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ジャック・イン・東京  作者: 文月獅狼
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第五話 新たな試練

 十一時三十五分。三限目終わりのチャイムが鳴った。


「きり~つ。きょ~つけ。れい。ありがとうございました」


 もう……いや……。


「満月~、何やってんだよ」


 この声。このテンション。間違いない。雄二だ。僕の友人であり、先ほど言ってたクラスに一人はいる奴である。今は会いたくなかった。いっそ今日は休んでほしかった。

 そういえば僕の名前を言ってなかったね。申し遅れました、霧崎満月きりさきみづきといいます。まんげつじゃないよ、みづきだよ。小学生の頃は名前のことでめっちゃいじられた。


「お前普段はまじめなのに今日はどうしたんだよ~」


「ちょっと夜更かしして」


「まさか……お前そういうことには疎いと思ってたぞ。へぇ~、あのお前がね~。これはスクープの予感。夜に、いったい、何を、していたのかな~?」


「そうじゃないよ。また怪奇現象の本を読んでたんだよ」


 こういう会話はもう慣れたので、僕は慌てることもなくそう答えた。こいつ今スクープって言ってたでしょ?こいつ実は新聞部に入ってんの。おそらくじき部長。一番熱心に活動してるらしいよ、これでも。


「ほぅ、本を読んでたんですね、霧崎さん?」


「変なこと書くなよ。あと今日のことはそんなに長く引っ張らないでくれよ。これでも落ち込んでんだから」


「安心したまえわが親友霧崎満月くん。君が望むなら引っ張るのは128日くらいにしてやろう」


 …それでも長いんだけどな~。ていうか一年の半分じゃないか。こいつ自分が一年引っ張ること自覚してたのか。あといつから僕は友人から親友になったんだ。初耳なんだけど。


「反省文ちゃんと書けよ。さぼるなよ」


「お前じゃないんだからちゃんと書くよ」


「俺はお前とは違って反省文なんか書いたこともねえよ」


 よく言うよ。それなら昨日の数Ⅱの時間寝てたのは誰なんだよ。


「石島せんぱ~い」


「ん?あぁ、新しく入った後輩か。何て名前だっけか」


「山井口さんじゃなかった?この前僕にかわいい子が入ってきたって嬉しそうに言ってたじゃん」


「ああそうだったな。ちょっくら行ってくるわ」


 そう言って雄二は教室の入り口に向かった。


「そろそろ四限目が始まるな。準備しよう」


などと独り言を言いながら机から教科書を取り出そうとしていると、


「霧崎くん」


 と呼ばれた。顔を上げると花美がいた。

空島花美。僕と同じ美術部所属の女子であり、僕の意中の人でもある。美術部に入ったのも花美がいたからと、もともと絵が好きだったからだ(言い訳)。


「どうしたの空島さん」


「今日部活くる?」


「部長さんは来るの?」


「残念、今日は来ません。君の好きな由美部長は今日は家で描くって言ってた。コンテスト前だから集中できる家で描きたいって」


「別に部長のことは好きじゃないよ」


「はいはい、そういうことにしときましょ」


 彼女は勘違いしている。僕の好きなのは部長じゃなくて君だよ。


「副部長は来るの?」


「……なに?君はそっちの趣味もあったの?さすがに引くよ。」


「……」


彼女の頭はずっとピンク色なのか?まあこういうところも嫌いじゃないけど。


「片石さんも今日は来ないよ」


「なら僕も休もうかな」


「そう。じゃーね」


 その言葉と同時にチャイムが鳴った。彼女は去っていった。

 次は何だったかな。僕は次の授業の教科書を見た。そして一時停止した。

 数B。

 あれ?これも寝られなくね?


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