100話 剣術大会初戦
テオ君の試合が終わった。
結果としてはテオ君の圧勝だった。
「テオ君お疲れ様」
結果が分かっていたが、それでも試合終わったテオ君に労いの言葉をかける。
「デニスありがとう、まあ今思えば初戦だからそこまで気をつけることはなかったかな」
テオ君は先ほどまでの緊張した表情とは違いかなり晴れやかな表情をしている。
自分の試合が終わりしばらく自分の試合がないからだと思う。
「明後日はデニスの試合だろ。絶対応援するから頑張れよ」
自分が勝ったからか俺の試合を応援する余裕すらある。
「テオ君が勝ったから私も勝たないと」
弟子のテオ君が勝ったからには師匠の俺が一回戦を突破しなくては面子が保てない。
まあ試合を見ている限り一回戦は年齢が近いもの同士が戦っているため俺の時も同世代になるだろう。
去年テオ君が勝った時も少し上の人相手だったと言っていた。
これでも俺は前世では騎士をしていた。
子供相手に剣術で遅れを取ることはない。
俺は二回戦の心配をしていた方がいいだろう。
「どうしてこうなった」
待ちに待った試合の日になりグラウンドに来て初めて相手を見た。
「おいランデお前はラッキーだな。こんなチビが相手なんて」
「ランデお前一回戦突破確定だな。」
観戦の生徒が相手の選手に野次を飛ばしている。
他の試合を見ていたが一回戦の相手は皆体格や年齢が近い選手ばかりだったため俺も同じような人が相手かなと思っていたがなぜか俺だけが身長が180cmくらいある大柄の男が相手だった。
対して俺は他の子よりも成長が遅いらしく100cmくらいしかない。
身長差約80cmである。
いくらなんでも俺との差が大きすぎるだろう。
「ねえ君デニスさんだっけ」
俺が相手との差に驚いているとランデが話しかけてきた。
「はいそうです」
とりあえず相手は上級生の為敬語で返す。
「よかったら棄権してくれないかな。もちろん手加減をするつもりだけど試合になったら怪我しちゃうかもしれないから。君も怪我はしたくないだろう」
ランデはもう俺に勝った気になっているようだ。
相手にそういう態度を取られると俺も頭にくる。
だが俺もランデ相手に負ける気がしない。
確かに相手の体は大きいがそれでも体付きや気迫は大したことはない。
それに俺の見た目だけで実力を判断している。
騎士団の中に体は小さいがそれでも実力がある人ばかりだった。
そのため剣の構えや気迫で判断するものだ。
「それはこちらのセリフです。怪我をしてもいいのなら相手をします」
最初は体格差で驚いていたが今は全く気にならない。
本当はもっと強い相手と戦えると思っていたため肩透かしだ。
ランデは俺の言い方が頭にきたのかさっきまでの余裕の表情から怒った表情に変わった。
これで最初から手を抜かず戦ってくれるかな。
「痛い目に合わないと分からないみたいだな」
ランデが剣を構えるのを見て俺も剣を構えた。
俺たちが剣を構えるのを見ると審判がやっと試合開始の合図をした。
最初に動き出したのはランデだった。
しかし構えと同じように最初は考えなしの突きだった。
俺は突きを避けると足に向かって剣を振る。
相手がきちんと体を鍛えているのなら俺程度の力では振るわれても少し痛いかもしれないがバランスを崩すほどではない。
しかしランデは簡単に転んでしまい剣を手放してしまった。
ランデに少し嫌がせ程度で振るった剣のためまさか本当に転ぶとは、しかも剣も落とすとは思っていなかったため俺は慌ててランデの頭に剣を当てる。
それを見た審判は呆然としている。
しばらく経つと審判はやっと現実を理解したのか「勝者 デニス」の宣言で試合が終わった。




