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プロローグ 倉間ハルトの回想
故あって拾われた主人に、女を紹介された。
婚約者とかそういう相手としてではない。仕事――つまり、護衛対象として、だ。
荒事は得意だし、俺の『能力』も相まって誰かの護衛という仕事は俺にとても合っている。
護衛対象は黒髪の少女。自身に満ち溢れた表情と、微かににじみ出る覇気。世界すべてを敵に回しても笑っていられそうな、そんなイメージを抱く。顔立ちは整っていて、見たところスタイルも良い。俺もまだまだガキなようで、それだけで多少やる気が湧いてきてしまう。
その少女の名は、新木シアン。
俺が生涯に渡って仕えることになる、異界からの来訪者。
――多分だが。
今ここで主人を裏切り、わき目も振らず逃げ出していれば、俺は死なずに済んだのだろう。
朦朧とする意識。
もう誰かも思い出せない、けれど何よりも大切な、彼女の声が聞こえる。
最期に見たものは、青い、綺麗な空だった。