131話 試合の後のレットとエマちゃん
「お疲れ様レット」
俺たち三人は試合を終えた二人を出迎えに向かった。
最初に出てきたのはレットだった。
出て来たレットは先ほどの試合の影響で疲労困憊で立っているのがやっとといった状況だ。
服装も泥だらけでとてもお姫様だとは思えないような格好になっていた。
「デニスさん、カミラさんごめんなさい。負けちゃった」
俺たちの元についたレットが一番最初に言った言葉は謝罪だった。
本当に申し訳なさそうにしながらの謝罪で俺も心が痛んだ。
レットは何も悪くない、レットに出せる全ての力を使って戦ったのだ。
俺はその姿を友達として誇らしく思う。
これは俺の心からの気持ちだ。
その気持ちを言おうとしたところ先にカミラがレットを抱きしめる。
「レットちゃんは頑張ったよ。正直こんなにエマちゃんが強いなんて思ってなかった。最後のは私も確実にレットちゃんが勝ったと思ったもの。負けたのはレットちゃんのせいではないよ。エマちゃんの実力がわかっていなかった私のせいだよ」
まだまだ体の小さいレットを抱きしめるカミラは側から見たら姉妹や親子に見えるだろう。
それでも二人の間に絶対の友情を感じられた。
「レットちゃんお疲れ〜ってあれなんでみんな集まってるの」
しばらくするとエマちゃんが現れた。
エマちゃんはレットとカミラの二人のしんみりとした雰囲気を壊すように明るい口調で現れる。
その雰囲気のせいで四人分の目が一斉にエマちゃんに向く。
「レットちゃんすごかったね。正直負けると思ったよ」
その場にいた全員がエマちゃんを見ているのだがそのことを全く気にする様子がなく話を続けた。
「レットちゃんは凄いね。こんなに動き回る人なんて初めてだよ。それに魔術の構築も早いしレットちゃんも天才だね」
エマちゃんは場の空気を全く読むこともせずずっと話している。
「それに最後のピカーって光るやつなに?私も覚えたいんだけど。教えてもらっていい」
ずっとエマちゃんが話しているがそろそろエマちゃんを止めた方がいいのでないかと思い出した。
しっかり叱ったりするのも家族であり、精神的には姉?兄?である俺の仕事ではないかと思う。
きっと今までエマちゃんの才能のせいで誰も叱ったりする人がいなかったのだろう。
これからはそれは俺の仕事かと思い出した。
下手に叱って変にエマちゃんが勘違いしないようになんて言おうかなと考えていた時うずくまっていたレットが立ち上がった。
「エマ様先ほどの試合ありがとうございました。」
さっきまで泣いていたはずなのにしっかりとエマちゃんを見ながら話をする。
「私なりに頑張ったんですけど、やっぱりエマ様は天才ですね。良ければ最後見えていたんですか。どうやって避けたのか教えてもらっていいですか」
なんだかいつも以上にレットとエマちゃんの間に距離を感じる。
レットが意図して距離を置いている気がする。
「ん?最後のやつは全く見えなかったよ。でも目を閉じててもなんとなく魔術は分かるから」
どういうことだ?つまりエマちゃんは達人達にしか出来ないと言われている第六感が使えるということか。
前世の俺でもいくら習っても全く出来なかったその特技をエマちゃんは会得しているということか。
「たぶんデニスちゃん勘違いしてるよ」
おそらく俺がかなり驚いた顔をしていたのだろう。
俺の顔を見てカミラにツッコミを入れる。
「多分エマちゃんは魔術探知の魔術を使ったんだと思うよ」
「魔術探知?」
残念ながら俺は魔術についてあまり知らない。
攻撃魔法などは実際に対人した時のために覚えているが細々とした便利系の魔法に関しては自分が覚えれないと諦めていたためあまり調べたりしないようにしていた。
「やっぱり知らないか。本来は自分の守る時に遠くから魔術の奇襲に備えるための魔術なんだよ。その魔術を使うとどの方向からどれくらいの威力で魔術を打ち出すのかを感知するための魔法なんだけどエマちゃんみたいにこんなに近距離で使うことはなかなかないよ」
カミラが魔術の解説をしてくれる。
やっぱり俺の知らない魔術はたくさんあるみたいだ。




