134話 戻ってきた日常
長い間続いた大会が終わった。
魔術大会の結果は皆の予想通りエマちゃんが優勝した。
剣術では俺が優勝し魔術ではエマちゃんが優勝したため学園で天才姉妹として噂されるようになった。
しかし俺の内心は申し訳なさでいっぱいだった。
確かにエマちゃんは剣術も魔術も学問も天才だと俺も思う。
しかし俺は確かに剣術大会では優勝したが、強さの秘訣は前世の経験と訓練の時間の長さだし、魔術は全部カミラに任せっぱなしで俺本人は全く使えない。
学問は大人が子供の勉強をしてるんだから出来ることが当たり前だと思う。
しかしそのことを広めるということは俺が転生したということを広めることになる。
それをするとソフィアの力を使えば誰でも転生出来ることを広めるということだ。
ソフィアの説明によると転生の魔法は術者の命に関わると言う。
転生の魔法が伝わればきっと死を恐れる権力者はエマちゃんにその魔法を使うように強制するだろう。
そうなると最悪の場合エマちゃんが死んでしまいかねない。
そのことをソフィアとカミラに説明された俺はどうしても広めることができなくなった
そのため学園では天才ということを否定できない。
まあエマちゃんと姉妹というところはずっと否定しているけど。
実際姉妹じゃないし否定してもいいだろう。
大会が終わったためまた勉強をする日々に戻った。
しかしまだまだ低学年用の授業のためとても退屈だ。
こういう時カミラやソフィアが羨ましいと思う。
二人は授業を受ける義務がないためこの時間は自由に行動している。
カミラは学園に来た最初の方は俺と一緒に授業を受けていたのだが退屈になったのか気がついたら自由鼓動をするようになっていた。
俺的にはカミラとは同い年なのに、カミラはよくて俺がダメというのは納得いかない。
俺もカミラと同じように自由行動をしたいなと思いながら午前の授業を眠気と戦いながら過ごした。
昼食の時間になりレットと合流したテオ君とエマちゃんの四人で食堂に向かう。
大会の時はなかなか四人で集まることはなかったが大会が終わり日常に戻ったことで久しぶりに四人で昼食をとる。
だがしかし今日は一つだけ大会が始まる前の日常と違う点があった。
「エマちゃん通したの?ご機嫌だね」
エマちゃんが見るからにとてもご機嫌なのだ。
「んーなんでもない。あ、それと今日の夜デニスちゃん予定空けててね」
エマちゃんはなんでもないと答えるがしかし顔はとても笑顔だ。
予定を空けててというのはエマちゃんが俺の部屋に来るということだろう。
別にエマちゃんが俺の部屋に来ることは珍しいことはないがそんなに多いことではない。
理由は単純で俺が頻繁にエマちゃんの部屋の掃除に行ってるからだ。
だが別に断る理由がないため俺も「いいよ」と返事をする。
その返答を聞くとまたエマちゃんが笑顔になった。
これは誰が見ても機嫌がいいように見えるだろう。
しかしエマちゃんは何度聞いてもご機嫌の理由を答えてくれない。
きっと久しぶりの四人でも昼食に嬉しいのだろうと思いその日は戻ってきた日常を楽しんでいた。
近いうちにデニスちゃんは就職します。




