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119話 決勝戦②

グラウンドに入ると俺は観客の多さに驚いた。

決勝戦というのもあるだろうがそれとヴィクター先輩のファンもいるのだろう。

俺が今までの試合に比べて十倍くらいの観客がおり観客の多さで一番緊張してしまう。

グラウンドに向かっていると観客の声が聞こえてくる。

だいたいは俺の見た目を見て「本当にこれが対戦相手?」「相手チビじゃない」「ハーハー幼女いいよー」ばかりだ。

俺のことを見た目で馬鹿にしている人ばかりだ。いや最後のやつは違うか

ヴィクター先輩は既に定位置についており後から俺が来た。

ヴィクター先輩を待たせて俺が後から入ってくるなんて重役出勤だ。

それも王子様を待たせるなんて俺はなんて偉くなったのだろう。

そんな全く関係ないことを考えながらなるべく観客のことを意識しないようにしながら定位置に向かった。

なるべく観客のことを意識しないようにするためだ。

気がつくと定位置に立っていた。

「すみません遅くなりました」

周りの声が大きく俺はなるべく大きな声で挨拶をする。

「ふん、始めようか」

しかしヴィクター先輩の返事はそっけないもので怒らせたかなと不安になる。

王子を怒らせると一体何をされるか不安だ。

俺はこの学園に無料で通わせてもらっている立場のためよくてこの学園を追い出される程度だろうが、最悪死刑だろうか。

この試合が終わったらエマちゃんとレットにお別れの挨拶をしないといけないのだろうか。

意外とこの学園生活楽しくて気に入ってたんだけどな。

まあそうなったらエマちゃんとレットが暴れてこの学園に残れそうなのだが。

そう考えると大丈夫なような気がしてきた。

少し元気になってきた俺は定位置で剣を構える。

ヴィクター先輩は最初から二刀流で戦うようだ。

テオ君の時は最初から一刀流だったのだが俺相手の時は二刀流だ。

それほど俺のことを意識してくれているのだと思っておこう。

そう思わないとあまりにも俺が哀れだ。


開始の合図と同時にヴィクター先輩は俺の元に走り出した。

向こうから仕掛けてくるのならちょうどいいと思い俺も剣を構える。

事前にエマちゃんから聞いていた通りの動きをして来たため事前の予習通り回避してから反撃をする。

予定ではそれで終わるはずだったのだがヴィクター先輩は体を捻り転がりながら回避した。

俺がもう少し体が大きかったら当たっていたのだが俺もまだまだこの体に慣れていない。

だが言い訳をさせてほしい。

この体に慣れたと思ったら成長してまた新しい間合いを覚える必要がある。

前世は騎士になった時には成長が止まっていたため間合いを覚え直す必要がなかったため何度も覚え直しをして大変なのだ。

しかしここで足を止めたらいけないと思い追撃をする。

だがここでもヴィクター先輩はそれを回避する。

それはもう側から見たらみっともなく回避をする。

服が泥だらけになってもそれでも回避をする。

最初はプライドが高い人なのだと思っていたがこんなに必死に勝とうと足掻く姿に見直した。

そして彼の全力を見たいと思ってしまい攻撃の手を止めた。

俺が攻撃を止めるとヴィクター先輩は不機嫌そうに立ち上がる。

「手を抜いているのか」

俺が追撃を止めると立ち上がるのを待っていたのが気に入らないようだ。

「はい、でも先輩を舐めている訳ではありません。もっといろんな戦い方を見たいんです」

これは本当の気持ちだ。

こんな珍しい戦い方をする人のたくさんの技を見たいのだ。

しかし彼のプライドは傷ついたようで不機嫌そうにする。

するとヴィクター先輩は剣を握り直す。

次はどんな手でくるのかワクワクしながら俺も集中した。




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