人は仲良しだと分かっていたのにこの話を振るのは失敗だった。
二人の間になんとも言えない空気が流れる。
「デニスさんお昼行くよー」
どうしようか考えてた時に丁度現れたレットに感謝をする。
「レット今日この子の話聞かないといけないから」
流石にずっと後回しにするわけにはいけないと思っいレットに断りを入れる。
「いえヴァイオレット様に外して頂かなくても、それに私の話はすぐに終わりますので」
流石貴族の子供レットのことを知ってるようだ。
俺とは大違いだ。
「そう、だったら私はここで待っとくね」
そういうとレットは俺のそばで待つ。
「デニスさん俺を鍛えてください」
朝言われた事と同じことを言う。
「えーとテオ・・・さんは」
「あ、私のことはテオでいいです。敬語もいりません。」
俺がなんて呼ぼうか悩んでいるのが分かったのだろう。
「ならテオ君で、テオ君も敬語は辞めて、それでなんで私に言うのお父さん騎士ならお父さんに習えばいいじゃない」
確か彼のお父さんは騎士だった。
お父さんに訓練をして貰えばいいのではないだろうか
「お父様は貴族の出だから実力は普通の騎士よりも少し上くらいなんだ。それにお父様が連れてくる人も実践もするけどどちらかというと指揮の仕方とかで」
たしかに剣術の授業もクラスメイト達の実力はあまり強くなかった。
「この前デニスさんが戦う姿を見て感動したんだ。魔物を一人で瞬殺した姿を見て俺も同じように戦って仲間を助けられるようになりたいんだ。どうか俺を強くしてください」
テオ君の話を聞いても結局は彼を強くできる保証はない。
それにこの子の父親は騎士だ。もしテオ君の不評を買ったら将来の俺の立場が悪くなるかもしれない。
俺は断ろうとした時横にいたカミラが俺の手を握る。
「デニスちゃんにはたくさんの人を助けられる人になって欲しいな。だってデニスちゃんが目指している騎士ってたくさんの人を助けることが出来る人だよね」
カミラに言われて俺が目指す騎士は人を守るための人だ。そして前世で一番守りたい人を守りきれなかった悔しさを知っている
そして彼も同じように仲間を助けることが出来ず俺と同じように強くなりたいと思っている。
俺はこの子の願いを叶えてあげたいと思ってしまった。
こうして俺の心は決まった。
「分かった私が君を強くしてあげる」
俺は前世と今世を合わせて初めて弟子が出来た。
デニス弟子が出来たってよ。




