126話 必勝のための特訓
「エマ様は去年も魔術大会に出て優勝してるよ」
レットによる去年の優勝者を聞いて俺は唖然とした。
だってエマちゃんって俺と決勝戦で戦ったヴィクター先輩に余裕で勝てるくらい剣術の腕があるのに魔術も優秀だと言うのか
「それって本当にエマちゃん」
だってそれって反則じゃないか。
みんな努力して剣術か魔術どちらかを極めてるのにエマちゃんは寝ているだけでどっちも極めてるなんて他の人のやる気がどんどんなくなっていくだろう。
エマちゃんなんて罪な子なんだ。
俺の家族とはいえその才能に嫉妬してしまいそうだ、
「デニスさんが飲み込めない理由もわかるよ。だって反則級の才能だもの。エマ様の弱点なんてないと思ってたもの」
レットはエマちゃんとほとんど話したことがなかったためエマちゃんの生活能力のなさを知らなかったのだろう。
実際俺と関わるようになって度々エマちゃんの部屋を訪れる機会が増えたおかげでエマちゃんの部屋の汚さや家事の出来てなさを知ったらしい。
俺からしたら生活能力のなさを先に知ってしまったためまだエマちゃんに武術の才能があることを理解できないでいる。
俺はいつかエマちゃんの才能を理解できる時があるのだろうか。
「レット諦めるの?」
しかしなぜかレットはもう諦めたように見える。
そこは俺が納得できないでいる。
「デニスさんはまだエマ様の戦う姿を見たことがないから言えるんだよ」
レットは去年のエマちゃんの戦う姿を見てそれで自分が勝てないと決めつけているのだろう。
「レットは私がヴィクター先輩と戦うと決めた時何をした」
レットはずっと俺と一緒にいた。
だから俺がどうやってヴィクター先輩に勝ったのか知っているはずだ。
「でもデニスさんは剣術の天才だから」
しかしレットは完全に諦めたように言う。
圧倒的な天才に戦う前から敗北を認めてしまっている。
こんな状態なら勝てるものも勝てない。
「私はヴィクター先輩に勝つためにエマちゃんのところに特訓をしに行ったよね。」
レットはずっと俺が何をしたのか見てきたのだ。
全く同じようには出来ないだろうがそれでも別の方法があるだろう。
俺が言いたいことが分かったようでレットは少し晴れやかな表情になった。
「デニスさん探しにいくよ」
レットが先陣を切って走り出したので俺も一緒に走り出した。
「カミラゼエゼエさん訓練をゼエゼエお願いしますゼエゼエ」
俺とレットが走りまわりかなりの時間が経った頃レットの目的の人が見つかったようだ。
探していたのはなんとカミラだった。
俺はてっきりソフィアにお願いしにいくと思っていたのだがレットが選んだのならその考えを否定しようとは思わない。
「レットちゃんどうしたの?それとそんなに疲れているみたいだけど大丈夫?」
俺とレットは必死に走り回りながらカミラを探し回ったため二人揃って汗だくだ。
「カミラさんを探してたんだけどなかなか見つからなくて」
カミラの居場所ならすぐに分かって思いつく場所を探し回ったのだがなかなか見つからなかった。
最終的にはいないと思っていたエマちゃんの部屋にいた。
理由が理由のためエマちゃんに会いたくなかったのだがカミラがここにいたのだから仕方ない。
それに今部屋の中にはエマちゃんがいない。
ここで話しても別に大丈夫だろう。
「カミラゼエゼエさんにゼエゼエ訓練をしてほしいのゼエゼエの」
レットはまだ息が整っておらずだが必死に意識を伝えようとする。
「そんなに走り回って、大事な用事みたいだね。でも息を整えてからでいいからね。ここで待ってるから」
カミラもレットの必死さを汲み取ってくれたみたいで話を聞いてくれるみたいだ。
しばらくするとレットは息を整えた。
「ごめんなさい。本当は早くカミラさんが見つかると思ったんだけど、なかなか見つからなくて。本当はデニスさんがカミラさんを見つけることができればいいんだけど」
レットは息を整えると俺を非難する。
「そうだね。いつになったらちゃんと魔術を使えるようになるんだろうね」
レットの意見に賛同したカミラも俺を責める。
俺だって使えるようになりたいのだ。
そのためにカミラに何度も訓練に付き合ってもらっているのだがそれでも使えるようにならない。
俺の頑張りを知っているであろうカミラには分かって貰いたい。
結果が出てないため何も言い返せないが。
レット特訓するってよ




