表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

カップ焼そばと悪コンビ

作者: 川里隼生
掲載日:2019/07/11

「アニキ、取引は無事に成功しやしたぜ」

「ああ。ククク、これで……」

 都内の雑居ビル地下にあるアジトで、アニキとコブンが会話している。二人とも黒ずくめの服装だ。テーブルの上には、一個のカップ焼そばが置かれている。

「これで、美味い昼飯が食える!」

「やりやしたぜアニキ!」


「あのスーパーには全身黒い服装で入店する奴が俺たち以外いないからな。レジ係との取引を終えて撤収するまで、周囲の目線に耐え続ける必要がある」

「アニキ、早速いただきやしょう!」

「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。蓋をラインの部分まで開ける。そして躊躇せずぶち込んでやるのさ。この熱湯をな……!」

 アニキがポットの口を容器に突きつけ、中の湯を流し込んだ。用意周到なことに、中に入っていたソースとふりかけの袋は、あらかじめ別の安全な場所に移している。


「アニキ、どけだけかかるんですかい?」

「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。俺たちに与えられた時間は三分だ」

 三分経った。

「食べられるんですかい?」

「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。湯切り口を開く」

「湯切り口を⁉︎ ま、まさか……」

「ああ。ここで捨て去っちまうのさ、熱湯をな……!」

 アニキの手によって、中の湯は排水口の奥へと消えていった。


「食べられるんですかい?」

「まあ落ち着け……。蓋の指示に従うんだ。蓋を全て剥がし、ソースを混ぜる」

 決して日の目を見ることのない、漆黒の液体がパケから流れ出る。この地下室に日光は降り注がない。

「これからどうなるんですかい?」

「まあ落ち着け……。蓋の指示に——っ!」

 蓋はごみ箱の中にある。剥がし切ったときにアニキが捨て去ったのだ。


「ア、アニキ……!」

「しまった……! 俺としたことが! クソッ!」

 悔しさを滲ませるアニキに、コブンが意を決した表情で語りかける。

「俺が取ってきやす」

「なに⁉︎ し、しかし、そんなことをしたらお前が……」

「いいんです。元々、俺の手はあまり綺麗でもないですぜ……」


 コブンはごみ箱から蓋を取り出し、ソースに続く指示を読む。

「——ハハハッ! こんなことの為に、俺は……! ハハハハハッ!」

「おい、どうした!」

「……もう、ふりかけだけなんですよ、アニキ。ふりかけをかければ、完成ですぜ……」

「……なんだと? そんなことのために、俺はコブンを……」

「気にしないでくだせえ。アニキの代わりになれれば十分ですぜ。じゃあ、洗面所、行ってきやす」


 コブンが出所したときには、一分もの月日が経っていた。ふりかけがかかった焼そばには、アニキが手をつけた痕跡がない。二つある割り箸もそのままだ。

「待っていてくれたんですかい、こんな俺を」

「当たり前だ。分け前はいつだって半々。そうだろ?」

「アニキ……どこまでもついて行きやす!」

 給料日前日のサラリーマンの昼休みは、あと十五分で終了する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ