32話 カミラの仕事
俺の自己紹介を聞いたカミラは暗い表情をしていた。
「あなたはルークよね。昔一緒に遊んだ覚えてないの」
彼女は恐る恐ると聞いてきた。俺が返答しようとしたときに横にいた先輩騎士が先に答えた。
「聖女様この者は一人の護衛騎士でございます。この者から事情は聴いております。聖女様の身の安全を守るために他の護衛騎士と同じ扱いをいたします。ご理解ください」
先輩騎士の言葉にカミラは悲しそうな表情をする。
先輩騎士は話は「本日は顔見せだけですので」と言う。
先輩騎士と一緒に部屋を出る際俺が「聖女様失礼します」といい出ていく時の彼女表情は今にも泣きだしそうだった。
その日からしばらくはカミラの護衛をせずに配属されてすぐということもあり訓練ばかりをしていた。
連携の仕方や建物内の巡回など基礎的な訓練ばかりでその後カミラと改めて会うのは一か月後だった。
「失礼します。本日はお供させていただきます。ルークですよろしくお願いします。」
俺が入る。するとカミラは俺の顔を見ると途端に笑顔になるが、朝の準備や予定の確認をしておりあいさつは帰ってこなかった。
その日は予定されていた治療や薬作りが終わり昼休みになるまで俺は彼女の元で護衛をしていたのだが、昼休みにカミラから「この護衛と二人にしてください」と言われ他の人たちは出て行ってしまう。だが外から人の気配がするので何かあればすぐにでも入ってくるように備えているのだろう。
「ねえルーク私には昔と同じようにカミラと呼んでくれない」
彼女は俺と二人になるなり突然そのような言葉を行ってきた。だが先輩騎士に彼女にそのようなことを言われても返す言葉を決められている。
「いえ、聖女様の身の回りの方を守るために私は他の騎士と同様に相手をさせていただきます。昔一緒に遊ばせて頂きましたがこれからは一人の騎士として扱ってください」
俺の言葉にカミラは暗い表情をする。
先ほどの仕事をしている時は忙しそうにしていたがそれでも笑顔で一人一人を診察していた。だが今の彼女は完全に絶望したかのように顔をしていた。
俺はこのまま退出する。
俺が退出するとき「待って」と呼び止められたが、これ以上彼女の顔を見ることも出来ず、彼女へなんて返せばいいのか分からずこのまま退出することしかできなかった。
俺が退出したとき先輩騎士が扉の傍におり「よくやりました」と言われた。
それからたびたびカミラの護衛したが他の者へ接するときは思いやりあり挨拶をする彼女が俺の時だけ冷たく少しミスをするだけでかなり叱責されるようになった。
だがそれも俺を一人の護衛騎士として扱っていると思い今の彼女の立場を考えると当然の扱いだと考えて騎士としての生活もしばらく続いたのだった。
その時国の傍にこの世界に一匹しかいないドラゴンを見たという噂が流れていた。
その噂を聞いた騎士団は何度か探索隊を出したが発見されることがなかったため見間違いだという結論に至っており、俺もそこまで気に留めることなく日々の仕事をこなしていた。
毎日カミラの仕事を見てきたがあまりにも忙しく彼女にしか治せない病も見つかり日に日に多忙になっていた。
しかし彼女は昔の彼女のままのようで、人を助けることにやりがいを感じているようでほとんど休むことなく働き続けていた。
「聖女様民を助けていることは素晴らしいと思いますがどうかご自身のことも考えてください。あなたにしか治せない病気もありますのでもしあなたに何かあったら大変です。どうか少しお休みください」
俺が心配して声をかけたが最近の彼女は俺を相手するときはずっと不機嫌だ。
「ふん、あなたなんかに心配される筋合いはないわ、でも不本意ながらあなたの意見に従うことにします。不本意ですが」
と言ってベットに向かった。しかしベットに座るとカミラはソフィアと今日治した病気のことで話し合っている。
新種の病気はどんどん薬を作り出している。しかし最初の治療はカミラがしなければならないのだ。
カミラが治療しその病気の特効薬を作り出し他の地域でも発生した場合はその薬を使う。
だが病気は日々変化しており彼女の仕事がなくなることはない。
そのためカミラは今この国にいなくてはならない人になっている。
そんな彼女を守ることが出来俺はとても誇らしくいた。




