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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第三章 レイラ
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第十六話

「ふっゆゆ~ふっゆゆ~」


「ふっふふ~ん、ふっふふ~んっす」



 現在、レイラとモナが何をしているかというと、互いの親睦を深めるために、レイラが好きなことをしようということで、お絵描きタイムとなっている。そして、そのお絵描きタイムは、お互いの似顔絵を描いてみようということで、レイラはご機嫌に、モナは、何となくレイラの真似をしている様子で、楽しくお絵描きをしていた。



「ふゆっ! できたの!」


「おっ、本当っすか! あっしもできたっすよ! せーので見せ合いっこしましょうっす!」


「ふゆっ、分かったの!」


「「せーのっ」」



 そして、広げられたのは、それぞれが描いた絵。

 ニンマリと笑った、写真のようにそっくりに描けているモナの似顔絵と、幼稚園児よりはマシ、くらいのレベルの、一応翼とうさ耳はちゃんと描けているため判別できるというレイラの似顔絵。



「……ふゆ……モナは、お絵描き苦手?」



 レイラが出した絵を、硬直した状態でマジマジと見るモナに対して、レイラは無情な問いかけをする。



「……そ、そうっす……ね……」



 むしろ、レイラと比べるなら、相手が画家でもない限り張り合えないだろう。そして、モナは画家でも画才を持つ人間でもない。パーシー直属の部下であり、得意分野は荒事方面になってしまう。



「ふゆ……でも、これはこれで、味があって良いの! ありがとーなの!」


「……どういたしましてっす!」



 多少の葛藤はあったようだったが、モナはすぐに、レイラのレベルの高さを認めて、元気よく告げる。



「あっ、レイラ! あっし、この絵をもらっても良いっすか? これ、ぜひとも家族に送る用にしたいんっす!」


「ふゆ? 家族?」


「はいっす! あっし、八人姉弟の長女なんっすよ。いつも、仕送りはしてるっすけど、友達に自分の絵を描いてもらったって贈れたら、きっと喜んでくれるっす!」



 首をかしげるレイラへと、モナは自分の家族について簡単に話してみせる。



「……家族は、贈り物、喜ぶの?」


「もちろんっすよ!」



 実際、こんな絵を描いてもらえるという環境や、モナの姿を正確に写し出したこの絵は、モナを心配する家族に贈るものとして適切だったのも確かだ。

 力説するモナを見て、レイラはすぐに『それなら、私もこの絵をもらうの!』とモナが描いた自分の絵を手に取る。



「え? け、けど、あっし、上手く描けてないっすよ?」


「ふゆ? でも、友達からの贈り物も嬉しいの! ……何か、違う??」



 自然とモナを友達として接するレイラ。そんなレイラに、モナはブンブンと首を横に振る。



「そんなことないっす! それをもらって嬉しいなら、レイラにあげるっす!」


「ふゆっ! それなら、私の絵は、モナにあげるの!」



 にこにことモナからもらった絵を大事そうに抱えるレイラ。それを見て、モナも嬉しそうに頬をほころばせる。



「はいっす! あっ、そうだ! レイラは、お頭から色々と画材をもらってるっすよね? それなら、絵日記とか書いてみるのも良いかもしれないっすよ?」


「ふゆ? 絵日記?」


「はいっす! その日あったことを文書で書くのと、それに絵をつけるのとで完成する絵日記っす! 誰にも見られないように保管するのが重要っすけどね?」


「絵日記……誰にも見られないように保管……」


「そうっすよ。後から、こんなこともあったなぁって思い返せるし、レイラの絵なら、きっと素敵な絵日記になるっす!」



 絵日記をひたすらに勧めるモナ。そこには当然、思惑も存在していた。



「嫌なことも、大変だったことも、全部書いてしまえば、少しは楽になることもあるっすしね?」



 レイラが溜め込む性格……いや、そもそも我慢していることにすら気づけない状態なのは、引き合わされた時の会話で良く分かったことでもある。そして、それを改善すべく、モナはレイラ自身のストレスを減らすと同時に……その絵日記を盗み見て、何か問題が起こっていないか確認する予定だったのだ。しかし、その予定は、レイラによって、あっさり覆されることとなる。



「ふゆっ! 分かったの! なら、万能金庫に入れて保管するの!」


「『万能金庫』?」



 何のことだと首をかしげるモナ。そして、レイラは、それを実演しようとする。



「ふゆっ! そうなの! お姉ちゃんから教わった魔術の変形したやつなの!」



 そう。レイラお得意の魔法。だから、モナは、それを解除するすべもなく、ただ、眺めることしかできない。



「そ、そうっすか。ちゃんとできるなら、良かったっす」



 レイラに自分が金庫を勧めようとでも企んでいたらしいモナは、それだけ言うと、大人しく、レイラの魔法を観察していた。

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