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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第二章 王
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第十六話

「……では、レイラは、シェラに関わりがないかもしれない、ということですね?」


「あ、あぁ、そうだ」


「む……」



 結局のところ、パーシー達は誰の手も借りることなく、フィスカと対峙することとなった。フィスカの確認の言葉に、それぞれうなずくパーシーとアシュレー。しかし、フィスカ本人は、パーシー達の予想ほど取り乱してはいない。



「シェラの血縁者は、確かに、存在しません。ですから、レイラがシェラの血縁者ということはないのでしょうね」



 パーシー達が、レイラの言う『お姉ちゃん』とシェラが別の存在であると考えた一番の理由はそれだ。



「ですが、その『お姉ちゃん』の背後に、シェラが居る可能性はあります」


「「あっ」」



 フィスカの言葉に、ようやくパーシー達もその可能性に辿り着く。



「つまり、あたしの名前のことを、シェラがその『お姉ちゃん』に教えて、それでそれがレイラに伝わったとか?」


「そうですね。どういう伝え方をしたのかは分かりませんし、そもそも、その『お姉ちゃん』の人物像があまりにも不確かなので、あくまでも可能性の一つとして、ではありますが」


「……パーシーは、納得いかないようだな」



 一度は、その可能性に声を上げたパーシー。そして、どういうことが考えられるのかまで口にしたパーシーだったが、その表情は完全にしかめっ面だ。先にそれに気づいたアシュレーが指摘すると、パーシーは戸惑いがちにうなずく。



「その……何か、違う気がするんだけど、何がっていうのが分からないんだ。ただの気の所為かもしれないんだけど、な……」


「……とりあえず、パーシーのその勘も視野に入れながら、後でレイラと対話してみましょう」



 パーシーの勘はバカにはできない。それを、フィスカもアシュレーも、とてもよく理解している。パーシーが嫌な感じがすると言った道には、罠が仕掛けられていたり、こっちが良いと思うと言われて向かった先には目的の物があったり、とにかくパーシーの勘は当たるのだ。だから、パーシーが『何かが違う』というのであれば、そうなのだろうと、自然と二人も考えてしまっていた。



「それよりも、レイラの要望に関してですが、受けようかどうか迷っていた案件に絡めて、意見を聞きたいのですが」


「要望……あっ、『何かできることをしたい』ってやつか!」


「む、しかし、ここに来る案件ということは……」


「えぇ、慎重に選ぶ必要があります」



 そう言いながら、フィスカは三枚の紙を取り出す。



「一つは、生物研究所からのキメラに関する調査依頼」


「レイラの実生活を覗くって……いや、無理だろ」


「無理だな」


「無理、ですよねぇ」



 調査方法は、盗聴魔術や監視魔術によって、レイラの生活風景を記録するというもの。しかし、一応レイラは隔離されている存在。その音や映像が流出する可能性がゼロではない以上、許可できない。

 いや、それ以前に、原因は不明だが、レイラの側にはそのような魔術を込めたものを取りつけても、全く記録できずに、魔力が飽和状態になって壊れているという事態が何度も起こっている。そのため、実質、今のレイラには外の騎士が扉の前で警戒する以外の対処を取っていない。さすがに、騎士であっても、レイラの側に控えて監視するのは恐ろしいだろうということで、そうした対応になっていた。


 フィスカは、あらかじめそれは却下だろうと分かっていたのか、その用紙を手に取ると、ビリビリに破いてしまう。



「次は、こちらです」


「魔法研究所……いや、これも無理じゃないか?」



 魔法研究所からの依頼は、キメラの魔力を調べさせてくれ、とのこと。ただ、この魔法研究所がその程度で満足するはずがないことは、パーシーが一番理解していた。



「絶対、何か理由をこじつけて、レイラに魔法を使わせようとするっ」


「いや、さすがにそれは危険だと諦めるんじゃないのか?」


「アシュレー、奴らは、魔法中毒者だ。未知の生き物の魔法となると、それを見るためだけに死をも厭わない狂信者どもだっ」


「……そういえば、パーシーは昔、魔法研究所と関わったことがありましたね。そんなに悪いものとは思いませんでしたが、それほどまでに言うのであれば、却下しましょう」



 パーシーと魔法研究所の間にあったあれやこれやに関しては、どうやらフィスカもアシュレーもよくは知らないらしい。しかし、パーシーのあまりの剣幕に、フィスカはその書類を大人しく破る。そして、最後に残ったのは…………。



「元老院……」


「ギウス元老院長……」



 パーシー、アシュレーの順番で、最後に差し出されたそれに目を通し、その内容に絶句する。



「レイラに、質問に答えてもらい、キメラの実態を知ろう、というものですね」



 それは、レイラが話せることを承知した上での要望だった。

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