72話 教室と脅迫
「ほらデニスさん行くよ」
完全に起き着替えを済ませたレットは俺を連れて走り出す。
「そんなに急いだら転ぶよ」
レットは後ろを向きながら走っている。
こういうところを見るとレットは七歳の子供なんだなと改めて感じる。
食堂に入るとかなり遅い時間になっていたため生徒はあまりいなかった。
だが中にいた生徒のほぼ全員の視線が俺達を見た。
「なんか私達注目されているね」
俺はこんなに注目されることに慣れていないためとても居づらい。
「ん、そう?いつもこんな感じじゃない」
「これくらいよくあることだよ」
二人にとって慣れているようで何てことないように食事を取りに行く。
俺は身を小さくしながら朝食を食べた。
食事を終えて校舎に向かう時はカミラとソフィアを加えた五人で向かった。
その時も俺達はたくさんの視線を集めてしまい俺の精神は完全に疲れてしまった。
「じゃあまたお昼ね~」
レットは先に別れる。
「あれ?エマちゃんは教室に向かわなくていいの?」
レットとは別れて俺は自分の教室に向かおうとするとエマちゃんはついてきた。
「うん、ちょっとデニスちゃんが教室でどんな感じなのか見たいから」
「そんなに面白いものじゃないよ」
エマちゃんは俺の教室についてくるようだ。
「おはようございます」
俺が教室に挨拶をしながら入るとクラスのみんなは俺を見るだけで誰も挨拶を返さない。
ここ何日か教室に入るといつもこのような対応なので慣れたものだ。
カミラは黙って教室に入る。
俺の少し後にエマちゃんが教室に入る。
「え、エマ様おはようございます。本日はなぜこの教室に」
近くにいたクラスメイトの一人がエマちゃんに気が付くとすぐに挨拶をする。
その声を聞いたクラスメイト達はほぼ全員がエマちゃんに向かって挨拶をするとエマちゃんの周りに集まった。
俺が教室に入る姿を見ていたエマちゃんは俺のクラスメイト達の対応を見て不機嫌そうになる。
「そう。みんなおはよう」
エマちゃんは挨拶をするとクラスメイト達はとてもうれしそうにしている。
流石エマちゃんは人気者だなと思いながら自分の席に座る。
隣の席の子はまだ来ていないようなので俺は静かに授業が始まるのを待った。
カミラも俺と同じように自分の席に座って授業が始まるのを待つ。
彼女にとっても俺のクラスの授業は分かり切ったものでつまらないだろうけどいつも一緒に授業を聞いている。
俺のクラスでの様子を見たエマちゃんは自分の周りにいる生徒を避けると俺の傍まで来た。
「みんな デニスちゃんは私の妹だからよろしくね。もしデニスちゃんをいじめるようなことがあれば私許さないから」
エマちゃんはクラスの全員に伝わるように言う。
その言葉でクラスの視線が一斉に俺とエマちゃんに向く。
「そ、そんな私たちがいじめなんてするわけないじゃないですか、私とデニスさんはとても仲良しですよ」
クラスメイトの一人が震えながら弁明をするがエマちゃんはカミラの方を見る。
「その子はこの前デニスちゃんに平民風情なんて言って連絡事項を伝えなかった子だね」
カミラははっきりとこの子の対応を言う。
俺はそんなことがあったなと思いだしながらカミラも容赦がないというかなんというかおかげでその子は泣き出してしまった。
「これからはデニスちゃんになにかあれば容赦しないからそのつもりで」
エマちゃんはそういうとそのまま教室から出て行ってしまった。
こうしてクラスでの俺の立ち位置はクラスの邪魔物からクラスでの厄介者に変わったのだった。




