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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第三章 レイラ
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第二十六話

 休憩、であったにもかかわらず、レイラとパーシー以外はバッチリと周囲を警戒して、調査まで行っていたりもしたが、レイラはそれに気づくことなく、パーシーの隣で少しだけ、笑みを取り戻す。

 言うまでもなく、この休憩時間はレイラのためのものであった。しかし、それに関して、誰も何も告げることはなく、いかにも先程まで休んでいたような態度で、ある者は文句を垂れながら、ある者は気合を入れながら集合していく。



「引き続き調査を行うが、その前に、何か気づいたことがあれば、この場で共有しておこうと思う。何かあるか?」



 そんな問いかけに、アレイルが挙手をする。



「いやぁ、色々と調べてみて思うのが、レイラの言うように、狩人親子そのものが罠だったんじゃないかということで……。先に、連絡を入れた方が良いと思いますぜ?」


「そうか……なら、定時連絡には早いが、先に連絡をしておこう。少し待ってくれ」



 そう言って、パーシーはすぐに念話を始める。念話、というのは、魔術の中でも特殊なものであり、念話用の魔術具に会話をしたい相手の魔力を込めてもらうことで、相手も自分の魔力を込めた念話用の魔術具を持っていた場合のみ、会話が可能というものだ。そして、何らかの魔力による妨害を受けたり、結界の中だったりすると念話は発動しない。

 使い勝手で言えば、あまりよろしいものではなかった。



「……これは、妨害されてるな」



 念話を試みたパーシーは、すぐに、それが使えないことを知る。

 何者かによって、外部との連絡が絶たれているという事実に、調査隊の面々は表情を曇らせるが……。



「ふゆっ、なら、私がお姉ちゃんに連絡するの!」


「レイラが? いや、けど、念話は妨害されてるんだぞ?」


「だいじょーぶなの! 私のは、ちょっと違うから、よっぽどじゃないと絶ち切ることはできないの!」



 それは、レイラとシェラの間に未だ残る魂の繋がり。それを辿ることによって、レイラはシェラに、シェラはレイラに連絡を取ることが可能だった。



《お姉ちゃん、お知らせなのっ。今、だいじょーぶ?》


《レイラ? えぇ、大丈夫よ?》



 本当なら、大丈夫であるはずがない。シェラの机に積み上げられた書類は、シェラ達の懸命な努力を以てしても全く減った様子が見られないのだから。



《あのね、狩人親子は罠かもしれないの。狩人親子が襲われた場所で、私達はキメラに襲われたの。それで、待ち伏せの可能性が高くて、それと、このキメラは悪魔の命令でしか動けないキメラでもあるから、必ず悪魔が背後に居るの》


《襲われた!? 怪我は? いえ、それだけじゃなくて、待ち伏せ? 狙いはパーシーかしら? あっ、その状況ならまだ分からないわよね。こちらで対処しなきゃならないのは、その狩人の子供のことね?》


《ふゆっ、そうなの! 怪我は誰もしてないからだいじょーぶなのっ。それと、念話は妨害されてるってパーシーがゆってたのっ》


《あぁ、だからレイラが連絡をしてきたのね。分かったわ、こちらでも対処するから、そちらも無理はしないで》


《ふゆっ、伝えておくの!》



 そんな連絡をするレイラは、連絡を終えるとパーシーへシェラの言葉を伝える。



「あのね、狩人の子供に関しては任せてって! それと、無理はしないでってゆってた!」


「そ、そうか。どうやったのかは知らないが、ありがとうな」


「ふゆっ、どーいたしまして、なの!」



 パーシーは、漠然と、レイラとシェラの間には繋がりがあるらしいとしか知らない。そのため、レイラがどうやって連絡を取ったのかが分からなかったようだが、それでも、レイラが嘘を吐くことはないと判断したようだった。



「お頭っ、あっしも、気づいたことがあるっす!」


「モナ? 何だ?」


「あっしはまだ、レイラと関わって間はないっすけど、レイラはどうも、独特な手段というか、思考を持ってそうっす! レイラに質問したら、色々と実りがある気がするっす!」



 調査に関することとはまた違ったその意見に、調査隊メンバーは一斉にレイラへ注目する。



「ふゆ?」


「……確かに、な。なら、レイラへ質問だ。お前は現状をどう見る?」



 そうしてレイラへ向けるパーシーの目は、保護者としての目ではなく、正真正銘、風の将としての鋭い眼差しだった。



「……悪魔の狙いはまだ分からないの。でも、痕跡を消したのは、都合が悪かったからか、それとも、そもそも狩人親子の襲撃はなかったのか。罠として見るなら、狩人親子の存在そのものが怪しいの。でも、もしも、何か都合の悪いものがあって、それを隠そうとしたなら? そして、それを守るためのキメラだったなら……?」



 問われてすぐに、そんな答えを出すレイラに、少し目をみはったパーシーは、レイラの頭をポンポンと撫でる。どうやら、及第点以上をレイラは叩き出したようだ。



「確かに、その可能性もあるな。それを念頭に、調査を続けよう」


「ふゆっ、それと、パーシーに一つ聞きたいの。ここら辺一帯に、偵察用の魔法を使ってみても良い?」



 誰もがレイラを見直した様子を見せる中でのレイラの提案。彼らの視線は、パーシーへと集中した。

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