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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第三章 レイラ
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第十話

 いよいよ、レイラの魔力検査の時間がやってきた。その前にあったアレコレに関しては、もう何も言うなという態度で、パーシーはササッと魔導具を取り出す。



「これが、さっき話してた魔導具、通称、『測定オーブ』だ!」



 水晶型の魔導具と言っていたそれは、バスケットボールほどのサイズがあるもので、透明なそれの中はキラキラと輝いている。



「この中のキラキラが、それぞれの属性の色になるんだ」



 そう言って、パーシーは自分でその測定オーブへと魔力を込める。



「こうすると、あたしの場合は風の緑が出る。そんで、緑が結構大きいから、適性が高いってことだな。それと、回転も速いから魔力量も多いと」



 そんなパーシーの言葉に、レイラは真剣に測定オーブを見つめる。パーシーの言うように、測定オーブの中の緑は、そこそこ大きい。恐らくは、測定オーブの七割くらいの体積を占めている。そして、その回転はというと……。



「パーシー、これが、速いの?」


「あぁ、測定オーブも、測れる魔力量によって使えるのが決まっててな。これは文句なしの一級品で、亀みたいにノロノロしてるだろうけど、動くだけでかなりの魔力量ってことになるな。……あ、となると、速度の説明はいらなかったか」



 測定オーブの中の緑は、ゆっくり、ゆっくり、回転をしている。そのため、それを速いとはレイラも思えなかったのだろう。



「ふゆっ、だいじょーぶなの! 教えてくれて、ありがとーなの!」


「おうっ、一応、これの上に特級品もあって、持ってきてはいるけど……これを使うことになるかは分からないから、とりあえずはこっちでやってみてくれ」


「ふゆっ!」



 言われて、パーシーから測定オーブを両手で受け取ったレイラは、パーシーが離れるのを確認してから測定オーブへと向き直る。

 魔法まで扱えるレイラに限ってないとは言われたが、測定オーブを使う際に、魔力を暴走させる者も居る。だから、測定オーブを使う者と、その見届け人は、一定の距離を取ってから魔力検査を行うのだ。



「もう魔力を込めても良いぞ」



 五メートルほどの距離を取ったパーシーからの声がけに、レイラは元気良く『ふゆっ』と返事をする。そして、キラキラとした目で測定オーブを見つめ、思いっきり魔力を流して……。



『ピシッ』


「ん?」


「ふゆ?」



 測定オーブは、色を表す前に、不穏な音を立てる。

 二人がその異変に気づいた時は、もう、遅かった。



『ピシピシピシピシッ』


「ふゆっ!? パーシー!」


「レイラ! それを投げ捨てろ!」



 一気に全体へ広がるヒビ。慌てて指示を出したパーシーに従って、レイラはパーシーの居ない方向へと測定オーブを放り投げる。そして、その直後、測定オーブは空中で粉々に割れてしまった。



「ふ、ふゆぅ……ごめんなさいなのっ」



 物を壊してしまった。しかも、それは測定オーブの一級品という、何やら特別感の強いもの。そんな意識からか、レイラは涙目だ。



「あー……ここまで粉々になるのは予想外だけど、割れるかもしれないとは思われてたから、問題ないぞ。それに、測定オーブは、一定の時間が経てば修復されるから、気にするな」



 そう、パーシーの言葉通り、測定オーブはどんなに壊れても、一定の時間が経てば元通りに修復される。そのため、気をつけなければいけないのは、その破片で怪我をしないように、くらいだったりするのだ。



「ほんと?」


「あぁ、本当だ。だから、次は特級の方を使ってみようなっ」



 不安そうなレイラの前に、先程よりも一回り小さく、ほんのり金色がかった測定オーブが差し出される。



「これを割ったやつは居ないし、そもそもこれを使って測定するようなやつは王くらいのものだとはされてるけど、レイラならこれくらいがちょうど良いだろう」



 受け取りながらも、まだ心配そうにするレイラに、パーシーは何やらいたずらっ子のような笑みを浮かべる。



「実はな。シェラはこのオーブを割るくらいの魔力を込めてみせるって意気込んで、コイツに魔力を注いだんだ」



 声を潜めて、内緒話のように話すパーシー。唐突なシェラの話しに、レイラは大量の疑問符を浮かべているような顔で、パーシーの話の続きを聞く。



「そして、必死に力んで、魔力を込めた結果……ノロノロとした回転しかしなくて、地面に思いっきり叩きつけたんだよ」


「ふゆっ!? そんなことしたら、壊れちゃうのっ!」


「普通はな。でも、測定オーブは魔力でしか壊せないと有名で、実際、コイツも傷一つつかなくて、シェラは随分と落ち込んでたなぁ」



 そう言いながら笑うパーシー。当時の様子は、きっとあまりにも滑稽な様子だったのだろう。



「ふゆ……なら、私が魔力を込めても、壊れないの?」


「あぁ、大丈夫だ」


「お姉ちゃんよりも魔力、強いって、お姉ちゃんゆってたの……」


「まっ、それでも問題ないだろうさ。最悪、壊れてもまた修復されるだろうしな」



 失敗したところで問題はない。むしろ、壊すことができる者など、誰も居ない状態でそれを成したとなれば、それはそれですごいことなのかもしれない。

 そんなパーシーの話に、ようやく覚悟を決めたのか、レイラはしっかりと測定オーブに向き直る。



「なら、やってみるの!」


「おう、それじゃあ、また離れるな」



 そうして、二回目の魔力検査が始まった。

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