第八話 帰り
「失礼します。二年八組の霧崎です。部室のカギをしまいに来ました」
僕はそう言って鍵を入れてる箱の場所に向かい、鍵をしまった。すると
「霧崎君、ちょっといい?」
と声をかけられた。担任の西川先生だ。僕は先生のもとに向かった。
「なんでしょう」
「君、数Ⅱの時何かしたの?原石先生に月曜日に君から反省文を預かってくれって言われたよ。まじめな君がどうしたの?相談事でもあるなら先生が聞いてあげるよ?」
今日だけで何回同じ質問をされただろう。
「大丈夫ですよ。昨日夜更かしして寝不足で、そのせいですこしうとうとして授業に集中できなかっただけです」
「ふぅ~ん。そっか~、霧崎君も男の子だもんね~。いつか手を出すと思ってたよ。まあ男の子なら正常だからね」
どうして僕の周りには「夜更かし」=「そういうこと」としか認識できない頭のなかまっピンクの人しかいないの?
「何なら先生がいろいろ教えてあげようか?」
30代前半の独身女性、しかも先生が言うことじゃない。さすがにこれはあかん。
「先生違うんです。僕は怪奇現象に関しての本を読んでいたんです」
「なんだ、そうなの。ついに君も興味を持ち始めたのかと思ったよ」
「もう帰っていいですか?」
「うんいいよ。さようなら」
「さようなら」
そして僕は職員室を出た。
靴を履き替えるべく靴箱に向かうと花美がいた。
「待っててくれたの」
「一人で帰るのはさみしいからね」
「じゃあだれでもよかったのか」
「そういうこと」
悲しい。
「そういえば僕が寝た後誰か来た?」
「誰も来なかったよ。みんな不真面目だね。部長に報告しようかな」
「アハハハ……」
ハ?誰もいなかったなら僕と花美は二人っきりだった?……もしかして告白のチャンスだった?一年の頃から好きだった女子に思いを伝える良い機会だったのか?
「どうしたの?」
「……いや、何もないよ。さっ、帰ろ」
「うん」
次からは部室では絶対に寝ない。僕はそう心に決めた。
十五分ほど歩くと花美の家についた。
「じゃあまた明日ね。バイバイ」
「バイバイ。また明日」
そう言って手を振って別れた。その後さらに五分ほど歩いて僕の家につき、今に至るわけだ。