37話 作戦失敗
カミラの作戦はすごく単純だ。
ドラゴンに気づかれないように相手に近づきカミラがドラゴンに触れることでドラゴンの力を下げる。
そのあとカミラが俺に触れて力を増した俺がドラゴンの尻尾を切り落とすと言う作戦だ。
ドラゴンの尻尾を切ることで逃げ出してくれたらそれでいい。
俺に怒って追ってきたらなるべく人がいないところにカミラの力を使って逃げるだけだ。
凄く単純な作戦だけど俺とカミラの二人だけで出来ることはこれしかない。
俺たちは実行しようと急いでドラゴンの後ろに向かう
近づくことだけなら簡単だった。
ドラゴンは俺たちを脅威だと思っていないようでまだ宝石を探している。
なかなか見つからないようでかなり苛立っていた。
俺達は急いでドラゴンに近づいていく、街に倒れている沢山の人たちを助ける暇がない。
助けを求める者たちを無視して進んでいるためカミラが精神的に応えたようだ。
しかし今はカミラが一人を助けているうちに五人は怪我をしている状況だ。
一人でも多くの人を助けるために今は見捨てるしかない。
「聖女様一人でも多くの人を救うために急ぎましょう」
「あなたも失敗は許さないわよ」
こんな時でもカミラは厳しい。それでもカミラはかなり苦しそうに走っている。
彼女はなかなか走ることはない。しかし今は一人でも多くの人を助けるために無理矢理急ぐ。
ドラゴンの足元に着くとまず俺はカミラを抱き抱える。
「え、ルーク何やってるの」
彼女が狼狽える姿を久しぶりに見た。
「あなたに触れていないと俺はドラゴンの尻尾を切ることはできませんから」
それにこんな敵の近くにいるのだ、彼女から離れて怪我をされては困る。
「私重くないかしら」
顔を赤らめながら彼女は聞いてくる。俺は「とても軽いですよ」というと余計顔を赤らめた。
準備が終わりカミラとドラゴンに乗る。
「ソフィアいくわよ」
そういうと魔法が発動する。
ドラゴンはやっと俺たちの存在に気がついたようで尻尾の上に乗る俺たちを見る。
ドラゴンは俺たちをやっと気が付いたようだがもう遅い。カミラの魔法が発動し尻尾の生命力がどんどん下がり、鱗の防御力がどんどん下がる。
しかしドラゴンは全く気にした様子はない。
もしかすると少し痒い程度なのだろうか。
何もしないのは好都合だ、カミラから力が流れ込んでくる。
今までに感じたことがないくらい力が溢れているこのままでは体が壊れそうだ。
彼女は俺が身体強化を使うことが前提としていた。残念ながら俺は身体強化をすることができない。
それでも俺はそれを無理をして剣を振るった。
振るった剣は確かな手ごたえとともにそのまま尻尾を切り落とした。
いきなり尻尾が切られて流石のドラゴンも悲鳴をあげる。
切り落とされてやっと俺たちの敵と認識したようだ。
ドラゴンは地面にいる俺達を見つめるとドラゴンは手を振り下ろした。
残念ながら尻尾が切られて逃げずに俺たちを襲う選択をしたようだ。
まだ、カミラを抱えているため魔法が効いている俺はカミラを抱えたまま逃げる。
そのままドラゴンに追われる形で逃げる。
事前にソフィアによって人がなるべくいないところの目星はつけている。
そこには地下につながっている俺たちはそこから逃げ出す予定だ。
俺はそこに向かって走り出した。
ドラゴンは逃げる俺を追ってくる。
最初はカミラだけでも置いて俺一人で逃げる予定だった。
だが、カミラから離れると強化魔法が切れてしまうよう。もし切れるとすぐに追いつかれて人がいないところに誘導できないと言われ押し切られた。
しかし剣を振るうだけでも悲鳴をあげていた体は長くは持たなかった。
目的地の半分を過ぎたあたりでついに俺は倒れてしまった。
「ルーク何してるの早くしないとみんなを助けられない」
カミラが俺の体を揺さぶるが俺は起き上がることが出来ない。
「カミラ彼を諦めなさい彼の体は限界です」
「どうして騎士の身体強化ならまだあの魔法に耐えられるはず」
「彼は最初から身体強化を使っていません」
どうやらソフィアには俺が身体強化を使っていないことがバレてたようだ
「すみません、俺身体強化が使えないんです」
俺が掠れた声を出す。その言葉にカミラは「あなたはバカなの」と声をだす。
「ソフィア私に強化魔法をかけて」
ソフィアはそれだけでカミラの言葉の意味を理解したようだ
「あなたは何を言っているんですか、彼を見捨ててあなただけでも逃げなさい」
ソフィアのその言葉でやっとカミラの考えがわかった。
カミラは俺を抱えてこのまま逃げるつもりのようだ。
「聖女様このままお逃げください。俺のことはいいから」
「何を言っているのドラゴンは私を狙っているかもしれない。ソフィア早く私に魔法を」
カミラの指示でソフィアは嫌々力を使った。
カミラは俺を抱えるとそのまま走りだす。
彼女は俺と違ってあまり苦しくなさそうだ。
どうやら彼女は身体強化の魔法を使っているのだろう。
しかし少しで目的地にたどり着くところでカミラも力尽きた。
当たり前だ彼女は連日の寝ずに治療をかけ続けてのドラゴンの相手だ。まともに休むことが出来ていない。
ドラゴンの射程範囲内に入るとまた手を振るう。
彼女はもう動く体力すら残っていないようだ。
俺は彼女に運ばれている間に回復した体力を使い彼女を投げ飛ばす。
投げ飛ばすだけで精一杯だった俺はそのままドラゴンの攻撃を受け吹き飛ばされた。
「ルーク!!」
彼女は急いで俺のもとに行こうとするが体に力が入らないようで動くことができない。
これでカミラだけでも救うことができたと思っていたがそれでは許してくれなかった。
ドラゴンはカミラを見つけるとそのまま俺と同じように手を振り下ろした。
「やめろーー」
俺の思いは届かず彼女は俺の側まで飛ばされたのだった。
やっと過去編が終わりです。これ40話までにエマちゃん出せるのかな




