神様のスポーツ
白いベッドで眠っている貴方の耳に、頭が痛くなるほどの騒音が響く。それは、金属と金属が勢いよく何度もぶつかる音である。まだ眠いがこんな中では寝ていられない、貴方は嫌々ベッドから起き上がって身支度をし、玄関の扉を開いた。
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神様の暇潰し
~2日目 神様のスポーツ~
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寝ぼけ眼のあなたに、鍋を両手に持った神様が声を掛ける。
「おはよう、ようやくおきましたね」
貴方は文句を言うかもしれないし、おとなしく挨拶を返すかもしれない。ただ、どちらにせよ、彼女の回答は決まっているのだ。
「今日はスポーツをします。理由は私がしたいからです」
そして、彼女が鍋をそのへんに投げ捨て指を鳴らすと周囲の景色がテニス場に変わる。あなたは神に聞いた。
「―――――?」
神は答える。
「テニス? いいえ? そんなことしませんよ? どこを見ているのですか? 」
それから、テニス場の中央、ネット付近に置いてある何かを指差した。そこにあるのは古そうなゲーム機と丸められたマットのようなものである。
「私たちがやるのはあのファミ◯ートレーナーですよ。」
神はあなたの手を引いて、強引にカラフルな丸の描かれたマットの設置を手伝わせた。加えて、嫌な顔をするあなたに神は鼻を鳴らして強要する。
「さて、準備もできましたし、さっそくスポーティーなことをしましょう。ずばりマラソンです」
この頃にはあなたの諦めもついているだろう。だが、これから始めようとしたその時、神はひょうきんな声を上げた。
「へ? 」
どうやら、電源がつかないらしい。
すると、神はそこで更に変なことを言い出した。
「……仕方がありません。夕日に向かって走りましょう」
そして、言葉と共に彼女が指を鳴らすと、景色がテニス場から海の見える高台に変わる。高台からは海に向かって階段が続いていた。
「さぁ、青春は汗と涙と吐血ですよ! 」
神はあなたの手をとって猛スピードで走り出す。あなたは思った。
せめてちゃんと目覚めてからにしてくれ、と。
※つづく※