終わりと始まり
目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
周りを見渡してみるが、何もなく、ただうっすらと明るいだけ。
「おや、目を覚ましたかい?」
驚き、声のした方を向くと、そこには少年が立っていた。
「一体何なんだここは?」
「お、案外冷静だねぇ、キミ。まぁそれは置いといて、先に謝っとくよ!ゴメンね!」
「何で謝るんだ?」
「それは〜…えっと…ボクの手違いでキミを死なせちゃったからなんだよね…」
「……………は?」
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平凡という言葉を実体化させたかのような生活を送っている飯島海人。唯一何かあったとすれば、引っ越しぐらいのものだ。
「友達…出来ねえかなあ…」
引っ越し先の高校に転校して一週間、まだ一人も友達と言える人を作れていなかった。
そのため、一人寂しく歩いているのだ。
「〜〜!〜!〜〜〜!」
「何て言ってんだ?あの人」
「前見て!前!避けて!」
前が何だというのだろう。そう思って前へ向き直った。
そしてーーートラックが目前まで迫っていることにようやく気付いたのである。
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「手違いってどういう事だよ!?」
「いや〜、ホントごめん!実はあの日に死ぬ予定の人がね?キミと全く同じ名前だったから…」
そんなしょうもない間違いで死んだのか俺。
「許してよ!お詫びに新しく生まれ変わらせてあげるから〜!」
「もう一度生きることができるのか?」
「ついでに願いも少しなら叶えてあげるから許して!」
小説にあったりする異世界転生というものだろう。本当にあるんだな。
「ん?願いを叶える…?」
「そう。3つくらいなら叶えてあげるから、慎重に考えてね!」
緊張感ゼロだなとは思うが、3つの願いか。
何にするか…まず異世界で生きるための強い体。これは必須だろう。
「1つ目の願いは、異世界でも生きていける強い体をもらうこと」
「ふむふむ、現実的だねぇ〜」
あと2つ。特に思い浮かばないが…流石に友達が一人もいないのは恥ずかしいな…
「次の願いは何だい?」
「…俺と友達になってくれないか?」
「ああ、いいとも。……え?ちょ、ちょっと待って?友達!?ボクと!?少し考えさせてもらって良いかな!?」
何かまずかったのだろうか。願い事はこれで最後だが…本当に何も無い。2つ目の時点でもう望みを全部言っちゃったからなあ…
「もうそれ以上は無い…かな」
「ふむふむ…ふふ…ふふふ…あはははは!いいね!良いよキミ!3つの望みと言ったのに望みが2つしかないとは!気に入った!友達になってあげるよ!」
何が何だかよくわからないが、とりあえず俺の事を気に入ったのかな?そういえば…
「名前を聞いてなかったな。君の名前は?」
「ん?ボクかい?ボクの名前はクロノスだよ。知ってる人もいるかもね」
「…クロノスだって?」
クロノスって確か神様だったよな…?俺そんな大物に友達になろうって言ったのか。そりゃ微妙な顔するワケだ。
「なあ、これで終わりならそろそろ送ってくれないか?」
「ああ、そうだね。ボクの友達として向こうに送るんだ!特別強い体にしておくから、頑張るんだよ?それじゃ、二度目の人生、楽しんでくれ!」
こうして、俺は予想外にも二度目の人生を送ることとなった。神様と友達になり、異世界に転生を果たしたのだ。
「さて…頑張って生きてみますか!」
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「そういえば…ボクから見て特別強い体にしちゃったけど、人間から見たらどうなのかな?まあ、大丈夫だよね!なんたって、ボクの友達なんだから!」