55話 レットの愛称
俺たちは公園の中に入った。
見渡す限り色鮮やかな花が咲いており花に興味がない俺でも見入ってしまう。
「やっぱりここの花たちはとても綺麗ですね。この国一の花々ですさすがソフィア様が管理されているだけあって他の花と全く違います」
レットは俺よりもここに来たことがあるはずなのだがそれでも見入ってしまったようだ。
「まあソフィアの能力をかなり使って育てているからね。普通と比べてかなり簡単みたいだよ。そんなことより、さっきから気になってたんだけどデニスちゃんはレットって呼んでいるんだね」
「そうだよ。最初はヴァイオレット様って呼んでたんだけどカミラ…精霊に怒られちゃって、レットって呼びなさいって」
「あれは怒られるというより脅されていた気がするけどね」
レットと初めて会った時のことを思い出した。
確かにあれは脅しだった。あの時はまだレットと呼ぶことを躊躇っていたが今となっては全く違和感を感じない。
慣れは恐ろしいものだ。
「そうだね。よかったら私もレットって呼んでもいい」
「エマちゃんさすがにそれは…今日初めて会ったお姫様を愛称で呼ぶなんて」
俺は平気で話しているが本来レットはこの国のお姫様だ。
平民である俺たちが簡単に話すことが出来る相手ではない。
「でも、デニスちゃんは初めて会った日からレットって呼んでるんでしょ。」
「まあそうだけど、レットがいいならいいんじゃない」
俺とエマちゃんがレットを見ると顔が真っ赤になっていた。
レットの様子のおかしいため俺が「レット大丈夫と聞く?」
「あの憧れのエマ様に私のことを愛称で呼んでもらえるなんて光栄です。ぜひぜひ私のことをレットと呼んでください。」
レットはかなり興奮している。
こんなレットは見たことがない。だが確かレットと話している時たびたびエマ様は、、エマ様はと話題に出ていた。それだけレットはエマちゃんのことが好きだったんだろう。
「レットはエマちゃんが大好きだね」
「それはもちろんエマ様はすごいんだよ。不治の病だと言われていた貴族を救ったり。全員が疫病にかかっている村に行って疫病を沈めたり、まだ十歳とは思えないくらい活躍しているんだよ。この前だって貴族の子供が病に侵されていて、たくさんの医者が匙を投げたのにエマ様は一日で治したんだよそれとね・・・」
レットはエマちゃんの話をしだすと止まらんくなる。
エマちゃんの顔を見るとエマちゃんもさすがに苦笑いをしていた。
「それでエマ様は助けた村人に」
「レット エマちゃんも困っているよ」
俺の言葉にレットは横にエマちゃんがいることを思い出したようでエマちゃんを見る。
「す、、すみません。エマ様どうぞ私のことはレットとおよびください」
エマちゃんは少し恥ずかしそうにしながら「それじゃあレットちゃんこれからもよろしくね」と言い今日レットとエマちゃんはお友達になった。
「ソフィアやっと見つけた」
ソフィアは花に水を上げていた。
「あらエマがここに来るのは珍しいですね。おや懐かしい子がいますね」
ソフィアは花に水を上げながらエマちゃんを見る。
その時にエマちゃんの横にいた俺を見つけたようだ。
「ソフィア”さん”お久しぶりです」
俺はエマちゃんが横にいるためさんを強調して言う。
「国境の街以来ですね。元気そうでなりよりです」
久しぶりに見たソフィアは精霊のためか昔見た姿と全く変わらない。
きっとこのまま俺が成長してもカミラの姿は変わらず俺の姿ばかり成長していくんだろうなと感じさせる姿だ。
「なんかねデニスちゃんがソフィアと話がしたんだって」
「そう、なるべく二人で話したいんだけどいいですか」
流石にエマちゃんとレットに話を聞かせるわけには行かない。
「わかりました。二人で話をしましょう」
そういうと俺とソフィアは移動を始める。
「え、ソフィアとデニスちゃん二人でどこか行くの」
ソフィアにしては珍しく俺がソフィアと二人で話したいことがあることが分かってくれたようだ。
まさか残されるとは思っていなかったエマちゃんは俺とソフィアが二人で移動を始めたことに驚いている。
「エマこの子と二人で話すことがありますので待っててください」
「エマちゃんソフィアと大事なお話があるからそこで待っててね」
俺とソフィアはエマちゃんにそこで待つように言う。
「全くソフィアはいいとしてなんでデニスちゃんは私に言い聞かせるみたいに言うのかな」
どうやらエマちゃんはソフィアに言われるのには慣れているみたいだが俺に言われるのは納得いってないようだ。
しかし俺たちの言うことを聞いてくれるようで俺とソフィアは二人で人気のないところに移動した。




