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罪荷  作者: 糸月名
悪意なき虐殺者たち
4/23

村に潜む悪意と悪意なき者たち


身体は健常。けれども心は末期がんを患い歩けなくなった老体のように不健康なはずだ。度重なるたばこや酒がたたったに違いない。私はそう言った嗜好品を嗜むこともないが、殺しという負荷を浴びるように飲み下した。特に、今回の作戦は堪えた。除隊願いまで考えた。

だけど、あれから。少女を殺しそこね、結局、アレックスと共に少女を殺したあの時間から七時間。私は未だ戦場にいた。

ヌァザの死体は歯型も指紋も血液型もホンモノだった。しかし、不気味なことに脳の一部が欠けていた。脳移植によって誰かがヌァザの行っていた犯罪の方法を盗み出した。

どういうことかというと私たちが作戦を行っていた時間。およそ七時間前に村が一つ消えた。ヌァザは犠牲者であり、つまるところ犯罪者の脳を手に入れなくてはならなかった。

だからというわけでもないが、微かな情報でも手に入れるために消えた村の近くの農村へ私は足を運んだ。

任務は暗殺という体裁を隠すため、単独で行うことになっていた。これなら、私が死んでも確保任務の延長という形でケリがつく。政府軍の介入は想定外だったが、それは狙われていることを悟ったヌァザ自身か、あるいはヌァザの記憶を抜き取った誰かが攪乱のために流したのか。どちらにしても最大限の効果を上げたことは間違いない。

雨上がりの夜は土のにおいに混じって血の匂いが香る。

人工的な明かりのない村では月光と火という原始的な明かりを使って暮らしていた。そこで来ている服は化学繊維で、どうにもキャンプのような緩い空気が漂っていた。


「HQ。村へ入った。次の指示を待つ。オーバー」

『こちらHQ、作戦に変更有。ターゲットは頭に手術痕のある成人男性。元アメリカ人だ。名前はジャック・レイス。その国に入国したという情報を掴んだ』


その名前を私は知っている。ブリーフィングでは確かヌァザの男。所帯は持っていなかったが、罪を切り取っていない国へ亡命していた筈だ。


『反政府軍の指導者が彼によって殺害された。今の反政府軍を牛耳っているのは実質レイスだ。政府軍へ我々の作戦をリークしたのも彼だろう。以後、ターゲットをエコーワンと呼称』


「敵称? まさか……」

暗殺任務(アサシン)だ。頭だけを持ち帰れ』


ため息が出た。

暗殺のプライオリティは実は非常に低い。一人の不審死によって暗殺が表ざたになれば国内外からマスコミに叩かれること間違いなしだ。本来は内戦や戦争のドサクサに紛れて死亡したということになれば、ターゲットの存在はただの数値だ。そうなれば世間体的には何の問題もない。

にもかかわらずこういう形式をとるということは根回しが済んでいるということだ。この任務が成功しようと失敗しようと、罪を切り取った側の国が受けるダメージは無いということだろう。


「了解。ターゲットエコーワン、暗殺ミッションを開始する」


ピピピ。骨伝導によって衛星通信が解放されたことが知らされる。今回は極秘任務ではなく、公的なバックアップが受けられるようだ。いよいよもって、失敗するわけには行かない。この村に居るという保証は無く、この国の辺境にある村を一つ一つ辿って行かなくてはならなかった。





厭に鼻につく血の香り。普段生活していてこんなにも濃密なものは早々嗅ぐものではない。家畜の解体でもしているのだろうか。隣の村落で何が起きたのか、ここで情報を収集しなくてはならない。

広場で赤々と燃え上がる火と雲の隙間から時折顔を出す月意外に明かりが無い。闇が私の姿を隠してくれた。ナノマシンによって光を増幅し、闇の中で私の行動は制限されない。

この闇の中で、不思議と安らぎを覚える。孤独であることを実感できる。私自身は誰かに監視されていても、干渉されていないように思えた。たった一人である実感が、あの光景の後ではありがたみすら感じる。そんな感傷に浸る自分の背中に電極から刺激が叩き込まれ、強制的に妄想から覚醒する。

その時だった。足元に、何かが落ちているのが見えた。人工物にも見える細長いそれは指。それもサルや豚などではなく人間の指だ。

血の気が引いた。この鉄臭さは、家畜のモノではない。正真正銘人間のモノだ。指紋を見て、衛星を経由した情報と照合する。女性の中指と一致した。それも、消滅した村の住民のモノ。

恐怖以上に、嫌悪を私は感じた。思わず火を囲む人間たちを確認する。


――笑っている。


まるで豊作を喜ぶかのように。手に持った椀からスープをすすっている。楽しそうで、私もあそこへ仲間に入れてもらいたいくらい幸せそうだった。にもかかわらず、あの笑顔に影を感じるのはなぜなのか。

それはジャーキーのように噛み千切っているものが人の指だと見つけてしまったからなのか。はたまた、スープに浮いている丸いものが豆ではなく眼球であると、たった今私の眼がしっかりと捉えて認識したからか。どちらにしろ分かったことがある。隣の村を消したのはジャック・レイスではない。このイカレタ村人たちだ。

それでも私はこんな光景を信じたくはなかった。気付けば闇の深い方へ、血の匂いの濃くなる方へと進んでいた。脳みそはそちらへ向かうなと警告している。それでも僅かばかりの好奇心と、これが人間の所業だと信じたくない気持ちに気圧されて歩いた。

少なくともブリーフィングの情報では首切り族や、食人文化の残る部族の情報はなかった。

そうして辿り着いた場所にあったのは、豚の屠畜小屋だ。この先に、私の予想が正しければ、あそこで喰われているモノがあるはずだ。

あまりのぼろい、それこそ、ここで解体したものが衛生的に食べられるのかも怪しいほどの環境だ。既に饐えた肉の匂いが空っぽのはずの胃を押し上げてくる。

窓から中を確認する。予想通り人が吊るされている。正中線に刃を入れて解体され、皮、内臓、肉と脂肪に切り分けられていた。

先ほどから背中を痛いほど貫く電流に、私は嫌気が刺した。だけれどもそれのおかげで、今にも消えてしまいそうな私の理性が繋ぎ止められている。

村が消滅するという異常性を調べるために私はこの扉の向こうへと踏み出した。

外以上に中はキツイ。血の匂い以上に、腐った肉の匂いがだ。部屋の隅に集められた膀胱や胃の内容物であろう、ドロドロの液体には蛆と蠅が集っていた。そんな衛生観にもかかわらず、人間の皮膚は丁寧に肉から剥がされていた。脂肪も綺麗に削がれ、元の人間の原形をとどめてすらいない。塩水であろう液体に漬けられている。こうすることで、なめすまでの間保存しておくのだ。

解体の経験は私が子供のころ、養父に連れられた鹿撃ち位のものだ。それから十数年、二十年近くは猟に携わってもいない。そんな私でもわかる。明らかに漬けられている人皮に対して、内臓や釣られている骨や肉塊の量が足りない。喰われたか、燻製にされたのか。

そこまで考えて、私の背中に電流が走る。

こうも電流をバチバチと流されては、いつか心臓が止まってしまうんじゃないかと思ったりもする。曲がりなりにも軍用品だから信頼はするけれども、技術者じゃない私には疑問の答えを持ち合わせなかった。

ふと、私は思う。この吊られた肉塊が誰なのか。大人なのか、子供なのか。男なのか女なのか。知りたくもない、そう思いつつも、競り上がる言いようのない感情がその行為を後押ししてくる。

死体の眼球は水分が蒸発し、あるいは周囲の筋肉へ水分が浸透し乾ききってヒビれているかもしれない。それでも、今の技術なら誰なのか判別できるはずだ。ただの数字ではなく、一人の人間として死を悼むことが今ならできるかもしれない。それが自己満足にすぎなくてもこの凄惨な状況を知る当事者として、私はできることがしたかった。

恐怖の表情で固まった死体。顔は顎の肉から鼻、額まで剥がされていた。開いた口の中は叫び過ぎて割けた喉から溢れたと思われる血で真っ赤だった。目はしぼみ、ヨーロッパ系特有の深い落ち窪みが、さらに押し込んだように影を落とす。その奥に、埋まるようにして割れた風船のように委縮した眼球が残っていた。

この死体が、今を物語る最たるものだ。

落ち窪みの奥に鎮座する怯えきった瞳を覗きこもうとして私の入ってきた扉が開かれた。


「だれかいるのか?」


反射的にハンドガンを構える。照準器の向こうに弾道予測線がリアルタイムで描画され、入ってきた男の額へぴったりとあわせられる。


「なんだ、まだ豚が残っていたのか。さてはレイスの野郎サボったな」男は扉のよこに立てかけられていた鉈を拾い上げる。「血抜きもしないといけないのに、こんなに真っ暗だ。先に絞めないとな」


男は私を見ていない。私の腰くらいのところを見て、疑いなく豚と呼んでいる。差別意識は感じられない。文字通りそのまま豚だと思い込んでいるようだ。向けられた銃に身動ぎもしない。この男は間違いなく私を豚だと思い込んでいるっ。


「おい、そのレイスってのはどこに居る?」


男は答えず、当然の動作を繰り返すように鉈を振りかぶった。


「動くな」


静止の声も聞かずに男は近寄ってきた。暗がりでこうも顔が鮮明に見えてしまうのは、私の精神衛生上よくない。

私はそのまま引き金を引こうとして思いとどまった。証拠は少ない方がいい。銃からは火薬残渣、弾、薬莢、銃声といろんな証拠を残してしまう。それに対してナイフはいい。間近で殺す感触が残るものの、声帯に突き立ててしまえば、声を出させずに殺せる。証拠もほとんど残らない。

本来なら金属片が残るが、今の軍の支給品はミッションごとにすべて使い捨てだ。砥石に含まれる成分によって居場所がばれることもない。ただの金属の成分しか残らない。だから私は、振り下ろされる鉈を明確に見続けた。

銃をしまいながら反対の手で男の鉈を握る手を押さえ、そのまま胸に縫いつけられた鞘からサバイバルナイフを取り出し、相手の喉に突き立てる。

昔、日本の居酒屋で豚の喉軟骨を食べたことがある。塩気が強く粘りのある歯ごたえは辛い焼酎に手が伸びるように作られていた。その感触を今、思い出した。違いがあるとすれば触感ではなく手ごたえという事だけか。

匂いや視覚は記憶に直結するというが、どうやら特徴的な感触も記憶を呼び出すようだ。

切り口を化かすために骨ごとナイフを捻じりながら背後へとまわった。これで血の散布状況から居場所や体の形状が把握されることを防いだ。そのまま引き裂いて血液が噴き出した。

死体は消せない。暗殺任務においてそれは間違いなく減点対象だ。ただし、収穫はあった。

レイスがこの村にいる。



さして大きくない村を探索するのは苦ではない。むしろ、村人の多くが火に集っている中、ポツンと小さな家の一室に頼りないランプの光が見えた。見つけてくださいと言っているようなものだ。

窓際に張り付き中の様子を探る。椅子に縛られた男。窓を背にして立つスキンヘッド。部屋の奥にはランプの光が届かない暗がりに身を隠すようにして男が二人。椅子に縛られた男は私に送られた資料に顔があった。この村の長だ。


「村人を解放しろ悪魔め」

「解放? 誰かを捕らえたつもりはない。ましてや悪魔などと言われるようなことは何もしていないさ」

「村人を洗脳しておいてよくもぬけぬけと」

「証明不可能な悪魔を探しているのか。「罪を犯したのは私が何者かに洗脳されていたからです」と世論に無罪を主張するつもりか? やめておけ。誰も信じはしないさ。殺したのはお前たちで、教唆されたという証拠も状況もない。犯罪の直前に誰と接触していようともお前たち以外が裁かれることはない。たとえそれが反政府軍の指導者でもな」

「違うっ。お前は村人にカウンセリングをすると言って何かを目に吹き付けていただろう! アレがでてくれば お前たちはおしまいだ」

「ER――眼機能拡張手術のことか。そんな一生残り続けるようなモノだとでも? 軍用品ではない。定期的に代謝されてしまう、数十年前の技術で作られたものだ。つまりもう残っていないのだよ」


何かがおかしい。私が殺した村人は間違いなく私を人間ではない何かと誤認していた。人間の指の肉を骨から引き剥がしながら食っていた。もし、本当に代謝されているのなら私を誤認などしないはずだ。人間として認知されてしかるべきだ。


「ハッキリ言おう、催眠や洗脳なんぞで殺人を起こさせるなんてことできるわけがないだろう。できるのはストレスから逃避させることだけだ」


私には男の言葉の意図するところが分かったおそらくは本当に豚を殺したつもりだったのだろう隣村の住人と同数の豚を。けれどもそれは長くは持たず、すぐに眼機能強化手術によって散布されたナノマシンは代謝され、文字通りの人間を見ることになったのだろう。その結果、強いストレスに晒されたはずだ。催眠や投薬、カウンセリングによってそれを和らげる。あるいは幻覚剤などを投与しそのまま人間を豚に認識させたままにする。あるいは、人間と認識したく無いために、自ら元に戻ることを望んでいないのかもしれない。

何なら人間として終わっていることもあるのだろう。

悪魔の発想だ。

その時通信が入ったことを知らせる電子音が骨伝導によって聞き取る。


『そのスキンヘッドの男はジャック・レイスだ。音声が一致した。顔の確認は死んだあとでもできる。仕留めろ』


通信は聞こえなくとも私自身の声が漏れてしまうので返事はしない。

HQからの指示が無くとも殺すつもりだった。いい加減、この胸糞悪い話に耳を盗み聞きすることにも飽きたころだ。だが、窓ガラス越しに射殺するつもりはない。ほかの村人を寄せる可能性もあるからだ。この小屋の建材は目の詰まった硬い樫だ。壁越しに撃つ気にもならない。この家を男の拷問場所に選んだジャック・レイスの思考は良くわかる。

同時に、ジャック・レイスがどこかで拷問を学んだことも確かだ。所属している反政府軍か、情報をリークした政府軍か。村そのものを消す目的は分からないが、予想はできる。拠点として無人になった村を利用するつもりだろう。

私は村長がしゃべれなくなる前に扉の前へ張り付いた。中を覗けるような小窓は無く、鍵穴すらない。南京錠で扉を施錠しているような形跡はあるが、肝心の錠前が無いのでは意味をなさない。だが、ジャック・レイスという男が暗殺を警戒しないこともないと私は考えた。

ブリーチして内部を制圧することはたやすい。問題はその後の村人だ。囲まれれば、私は助からないだろう。

私はため息を吐いた。やるならば徹底的に。すぐに足もとの土を掘り始める。拳一つ分も掘れば十分だ。吸いもしない広く出回った銘柄の煙草を一本取り出すと咥えずに炙って火を着ける。これで吸い殻の不始末の完成だ。そのまま乾いた樫の建材に火がつくのを待った。仕上げの荒い建材はささくれだらけで、燃え上がるのに苦労はしない。中では未だに気付いた様子はない。村人たちが大きく火を上げた焚火の匂いで薄らと焦げるにおいが紛れてくれた。そこへ生木をくべる。

生木は水分が多く燃えにくい。だがひとたび燃えれば大量の煙を上げる。

内部に煙が立ち込めたら案の定、中から男たちが出てきた。扉の前で銃を構えていた私はそのまま銃口を身体に押し付けて、音を最小限まで殺してから心臓を次々と撃ち抜いていく。

数は三人。だが、ジャック・レイスの姿が無い。なるほど、頭が回るようだ。このまま放置してもいいが、頭だけは持ち帰らなくてはならない。布に水筒の水を振りかけるとそれを口と鼻を覆うように巻いた。この中に突入しなくてはならない。

幸いなことに、この煙の中でも私の目は機能する。大きなアドバンテージだ。

銃を構えたまま内部に進む。足元に転がる死体の下に姿は無く、次は寝室の中。だが、そこにも姿は無い。トイレはこの家にはない。最後は拷問部屋だ。素早くその中へ入り込むが、中には椅子に縛られた男しかいない。

ナイフでロープを椅子ごと叩き斬る。解放された男はせき込みながら、窓へと向かった。その肩を私は掴む。


「ジャック・レイスはどこだ?」

「だ、誰だアンタ。早く出してくれ、目が、目がああ」


窓の錠を外してそこから男を蹴り出す。私もその窓を跳び越え、男に問い詰める。


「ジャック・レイスはどこから逃げた?」


しばらく急き込んでいた男は、喉と鼻腔に張り付いた煤を穿りだす。それには血液が混じっていた。目は未だ開かに様子で、爪で強く目蓋を掻き毟っていた。熱風で晒され、感覚が麻痺しているのだろう。だが、男は肩で息をしながら指で小屋を示した。小屋の中に逃げ道があったということなのだろう。

次の瞬間、私は男の髪の毛を思いっきり、引っ張り、そのまま身体を引きずり倒す。喉にナイフを突きつけ、両腕を踏んでマウントを取ったまま口を開いた。


「ずいぶんと手の込んだことをしたなジャック・レイス」


髪の毛は何かで接着されていたのか、頭皮を幾分か剥がし、その向こうの意外にも綺麗なピンク色の肉をのぞかせる。見たくもないものを尽く見せてくるこの目が便利だが恨めしい。目を背けるなと、現実を叩きつけてくる。

ギョロリと君の悪い青い瞳を大きく見開き、ジャック・レイスは口を開いた。


「なぜわかった? 煙が充満してから入れ替わったんだぞ?」

「大した根性だ。いろいろあるさ。お前は真っ先に窓に向かった。目が使えない状況でいい判断だ。次に目が見えないのに転がり出たお前が、なぜ小屋の方向が分かった? 簡単だ、ERだろ。目蓋の上からでもマッピングした景色は見えるからな。次はこっちだ。なぜ殺した?」

「ハッ、なぜ? なぜねぇ。俺は亡命して成り上がった。できたから。それ以上もそれ以下もない。俺にはできた。それだけだ。反政府軍のトップを暗殺し、成り変わり、今やこの内戦を支配している。俺がいなければ内戦の小康状態だって作り出せはしなかったさ。理由なんざ無いんだ」

「できたから?」

「お前みたいに仕事で子供は撃たない。仕事で仲間を盾にもしない。仕事を理由に殺さない。俺は俺の責任で殺す。お前やお前に命令をしている国連の奴らよりも上等だ」

「目的のない殺しだろ。それもヌァザから引き継いだ」

「ハハハハハハハハッ!」


突然の豪笑に私は面食らった。私の言葉がおかしくて堪らないらしかった。


「ヌァザじゃない。アイツは罪を抱えなおしてなんていないさ。無論、この方法を発見したのはヌァザだったがな」

「どういうことだ? 何でそんなことを。ヌァザはどうしてあそこにいた?」

「ヌァザは俺を止めるために追いかけてきたんだ。その度に村を消した。ヌァザの脳みそを切り取って詰め込んだ。ちょうど入れる場所ならあったからな」左手で自らの左のこめかみをつつく。「それでも俺を追ってきた。面倒だったよ。そろそろバレる頃だと思ったよ」

「全てをヌァザのせいに仕立てたのか」

「なるほど。それも知らないのか。この方法を立案したヌァザは、今後の犯罪の可能性として対策するようにと、ペンタゴンや国連に提出していたんだ。疑うのは当然のことだ。何も恥じることはない。誰を殺そうともな」


胸糞悪い。


「そうか。もういいか? もういいな」


吐き捨てるように言った私は返答を待たずにジャック・レイスの喉を一閃に掻き斬った。


「HQ。こちらアルファ。エコーワンの殺害を確認。ミッションコンプリート」

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