109話 試合の準備
俺の四回戦の試合は翌日行われた。
三回戦までは自分のこの学園での実力を確かめたい、負けてもいいと思っていたのだがテオ君のために仇をとると決めたためここで負けるわけにはいかない。
この試合は今まで以上に真剣に臨んだ。
相手はこれまでと同様に剣を一本。一刀流のようだ。
流石に二刀流なんて変則な人が何人もいるとは思わないがそれでも他にいないとも限らない。
試合中に不意を突かれるとそれが原因で負けてしまうかもしれない。
試合が始まるまで俺は真剣に相手の観察を行った。
相手の観察を行うことは相手の隙を突けると言うことでもある。
そうすることで試合をかなり有利に進めることができる。
本当はクロード先輩のように相手の試合を見て相手の癖や戦い方も研究しておくべきなのだろうが残念ながら試合を確認する時間がなかった。
そのため真剣に相手の観察をして勝負に挑んだ。
試合の結果は俺の圧勝だった。
前世での俺は厳しい試験を乗り越えて騎士になった。
騎士になっても護衛騎士になるためにたくさんのライバルと戦い勝ってきたのだ。
そんな俺が騎士にもなっていない学生に負けることなんてあり得ない。
それにクロード先輩はこの学園の生徒の中でも強い方だったらしく今回の相手はそこまで苦戦することはなかった。
「デニスさんベスト4入りおめでとう」
試合が終わりグラウンドから離れるとレットが待っていた。
次の五回戦が準決勝で六回戦が決勝だ。
そう考えるとテオ君は八歳でベスト8に入ったのだ。
そう考えると相当善戦したと誉めるべきだろう。
しかしベスト4入りした俺が言うのも皮肉に聞こえるだろうから俺からは何にも言わない。
「まだまだ私は負けられないから」
テオ君の仇を打つまでは負けられない。
俺はテオ君の目標にならないといけない。
「それはヴィクター兄さんのことだよね」
俺はレットに言わるまで気がつかなった。というより忘れていた。
ヴィクター先輩は王子様とレットの兄と言ってたじゃないか。
それなのに俺はテオ君の仇を取ると言って目の敵にしていた。
レットからしたらどちらを応援したらいいのか分からないだろう。
「ごめん。レットからしたら家族を応援するのが当たり前だよね。お兄さんを応援して大丈夫だよ」
本当はレットが応援してくれた方が嬉しいのだがこればかりは仕方ない。
もしかしたらテオ君なら応援してくれるかもしれないがテオ君の時のみたいにヴィクター先輩の応援客ばかりで完全にアウェーだったらきついな。
「あ、別にデニスさんがテオの仇をうつのは私は応援してるよ」
俺が一人で戦うことを決意したのだが違ったようだ。
「本当にいいの?だってレットにとってお兄さんでしょ」
レットは優しい子だ。こんな子が家族を大事にしてないとは思えないのだが。
「私とヴィクター兄さんはあんまり話したことなくて、というよりヴィクター兄さんとは異母兄妹だから」
まさかのレットの言葉に俺は驚く。
そんな重要そうな秘密俺が知ってもいいのだろうか
しかしレットは俺が驚いていることに呆れた顔をする。
「まさかデニスさん私たちの関係知らないなんて言わないよね。」
レットに言われて俺は頷く。
本当に知らなかったから。
「別にこのことは秘密にしているわけではないから気にしないで、本当にデニスさんは王族のこと知らないんだね」
俺の王族に関しての無知にレットは呆れる。
俺もこの学園に通い出してから自分はこんなにこの国のことを知らなかったのかと驚いている。
「それよりデニスさんはヴィクター兄さんのこと知りたいんだよね」
レットの言葉に俺は驚いた。
俺はヴィクター先輩の戦いをテオ君の時しか見ていない。
二刀流との戦い方に不安を覚えていた。
少しでも情報があるととっても助かる。
「レットは癖とか知ってるんだね。教えて」
俺は興奮しながら手を取ろうとする。
もしこれで重要な情報を知ることが出来たら戦いを有利に進めることができる。
しかしレットは俺が手を取ろうとするとかわし離れて言ってしまった。
「残念ながら私はヴィクター兄さんの剣の知識は知らないよ。」
レットに言われて俺は落ち込む。
そうだよね。剣術に詳しくないレットが剣の癖とか知ってるわけないよね。
「でもね。確かにヴィクター兄さんはこの学園での剣術の腕は上位に入るけど一番強いわけではないんだよ」
一番強いわけではないと言うことはヴィクター先輩に勝てる人がいるということだろう。
しかし俺が見たかぎりではヴィクター先輩の実力が頭一つ抜けている。
「それは一体誰」
しばらく考えたが誰も思いつかなかった。
残念ながらクロード先輩でもヴィクター先輩に勝つことはできないだろう。
「それはエマ様だよ」
俺はその言葉を理解することが出来なkった。
どこかの話で出しましたがエマちゃんは天才です。




