125話 五回戦の相手
俺とカミラはレットはせいぜい三回戦まで行ければいいだろうと思っていた。
しかし俺たちの予想していたがなんと四回戦を突破した。
「やっぱり私は天才だね」
四回戦の相手は三学年上の十一歳が相手だった。
魔術大会に出ている人が多いためまだまだ決勝戦まで遠いがそれでも四回戦を突破するとはそれだけ実力があるということだ。
しかしこのままでは問題があるかなと思った。
でも朝の訓練もレットの真面目な性格のせいかいつも通りしており大会もレットの実力で勝っているためそれを俺もカミラも否定できずにいた。
レットも三回戦を突破したテオ君の時と同じように天狗になってはいたが五回戦の相手が決まった瞬間かなり落ち込んだ。
「レットどうしたの?さっきまで優勝するって息巻いてたよね」
俺はまだレットの五回戦の相手は誰なのか知らない。
しかしこの学園のことを俺以上に知っているレットがここまで落ち込むと言うことはきっとそれほど有名な人が相手なのだろう。
「私の五回戦の相手が決まったの」
俺が思った通りレットは五回戦の相手が相当実力のある人で落ち込んでいるみたいだ。
だが俺はこの学園のことはあまり詳しくない。
王族の顔すら覚えていないのだ。
きっと名前を言われても俺にはわからないだろう。
「一体誰になったの」
俺は話を聞いてみる。
きっと名前を聞いても分からないだろうがそれでも聞いてみる。
レットの不安が少しでも解消できたらいいなと思ったからだ。
「・・様なの」
「え?なんて」
レットの声が最初小さかったため聞き取れない
「エマ様なのーー」
俺が聞き返すと今度はかなり大きな声で名前を言われた。
「エマ様と言うのか。どこかできいた気がするけどどこだっけなー」
きっと俺の知っているエマちゃんとは別の人だろう。
一体誰なのか一切分からないがきっとレットが絶望するくらいだからきっと素晴らしい人なのだろう。
「何言っているのエマ様だよエマ様。デニスさんのお姉さんのエマ様」
俺の姉のエマ様・・・・?
「ってエマちゃんなの!?」
レットが誰のことを言っているのかわかり今までにないほど驚いた。
ていうかこんなこと前にもあったな
「そうエマ様が相手なの」
さっきまでの大きな声はどこにいったと言うほど小さな声でまたレットが落ち込んでしまう。
でも相手はエマちゃんだよね。
俺の知っているエマちゃんは部屋の片付けが出来なくて朝起きることが出来なくて何処かおっちょこちょいな人だ。
そんな人が年下といえレットに負ける様子が分からない。
と言うより俺はエマちゃんが魔術大会に参加していることすら知らなかった。
だから俺はエマちゃんの応援に一度も行ったことがない。
きっと俺が今まで一度も応援に行っていないと怒るかもしれないな
「エマちゃん相手なら大丈夫だよ」
そこまで考えるとレットが落ち込んでいることを思い出し励ましをする。
俺はお世辞でもない俺の本心だ。
「デニスさんが私を励まそうとしていることは分かっているけど、エマ様相手に勝てる気がしないよ」
しかしレットは先に負けると思い込んでいるようでなかなか立ち直らなかった。
「だってあのエマちゃんだよ。正直五回戦まで残っていることに驚いてる」
これは俺の本心だ。
訓練をしているところも見たことがないエマちゃんが毎朝訓練しているレットに勝てるわけないじゃないか。
努力は人を裏切らないとよく言うし。
「エマ様の去年の成績知ってる?」
俺はお世辞を言っていないと分かったようでレットから聞かれる。
残念ながらエマちゃんの成績は知らない。
恥ずかしながらエマちゃんの成績を知らないのだ。
「去年も魔術大会に参加して優勝してるよ」
「へ・・」
俺はついつい言葉を詰まらせてしまった。
一体レットは何を言っているのだろう。
エマちゃんは天才でした。




