神様と料理
今回は新キャラが出ます。
え?性別?男ですよ?
え?ハーレム展開期待してたのに?
残念、そんな楽しいことないです。
あなたは部屋の外に出たくない気持ちで一杯だった。なぜなら、外から鼻をつくようなヤバい匂いが漂ってくるし、扉を叩いて神が、
「人の子よ、起きなさい! 折角私が作った料理を食べないというのですか! 」
と言ってくるからだ。
※
神様の暇潰し
~7日目 神様と料理~
※
まぁ、籠城しようと自ら開けようと、あなたは無理やり扉の外へと引き出されてしまうのだが。
「まっていました、人の子よ」
神様は、黒い何かを此方に向けながら微笑んでいる。
「さぁ、朝食にホットケーキを作りました。お食べなさい」
どう見ても、皿の上のそれはホットケーキではない、デスケーキだ。だが、かなしいかな、あなたには食べるという選択肢もあった。
《食べる》
→2
《食べない》
→3
※2
あなたは覚悟を決める。
ここで食べなければ神が悲しむと思ったのかもしれないし、ただの興味本位かもしれないが、とにかく決めたのだ。
震える手をゆっくりと皿に伸ばす。
すると瞬間、皿が弾けとんだ。
「なっ! 何事ですか!? 」
あわてふためく神の背後に見えたのは、初めてみる顔、黒い装束を着た銀髪の男。彼はあなたに言うだろう。
「大丈夫か、ゴート? 」
あなたは頷くかもしれないし、ゴート呼ばれた意味を問うかもしれない。ただ、そのどちらよりも先に神は男を怒鳴り付
けた。
「なにをするのですか! ルフェル! 折角のホットケーキが台無しです」
男、もといルフェルは平然と返す。
「お前の致死量の毒から大事なスケープゴートを守ってやったんだ。感謝してくれてもいい」
神は歯噛みした。
「なっ! 失礼な! 」
だが、ルフェルはそれを無視してあなたに自己紹介する。
「私はルフェル、神に仕える天使だ」
ついでにそれを証明するように、服の後ろを軽く開いて大きな白い翼をあなたに見せた。
「黒い服だが堕天使ではないぞ。単に黒が好きなんだ」
それに、聞いてないのに好みを話してくる。本人的には大事なことなのかもしれない。とにかく、ルフェルは続けた。
「料理なら私が作るから、神は引っ込んでてくれ。ゴート、リクエストはあるか? 」
《和食》
→4
《洋食》
→5
※3
あなたは自分の本能に従って、神からの薦めを断った。
「え!? 」
神は目を丸くする。
彼女には意外だったのだろう。
しかし、これが人間の一般的反応だし、どこからか聞こえた声も落ち着いていた。
「そうだ食べるなよ、ゴート」
声の主は黒い装束を纏った銀髪の男。
彼は神に言う。
「神よ、あなたは相変わらずバカらしい。人間が、というかまともな生物がこれを食べる訳がないだろう」
その横暴な物言いに神は怒った。
「ルフェル! あなたは私に仕える天使でしょう! なんですかその言い方は! 」
ルフェルは疑問そうに見つめるあなたの為に服の背中を軽く開いて、真っ白で大きな翼を見せる。
「悪いな、普段はしまっているんだ。これでも天使、覚えておくといい」
それから、神に再びの顔を戻して言った。
「この口調は元からだ。仕方ないだろう、あんたの天使なんだから」
その意味はなんとなく分かる人もいるだろうし、分からない人もいるだろう。とにかく、ルフェルはあなたに聞いた。
「ゴート、朝食は私が作ろう。なにかリクエストはあるか? 」
《和食》
→4
《洋食》
→5
※4
「わ、しょく? 」
ルフェルは急に表情に焦りを見せる。
神はルフェルを笑った。
「あらルフェル、和食も知らないのですか? 無知ですね」
ルフェルは落ち着かない言葉で反論する。
「そ、そんな訳がない! わしょく位分かるさ」
それから、こちらをちらりと見てきた。
《教えてあげる》
→6
《教えない》
→7
※5
「よし分かった。今作るから待っていてくれ」
ルフェルは静かな笑みを浮かべると、その場にキッチンを呼び出して調理を始めた。
「肉の焼き加減は………そうか」
そして、簡単な質問の末に出来上がったのは美味しそうなステーキと瑞々しいサラダ、それから暖かいスープと赤いワイン、焼きたてのクロワッサン。どれからもいい香りが漂ってくる。
「好きなだけ食べるといい。まだまだ材料はあるからな」
その後、あなたは満足ゆくまで食事を堪能するだろう。
※6
仕方がないので、あなたは小さく手招きしてルフェルを呼び、和食について教えてあげる。するとルフェルは大きく頷いて笑顔を見せた。
「……なるほど、そういうものなのか。よく分かった、任せてくれ」
それから、キッチンをその場に呼び出して調理を始める。
「ダシはこうやって……」
長い独り言の後出来たのは、立派な和食である。具沢山な味噌汁と焼きたての鮎の塩焼き、白くて艶やかなご飯、綺麗な小松菜のおひたし、ふっくらとしていて柔らかい梅干し……。
「どうだろうか? 」
それでもルフェルは少し不安そうにあなたに聞いた。
《おいしい》
→8
《不味い》
→9
※7
あなたはなんとなく黙っていた。
そして、黙っている内にその場にキッチンが呼び出され、調理が始まる。
調理中はかなり不安だった。
というか不安しかなかった。
ルフェルは目を回しているし、神はロクなアドバイスをしない。
そして、嫌な予感は的中して、あなたの目の前には神の作った兵器ほどではないが酷い完成品が並んだ。神は笑う。
「あらあら、人を馬鹿にしておいて、随分な出来ですね、ルフェル」
ルフェルは悔しそうに唇を噛んでから、あなたに申し訳なさそうな視線を向けた。
「……悪いな、失敗してしまった。パンと牛乳でもいいだろうか? 」
他に選択肢も無かったので、三人はパンと牛乳で、なんか普通な朝ごはんを味わった。
※8
あなたがルフェルにおいしいと伝えてあげると、ルフェルはとても嬉しそうな笑顔を見せてから、直ぐに恥ずかしそうに目線を反らした。
「そ、そうか、それは良かった」
神とはまた違うタイプにめんどくさそうな奴である。これからは何度か顔を合わせることもあるんだろう。
あなたはそんなことを考えながら、神とルフェルと、出来上がった朝食をゆっくりと堪能した。
※9
別に不味くは無かったのだが、とりあえず不味いと言ってみると、ルフェルはとても悲しそうに目線を落とした。
「そ、そうか……」
だが、少しそれを見つめているとハッと気がついたように頭を振るって、元の調子で話しかける。
「悪かったな。本当は神が好きな洋食しか作ったことがないんだ。すぐに何か別のものを用意するよ」
あなたは冗談だったと言って止めるかもしれないし、彼の新しい料理を待つかもしれない。
とにかく、その後あなたと神とルフェルは、ゆっくりと朝食を楽しんだ。
※つづく※
作者の料理の腕は、食べた人間をこの世の肉体から解放するくらいです。あなたはどうですか?