カップ焼そばと悪コンビ
「アニキ、取引は無事に成功しやしたぜ」
「ああ。ククク、これで……」
都内の雑居ビル地下にあるアジトで、アニキとコブンが会話している。二人とも黒ずくめの服装だ。テーブルの上には、一個のカップ焼そばが置かれている。
「これで、美味い昼飯が食える!」
「やりやしたぜアニキ!」
「あのスーパーには全身黒い服装で入店する奴が俺たち以外いないからな。レジ係との取引を終えて撤収するまで、周囲の目線に耐え続ける必要がある」
「アニキ、早速いただきやしょう!」
「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。蓋をラインの部分まで開ける。そして躊躇せずぶち込んでやるのさ。この熱湯をな……!」
アニキがポットの口を容器に突きつけ、中の湯を流し込んだ。用意周到なことに、中に入っていたソースとふりかけの袋は、あらかじめ別の安全な場所に移している。
「アニキ、どけだけかかるんですかい?」
「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。俺たちに与えられた時間は三分だ」
三分経った。
「食べられるんですかい?」
「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。湯切り口を開く」
「湯切り口を⁉︎ ま、まさか……」
「ああ。ここで捨て去っちまうのさ、熱湯をな……!」
アニキの手によって、中の湯は排水口の奥へと消えていった。
「食べられるんですかい?」
「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。蓋を全て剥がし、ソースを混ぜる」
決して日の目を見ることのない、漆黒の液体がパケから流れ出る。この地下室に日光は降り注がない。
「これからどうなるんですかい?」
「まあ落ち着け……。蓋の指示に——っ!」
蓋はごみ箱の中にある。剥がし切ったときにアニキが捨て去ったのだ。
「ア、アニキ……!」
「しまった……! 俺としたことが! クソッ!」
悔しさを滲ませるアニキに、コブンが意を決した表情で語りかける。
「俺が取ってきやす」
「なに⁉︎ し、しかし、そんなことをしたらお前が……」
「いいんです。元々、俺の手はあまり綺麗でもないですぜ……」
コブンはごみ箱から蓋を取り出し、ソースに続く指示を読む。
「——ハハハッ! こんなことの為に、俺は……! ハハハハハッ!」
「おい、どうした!」
「……もう、ふりかけだけなんですよ、アニキ。ふりかけをかければ、完成ですぜ……」
「……なんだと? そんなことのために、俺はコブンを……」
「気にしないでくだせえ。アニキの代わりになれれば十分ですぜ。じゃあ、洗面所、行ってきやす」
コブンが出所したときには、一分もの月日が経っていた。ふりかけがかかった焼そばには、アニキが手をつけた痕跡がない。二つある割り箸もそのままだ。
「待っていてくれたんですかい、こんな俺を」
「当たり前だ。分け前はいつだって半々。そうだろ?」
「アニキ……どこまでもついて行きやす!」
給料日前日のサラリーマンの昼休みは、あと十五分で終了する。




