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半月王1 竜王編  作者: 星宮歌
第二章 王
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第三話

今回はちょいと短め。

 フィスカに盛大なお説教を受けた三人だったが、一応仕事中ということで、それなりに早く解放された。ただし、キメラが何も喋らないことに関して、フィスカも何か思うところがあるのか、調べてみるとだけ告げて仕事に戻る。



「あー、書類が、全然減らない……」


「お疲れ様、パーシー。僕はもう終わったから、ベルのところに行ってくるよ」


「なっ! ちょっ、少しは手伝ってくれても」


「嫌だよ。僕には、ベルの看病という大役があるんだ。キメラのお見舞いも、改めて果物でも持っていくつもりだし」


「ぐっ……な、なら、後で、あたしも行くと伝えておいてくれ」


「了解!」



 お昼を過ぎた頃にマディンから告げられた言葉で、パーシーはジトっとマディンを睨む。しかし、そんなことをしてもパーシーの書類が減るはずもなく、パーシーはうなだれながら書類仕事へ戻る。

 ただでさえ苦手な書類仕事。それが、悪魔の領土に行っている間に少しずつ溜まり、キメラが目覚めた今になっても終わっていないのだ。



「くっそ、早く終わらせて、キメラに会いに行かなきゃならないのに……だーっ!!」



 パーシーは、言葉遣いこそ荒いが、別にいい加減な性格をしているわけではない。そこそこ真面目でもあるため、書類仕事をサボる、というわけにもいかないのだ。


 そして、ベルの元へ意気揚々と向かったマディンは、パーシーとは対照的に満面の笑顔だった。



「ベル、お兄ちゃんが来たぞ」


「お帰りなさい、お兄ちゃん!」



 にっこりと微笑むベルは、随分と長く閉じ込められていたのか、今は歩くのもリハビリが必要な状態で、栄養状態ももちろん、よろしくはなかった。それでも、今、ベルが笑顔で兄であるマディンを出迎えられるのは、キメラのおかげだ。



「お兄ちゃん、キメラのお姉ちゃんは? まだ、起きないの?」


「今日の朝、ちゃんと起きたよ。でも、まだ疲れてるみたいでまともに面会ができなかったから、この後行こうと思ってるんだ」



 穏やかな兄妹の語らい。しかし、マディンの言葉に、ベルは表情を曇らせる。



「お兄ちゃん、お姉ちゃんは、喋れるようになった? 悪魔がお姉ちゃんに何かしたの。だから、お姉ちゃん、声出す時、すっごくつらそうで……」


「悪魔が? ……ベル、何があったのか、話せることだけでも良いから、教えてくれないかい?」



 ベルの事情聴取は、本来ならもう少し後に予定されていた。悪魔に捕らえられて、助けられた人間というのは、たいてい心に深い傷を負っている。そのため、保護された人々は信頼できる人間の側で療養して、ゆっくりと、その記憶を昇華してもらうのだ。

 もちろん、それが許されない場合もあるが、今回は通常の対応だった。ベルの年齢が幼いことと、あの大怪我のことを考えると妥当な対応。それでも、ベルが話せるというのであれば、キメラの情報を手にしたいと思う状況に違いはない。



「うん……あのね、キメラのお姉ちゃんは、ずっとずっと、私を守ってくれたの……」



 ゆっくり、話し始めたベル。しかし、その内容はあまりにも、壮絶なものだった。

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