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罪荷  作者: 糸月名
可能性
19/23

終末


地下の崩壊、ロケットの打ち上げから四五分後、私たちは空に居た。ディランが約束を守ったというだけなのだが、少し不思議な感覚だった。

通信が復活しているところを見るとPWRRCの妨害電波から抜けられたようだった。


「どんな魔法を使ったんだ?」

『ドイツを足止めしつつPKOを介入させるべきか会議を行った』


拒否権を持つドイツが会議への参加を――建前上のみだが――放棄したおかけでPKOがIAEA職員救出の名目で動いた。これにより、ドイツの進軍が早まり、下では戦火が広がっていた。


「ずいぶん乱暴なやり口だな」

『R&Mの方が乱暴だ。あそこはありとあらゆる権利を剥奪、したかったんだがな』

「できなかったのか?」


ヘリの中で緊張が走った。


『できなかった。というより、国連が敵に回ったと分った時点でほかのPWRRCの連中が利権をむさぼって、人材を襲撃し、本社は爆破されて瓦礫になっていた。責任者は死体になって吊るされていた』


PWRRCはこれだから。


『それにしてもよく《ノーフェイス》の死体を持ってきたな』

「フォーミュラとタスクには罵られたよ。ヴェーラはいろいろあって参ってるみたいだ」

『まあ、私も現場にいたら小言を言っていたかもな。だが、送られてきた映像はすべて改竄済み。死体が無かったら《ノーフェイス》の死が証明できていなかった。結果論だがよくやった。生物兵器の方は既に対策を始めている。こちらに戻ったらWHOがお待ちかねだ』

「知ってる。ヘリがWHO所属になっていたし、完全密閉済みだ。パイロットは酸素マスクなんて被ってやがる」

「俺たちがヤバかったら下のドイツ達は最悪だな。あっちはまるで塹壕の中だ」


タスクの皮肉に反応する余裕もない。さすがに疲れた。


「そういえば久遠三佐は?」

『あいつは隣の機だ。行先が日本の医療機関だ。身体に仕込んだ機密が多すぎる。後二時間でWHOが待機している施設だ。そこで検査して何も出なければ帰国だ』


帰国という言葉を聞いてからだから力が抜けた。


「少し休む」

『その前にだ。通信が途絶えてから何があったのか簡単な報告をしろ』


勘弁してくれ、そう思いつつ軍人としての悲しい性か、背筋が伸びた。


「PWRRCの私兵を撃退した後、《ノーフェイス》が現れた。その後は銃が使えず、フォーミュラとタスクが人質に取られたまま地下施設に突入。クローンが置いてあった」

『そこで何を聞いた?』


その言葉に少し引っ掛かりを覚えた。

普通はあったものを聞くんじゃないのかと。そう思った。フォーミュラが口にした内通者の可能性。確かに『CCC』があれば要らないだろうが、いないとも限らない。特にディランは私達とは違い、『可能性』を切り取っている。だから少し暈した。


「抑止力やら、動機やら、何をしていたのか」

『……………………………………そうか』


たっぷりの沈黙の後に一言そう付け加えた。


「もう寝かせてくれ」

「任務完了おめでとう。生還を信じていたぞ。ゆっくり体を休めてくれ』


その胡散臭い口調に軽口をたたく元気もなかった。静かに眼を閉じていた。

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