132話 エマちゃんの才能とデニスの才能
「そうなんだ。そういう魔術だったんだ。」
カミラの説明を聞いてエマちゃんが驚いている。
「え?エマちゃんって分かってて使ったんじゃないの」
エマちゃん自体が使った魔術のためエマちゃんが知らないわけがないはずだ。
なのにエマちゃんが本心で驚いている。
この驚き方は嘘でもなんでもない驚きだ。
「いつも遠征している時に周りの人が使ってるからそれを真似して使ってみただけ。使ったら目が見えなくてもいろんなものが見えて面白いから」
「ん?じゃあ探知の魔術ってことは分かってたんじゃない」
話を聞く限り何度も使ったことがあるように言っていた。
それならさっきはなんで驚いたのだろう。
「本当は遠距離に使うところ。こんな便利な魔術なのになんでみんな使わないんだろうね」
エマちゃんが驚いたのはそこか。
でも確かに話を聞く限りかなり便利な魔術に聴こえるけどみんななんで使わないんだろう。
ここはこの魔術について詳しそうなカミラに聞いてみる。
「デニスちゃんはもっと魔術のこと知っていた方がいいよ。その魔術を使っている限り他の魔術が使えなくなるから攻撃を喰らうかもしれない近距離で使うと危ないでしょ。まあエマちゃんみたいに二つの魔術を使える人なら気にしないかもしれないけど」
カミラは俺に呆れながら説明をしてくれる。
確かにカミラが言うとおりなのかもしれない。
まあ俺は魔術を使えないから本当の意味で理解できることがないだろうけど。
つまりさっきの試合みたいにエマちゃんが二つの魔術を同時に使えてレットが同時に一つしか魔術を使えない状況にならないと使えないってことか。
「つまりエマちゃんは天才ってこと?」
しばらく考えた結果この結論に至った。
それ以外考えられない。
「そうだね。エマちゃんは学生では考えられないくらいの天才だね。デニスちゃんとは大違い」
カミラは俺の意見に賛成してくれたが同時に俺を貶された。
確かに俺もエマちゃんとそこまで遠くない血が流れているはずだ。
なのにどこでこんなに差が出来たんだろう。
「そんなことないよ。デニスさんもエマ様と似ているところがあります」
俺が絶望しているとレットが慰めてくれた。
負けたせいで凹んでいるはずなのに慰めてくれるなんて本当になんていい子なんだ。
それにしても俺とエマちゃんの似ていること?
一体なんだろう。全く思いつかない。
俺はエマちゃんみたいに魔術は使えないし片付けが出来ない訳ではない。
一体どこが似ているんだろう。
「デニスさんは剣術の天才です。エマ様も同じように剣術の天才です。二人は似てるじゃないですか」
レットの説明にエマちゃんは「確かにー」と賛同してくれたが俺はもっと落ち込んでしまった。
カミラはニヤニヤと俺のことを見ている。
俺のどこが天才なのだろう。
エマちゃんは簡単に勝てると言っていたヴィクター先輩にあんなに苦戦してしまった。
確かに肉体がまだまだ出来ていないとはいえかなり苦戦した。
今世の年齢的にエマちゃんの方が三歳上とはいえ前世の経験からしたら二倍は剣術の訓練をしてきたはずだ。
それなのにこんなに差があるなんて俺は本当に落ち込んでしまった。
そして俺の考えが分かったのだろうカミラも俺のことをニヤニヤと見ていた。




