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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第三章 レイラ
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第四十四話

「ふゆっ! お姉ちゃん!」


「ようこそ、レイラ」



 王と将が勢ぞろいしている中、こんなにも純粋に喜びをあらわにできるのはレイラしかあり得ない。



「お姉ちゃん達、私に何かご用??」



 シェラに一直線に抱きついたレイラは、その後、すぐにハッと身を離して首をかしげる。



「えぇ、ちょっとレイラに聞きたいことがあるのよ」



 全員が揃っているという環境において、レイラは毎回、何かを求められた。そのために、レイラもすぐにシェラの言葉にうなずく。



「ふゆっ、分かったの! お姉ちゃんのためなら、どんなことでもするの!」



 そんなレイラの言葉に、一瞬だけ瞳を揺らしたシェラは、レイラにその動揺を気づかれないように目を閉じて、次に開いた時には、王としての眼差しをレイラへ向ける。



「では、ロゼリア王国国王、シェラ・ハスフェルトとして問う。レイラ、あなたは、どうやって私達に手を貸した? フィスカの本、マディンやアシュレーへの報告、そして私への紅茶、といえば分かるか?」



 『お姉ちゃんのためなら』といったレイラの言葉を否定するように、シェラは王として問う。その姿に、レイラは戸惑いを浮かべながらも、答えを口にする。



「どれも、私の耳で聞いて、様々な情報を得た結果、転移で手助けしたまで。姉上が不快に思うのであれば、今後は止めましょう」



 そう、レイラの耳は、キメラとしてのうさぎの形のもの。そして、シェラ達は誰一人として、レイラの耳の性能に関して思い至ってはいなかった。



「耳……」



 シェラの目が……いや、その場の全員の目が、レイラのうさ耳に集中し、レイラはピコピコとその耳を動かしてみせる。



「……レイラのその耳の能力は理解した。しかし、情報を盗み聞きすることは褒められたことではない」


「それについては謝罪いたします。どこからともなく聞こえてくるものとはいえ、本来は聞いてはならないもの。知っていたとしても、隠すべきことでしょう」



 そう、本来は、レイラはその力を隠すべきだった。そうすれば、レイラはシェラ達にこうして追及を受けることもなかったのだから。ただし……。



「しかし、私の耳であれば、人の動き、物の位置、会話の内容までならば網羅できるものであり、切り落としでもしない限りはどうにもならないものでもあります。ですので、可能であるならば、この場で耳を切り落とす許可を」


「なっ、そんなことは認めないわ!!」



 お姉ちゃん命なレイラにとって、シェラ達の役に立つというのは、何にも代え難い使命。レイラは、隠して役に立てないことよりも、それとなくバラして役に立つ道を、もしくは、処分される道を選ぼうとしていたようだった。


 色を失って叫ぶシェラは、王としての仮面が剥がれかけていた。しかし、それを指摘するものは誰も居ない。むしろ、シェラに同意するメンバーばかりだ。



「では、どうか、私に姉上達の役に立つ許可をいただけませんか?」



 『役に立つ許可』など、随分と大雑把な言い回しではあれど、シェラにとっては、レイラの幸せが一番だ。



「……それで、レイラが前に進めるのであれば、それでも構わない」


「っ……」



 レイラの言葉の曖昧さが、いかに危険なものか気づいたフィスカは、咄嗟に声をあげようとして、シェラに視線で止められる。



「ただし、必ず報告をしてもらうわ。私達の役に立つために、いったい何をしたのかを」


「ありがとうございます。では、後ほど、報告書をまとめて持って参りましょう」



 ニコリと、普段とは違う大人びた笑みを浮かべるレイラは、その姿とのギャップが酷い。しかし、シェラはそれに関して何かを言うつもりはないのか、レイラにうなずきを返して話を区切る。



「では、ここからはレイラのお姉ちゃんとして話すわ」


「ふゆっ、分かったの!」



 一瞬にして切り替えるシェラとレイラ。その姿は、知ってはいても、周囲の者からすれば戸惑いを生むものだ。特に知らなかったモナはポカンと口を開いたまま、それが閉じられる気配がない。



「手伝ってくれてありがとう。でも、心配になるから、できることなら報告してちょうだいね?」


「ふゆ、気をつけるの……」


「それと、ちゃんとモナのことも考えてあげること。レイラから目を離したということで罰せられるのはモナなんだから」


「ふゆ……モナ、ごめんなさいなの。でも、実際、私はモナの監視を掻い潜ったわけじゃないの。転移も使ったけど、実体のある分身も使ったの」



 そしてもたらされた新たな情報。それに頭を抱えるのは、当然ながらシェラ達だ。



「……この際だから、レイラが使える魔法や魔術を教えてくれないかしら?」



 シェラがそう問いかけるのは、当然の流れだった。

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