110話 お出迎え
「え?なんて」
さっきレットがいった名前を信じることができず聞き返してしまった。
「だからエマ様だよ。エ マ 様」
レットにもう一度名前を聞いた。
この学園にエマって名前の人がいるのか、どこかで聞いたことある気がするけどどこだろう。
とりあえず、
「きっととっても体ががっしりした人なんだね」
名前的に女性だろう。
それでヴィクター先輩に勝てるなんてきっと体がガッシリした人に決まっている。
そんなにがっしりした体の女性はなら一度あったら必ず印象に残っているはずなのだが残っていない。
どこで名前を聞いたのだろう。
もしかしたら家名を聞けば分かるかもしれない。
「レットそのエマ様の家名はなんて言うの」
俺の質問を聞いたレットは呆れている。
「デニスさん何言いてるのエマ様に家名がないことはデニスさんが一番知ってるでしょ。お姉さんでしょ」
・・・・・・・・・え?
「エマ様ってエマちゃんってこと?」
「だからそう言ってるじゃない」
「えーーーー」
俺はついつい叫んでしまった。
エマちゃんって剣術が得意だったのか。
そういえばそんな話少し前に聞いた気がする。
しかしそこまで実力があるとは思っていなかった。
「でもエマちゃんは今いないよ」
レットがなぜここでエマちゃんの名前を出したのだろう
残念ながらエマちゃんは今遠征に行っていていない。
それなのにどうして今エマちゃんの名前を出したのだろう。
「それなんだけど。今日にでも帰ってくるらしいよ。エマ様」
「本当!エマちゃん帰ってくるの」
そのことを聞いて俺は笑顔になる。
たくさんの護衛がいると分かっていても何があるか分からない。
早く実際に会って無事を確認したい。
「デニスさん嬉しそうだね。」
「やっぱり家族だからね。実際に合わないと心配だよ」
今までエマちゃんに会っていなかった期間に比べてかなり短いとはいえやっぱり会えないと寂しい。
「そう思っているならもっと甘えればいいのに、デニスさんのお姉さんなんだから」
「アハハ」
確かに体の年齢的にはエマちゃんの方がお姉さんだ。
しかし精神年齢的には俺の方がだいぶん年上のため素直に甘えられないのだ。
「だからエマ様にヴィクター兄さんの癖を聞いたらいいんじゃない。」
確かに何度か戦って実際に勝っているエマちゃんに聞くのが確実だろう。
それに久しぶりに帰ってきたエマちゃんに会って無事を確認したい。
「レット帰って来る時間は分かる」
俺は早速会いに行こうと思う。
「正確な時間は分からないけどそろそろじゃない」
流石のレットも正確な時間は分からないみたいだ。
それでもいつ帰って来るのか知っているとは流石レットだ。
「それなら門のところで待つ」
俺はそういうと門に向かって走り出す。
前は急げだ。
「あ、待ってデニスさん私もいく」
俺はレットを待たずに走りだす。
レットは俺を追いかけるように走り出した。
俺たちが門に着くと丁度騎士たちが集まっていた。
こんなにたくさんの騎士が集まっていると言うことはきっと遠征から丁度帰ってきたところなのだろう。
俺は目的の人物を探す。
おそらく馬車に乗っているのだろうがそれでもたくさんの馬車がありどれか分からない。
外から中の様子が見えないかと思い探す。
「ちょっと君ここにいると危ないから離れて」
俺が馬車の周りをうろうろしていると騎士に怒られてしまった。
子供が迷い込んだのだと思われたのかもしれない。
「ごめんなさい。でもここにエマちゃんいませんか」
せっかくなのでこの騎士にエマちゃんのことを聞いてみようと思う。
「エマ様ならいるけど、もしかしてファンの人?誰だか分からない人を合わせるわけにはいかないな」
確かにこの人達は守ることが仕事なのに誰だか知らない人を合わせるわけないか。
まあ後で寮で会えばいいかと思い帰ろうとする。
「デニスさん待ってー」
帰ろうとするとレットの声が聞こえてきた。
俺は全力で走ったためレットを完全に置いてきてしまった。
レットは俺の側に来ると息を切らしている。
「レット落ち着いて息を整えて」
このままではまともに話すこともできないためレットが息を整えるのを待つことにした。
「ヴァイオレット様なぜここに」
息を整えているのを待っていると近くにいた騎士が大きな声を上げた。
その声に反応するように周りの騎士達がどんどん膝をつく。
気がつけば俺とレット以外周りの人々全員が膝をついていた。




