103話 三回戦②
クロード先輩の剣はまっすぐ俺に向かって触れられる。
俺は相手に真っ向から攻撃を仕掛けられた場合はいつも剣を避け追撃をする。
今回も同じように避けようと思い開いての剣をみる。
剣を見る際相手の顔がチラッと見えた。
クロード先輩の顔は少しニヤついている。
俺は剣を避けると追撃をせずに距離を取った。
するとクロード先輩の剣は空をきった。
「あれなんで距離を取るのかな」
クロード先輩は剣を構え直し余裕の笑みを見せる。
「先輩になにか考えがあるように見えたので」
実際に空振りになった剣は全然力が入ってなかった。
おそらくこの攻撃は囮で次の技に繋げようとしていたのだろう。
「やっぱりバレた?君はギリギリで避けた後、追撃をしてくると思ったからそれに合わせやすいようにしようと思って」
先輩は余裕そうに言う。
「先輩はもう少し隠すこと覚えた方がいいですよ。顔に出過ぎです。」
俺は言いながら表情を作る。
しかし内心はかなり焦っていた。
この先輩とってもやり辛い。
俺が二回戦しか先輩の戦いを見ていないが先輩は一回戦の試合から見ていたと言っていた。
なんてやり辛いんだろう。
二回戦を見た時は先輩は俺のように小細工をするタイプではなく他の生徒と同じように力と力の打つかり合いをしていた。
しかし今の先輩は俺のように小細工をして絶対に勝つという意志を感じる。
間違いなくこの学園に来てから戦った中で一番強い。
もしカミラの力を使うことができれば先輩の小細工を力技で押し返すことが出来るのだが剣術大会では魔法を使うことが出来ない。
本来は上級生の方が魔法の練度が高いため純粋な技術を競えあえない。
しかし俺の場合は先輩が使うよりも強力な魔法をカミラが使える。
本来とは逆の状態になっていた。
俺たちはしばらく睨み合いになっている。
迂闊に攻めるとカウンターを決められる。
先輩も同じ考えのようで動かない。
こうなるんだったら最初先輩が倒れた時に追い討ちをしておけばよかった。
「先輩は早く来ないんですか、それとも怖気付いたんですか」
睨み合いになった時とりあえず煽る。
俺の得意なカウンター技を決めるためには攻撃をしてもらわないといけない。
「君はそうやって戦い方もするんだね。やっぱり面白いよ」
しかし先輩は全く乗ってくれない。
「君も思っているんじゃない。この学園は実力よりも戦術ばかりだって」
クロード先輩の言うとおり俺の学園ではまだ戦術の授業はしていないが上の学年に行けば行くほど多くなるらしい。
それはこの学園はだいたいが貴族の子供ばかりが通っており戦争になっても最前線で戦わず指揮をとることが多いからだろう。
そのため一回戦の相手ではラデン相手に全く苦戦もせずに勝ってしまった。
本来はあそこまで体格差があれば簡単に勝負がつくことはない。
なのに簡単に勝ててしまった。
それはあまり訓練をしていない証拠だ。
「僕は戦うことが好きなんだ。なのに骨のある相手がいなくて、でも今は楽しいよ君と戦うのは楽しい。」
先輩はとてもいい笑顔で言う。
この気持ちは本物なのだろう。
「私も先輩と戦うのは楽しいです」
これは嘘でもなんでもない俺の本当の気持ちだ。
さっきまでカミラのことばかりを考えていた自分が馬鹿らしい。
別にこれは学園の授業だ。
負けたっていいじゃないか。
負けたって失うものなんて何もない。
それなら実力と実力の打つかり合いでいいじゃないか。
「先輩、今度は私から行きます。」
俺はそういうと先輩に向かって走り出した。
先輩も俺を迎えうつ。
俺は先輩の剣を避けることなくまっすぐ剣を振った。
先輩は俺が避けると思っていたのだろう。先輩の剣は空をきる。
俺の剣がそのまま先輩の剣に当たった。
「勝者 デニス!!」
審判も興奮したように大きな声で宣言をした。
デニスちゃんは今までで一番楽しそうですね。




