106話 四回戦開始
今日はテオ君の四回戦の日だ。
三回戦の日にレットがテオ君を許したせいで俺も許すしか無くなった。
当然だが朝の訓練もレットが許したせいでテオ君は参加した。
もちろん俺は許すと言っていないためいつも以上に厳しくしていた。
しかしそれでもかなり辛そうにしながらついてきたため成長を感じてしまった。
褒めはしなかったが。
「テオ君頑張ってね!応援しているから」
テオ君の試合の時間になりレットはテオ君に声援を送る。
俺はまだ怒っているため声援を送ったりしない。
いつ許したらいいのか分からなくなっているだけだけど。
「頑張ってくるから見ててくれ」
テオ君はグラウンドに向かって歩き出す。
最初緊張していたはずなのにかなり慣れてきたみたいだ。
「デニスちゃんはまだ怒っているの?いいかげん許してあげたらいいのに」
レットは俺がテオ君と話そうとしないのを見て少し呆れながら言う。
「別に怒っているわけじゃない。私はそんな器の小さな人間じゃないよ。それより今日は観戦者が多くない?」
普段の試合に比べるとかなりの数観客がいる。
この時期は授業がなくなっているため参加しない生徒の中には実家に帰省している人も多く寮の食堂もかなり空いている。
そのため観戦に来ている生徒は物好きか試合の参加者か帰省できない何らかの理由がある生徒が大半だ。
そのため普段の試合は20人くらいの観客がいる。
それなのに今日の観戦者は100人くらいいるのではないか
「そうかな。私はあんまり見に来ていないから」
レットは剣術大会に参加していないため観戦に来ていない。
そのため普段より観戦者が多いことに気づいていなかったみたいだ。
俺は次誰と戦ってもいいように頻繁に観戦しているため普段より多いことはすぐに気づいた。
「そんなことよりデニスちゃんは勝つと思う?テオ君」
レットはテオ君のことを心配しているみたいだ。
正直テオ君はこの試合で敗北すると思う。
三回戦もギリギリで勝ったような者だし四回戦ともなるとかなりの人数が絞られる。
テオ君も訓練を始めた当初よりもかなり強くなっているとはいえきちんと訓練しておりなおかつ体も出来ている上級生相手はもう厳しいだろう。
そこまで考えた俺は「難しいかな」と答えた。
俺の答えを聞いたレットは祈りながら「テオ君頑張れ」と呟いていた。
テオ君羨ましいな。
「そういえば次の試合は誰なの」
祈っていたはずのレットはふと疑問に思ったようだ。
「知らない」
残念ながら俺もテオ君の相手は誰なのか知らない。
「でもこれだけ観戦者がいるんだからかなりの有名人なんじゃない。レットは誰か知らない」
そうでもなければ観戦者がこんなにいるはずがない。
「これだけ有名ならもしかしたらかなり強い人なのかかなり身分の高い人ってことだから。でも強い人って私もよく知らないし、有名な人なんてたくさんいるから私も分からないかな」
確かに有名貴族ばかりが通っているこの学園で有名人はたくさんいる。
先に出てきたのはテオ君だった。
テオ君の姿を見た観客は「誰あれ?小さくない」「何年だよ」などさまざまな声が聞こえてくる。
これで観客はテオ君を見にきた訳ではないことが分かった。
すると相手も入ってきた。
入ってきた生徒を見て俺は驚いた。
最上級生だと思っていたら体はまだまだ成長しておらず子供だった。
もちろん俺達よりも年上だがそれでもこんな子供がここまで残っていることに驚きだ。
「あんな子供が残っているなんて驚いた、レットはあの人は誰か知ってる?」
残念ながらこの学園の有名人を俺は知らない。
レットなら知っているだろうと思って俺は聞いてみた。
「デニスちゃん本気で言ってる?」
レットは呆れたようにいう。
そんなに有名人なのだろうか
「あの人はヴィクター・ゴーシュ・キール。私の三つ上の兄だよ。」
まさかの王子様だった。
テオ君は勝てるのか




