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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第三章 レイラ
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第二十二話

(私に求められることは、お姉ちゃんの役に立つこと。お姉ちゃんの邪魔にならないように、お姉ちゃんの利益になる状況を生み出すこと)



 永劫の森へは飛んで向かうとのことで、レイラは自前の翼で。それ以外は、魔術や魔術具を用いて飛ぶ。

 レイラは、第三訓練所の一件で、自分の速度があまりにも他とは違うということをようやく理解したため、先頭を進むパーシー達の後ろをついていく形で、フワフワと飛ぶ。当然、姿を見られるわけにもいかないため、レイラはもちろん、パーシー達も事前に準備しておいた遮蔽の魔術具を使うことでその姿を完全に隠す。



(到着したら、まずは周囲を確認しつつ、現場へ向かう、だったよね)



 狩人親子が襲われたとされるその場所へ向かうのは、調査を行う上で必要なことではある。



「着くぞっ」



 ぼんやりと飛んでいたレイラは、そんなパーシーの言葉で、眼下に永劫の森が見えていることに気づく。



「降下!」



 パーシーを筆頭に、モナ、ダモン、アレイル、ガットと順に着地していき、最後にレイラがふわりと降り立つ。


 永劫の森は広い。レイラは森を焼き尽くしたり氷漬けにしてしまうかもしれないと言ってはいたが、そんな状態を想像できないほどには広大な森だ。

 奥に進めば進むほど凶悪な魔物が跋扈(ばっこ)する場所。かつては、ロゼリアの王がこの森の攻略に挑み、命を落としたとさえ伝えられるこの場所は、浅瀬以外に近づこうとする者はほとんど居ない。ただし……。



(悪魔は、魔物を操ることができるってゆわれてるんだっけ……?)



 それが真実なのかどうかは不明だ。ただ、真実であれば、それは、とんでもない脅威となる。


 探知、戦闘、ともに優れたパーシーを先頭に、ダモンとガットが横へ並び、その後ろにレイラとアレイル、そして、殿をモナが務めることとなった。


 レイラはそのうさ耳をピンと張って、自然と気配を消しながら調査隊についていく。敵は悪魔。どこに居るのかも分からないが、見つからないようにするためには、気配を消すのは必要だ。

 ただし、レイラが気配を消した瞬間、モナだけではなく、ダモン達ですらもギョッと目を剥く。

 あまりにも自然に溶け込んだレイラの気配は、パーシーですらも上手く掴めはしない。レイラに対して、お荷物にはならないでほしい、くらいの感覚でいたダモン達は、その一瞬で認識を改める。もしかしたら、役に立つかもしれない、程度のものへ。

 ついでに、モナは、話には聞いていたものの、レイラのその見事なまでの気配の溶け込ませ方に感動している様子で、今が任務中でなければ、その大きな声でレイラを褒め倒していたところだったかもしれない。


 そんなこんなで、調査隊は迅速に、現場へと訪れていた。



「ここか……」


「こりゃあ、何も、残ってなさそうですぜ?」



 現場へ到着したは良いものの、何の指示も出せないパーシー。そのパーシーに対して、アレイルが肩をすくめて、現実を告げる。

 木々がなぎ倒されたその場所は、確かに何かがあったのだと分かる状態ではある。しかし、そこには狩人の遺体も、持ち物も、何一つ残ってはいない。悪魔がその場所に居たという証拠すらも、見いだせない状態だ。



「ダメだ。お頭、魔力の痕跡も消えてる」


「ここまで何もない現場ってのも珍しいすねぇ」


「これって、やっぱり、調査続行っすよね……」



 何の痕跡もない現場。その様子に、調査隊メンバーは明らかに気落ちする。もう、この後はシラミ潰しに探すしかないのだから、その思いも当然だろう。



「……レイラ?」


「……パーシー、結界を、一番強いのをすぐに張るの。それで、ゆっくり、後退するの」



 ただ、そんな中で一人青ざめているのはレイラだった。そして、そんなレイラを信じないパーシーではない。



「は? 何言って――――」



 ダモンが懐疑的な視線を向けるものの、パーシーはすぐさまレイラの言葉通りに半透明なドーム状の結界を張って……次の瞬間、何の予兆もなく、その結界に大きな衝撃が走る。




「っ、全員、戦闘準備!」



 どこからの攻撃かも分からないが、確かに結界には強烈なダメージが入っていた。どんな強敵かは不明だが、敵が恐ろしく強いことだけは確実だった。



「パーシー! 敵は、目に見えないの!! 上から来る!!」


「っ、散開!」



 レイラの言葉を受けて、パーシーは咄嗟に指示を飛ばす。すると、見えない攻撃は、いとも容易く結界を突き破り、先程までパーシー達が居た場所に直撃する。

 地面が抉れ、突風が巻き起こる。



「っ、ダモン! 右に避けてっ!」


「ぐっ」



 そんな中でも、攻撃は止まない。レイラの指示に従って、どうにか体を捩ったダモンは、それでも見えない攻撃の圧で転がることとなる。

 ピョコンっとうさ耳を跳ね上げたレイラは、そのまま前に走って、やはり見えない攻撃をかわす。



「っ、レイラ! 敵が何か分かるっすか!?」


「ふゆっ!? 分からないの! でも、攻撃の場所は分かるの! それと、敵が居そうな場所も!!」



 レイラが走った先に居たモナの問いに、レイラは必死に声を張って答える。



「敵の場所は!?」


「上なのっ!!」



 ほぼ悲鳴に近いレイラの言葉。その直後、レイラに向けて、無数の攻撃の嵐が降り注いだ。

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