大人
ほんの小さな町
小さな家、小さな学校、何事もない平和な日常を過ごしてる自分の身に
突然こんなことが起きるなんて思ってもなかった。
大きなベルが鳴り響く。
うるさい…何かあったのかと思うレベルだ。
なんてことはない、ただの目覚ましが鳴っただけ。学校の時間である。
「学校か…夏休みまだかよ。早く休みが欲しいな。」
俺の名前は相楽一樹。
そこら辺にいる普通の小学6年生だ。
「まぁ休みがあるからといって特になにかするわけでもないし、何事もなく終わるんだろうけど。」
そんなどうでもいいことをつぶやきながら身支度をする。
そして朝ごはんに納豆と味噌汁を食べて学校に向かう。
「(あー、夏休み始まるの嬉しいけど、そしたらしばらく先生と話すことができなくなるのか。それはそれでつまらない気がする…)」
「ドンッ!」
考えながら歩いていると後ろから思いっきり押された。振り向いてみると4年から同じクラスの吉田高明である
「よっ!後3日行ったら休みだな!テンション高くなって眠れなかったわ!」
こいつどんだけ夏休み楽しみにしてんだよ。夏休みっていってもあれだぜ?
夏休みの宿題とか、毎日の日記とか自由研究とか…割りとやんなきゃいけないこと多いんだが…こいつは分かってなさそうだな…
あれ?この部分だけ聞くとつまらなそうだな。夏休みって。
まぁこれ以外は逆に遊んだり、ダラダラしたりするから面白いんだけど。
でも…なんでだ…あんま楽しみじゃないな…
「そんなに楽しみか?夏休みが。」
「いや、夏休み楽しみじゃない奴っていんのか?いたらそいつはかなりの学校好きだな!なに?一樹は学校行くのが好きなん?」
「好きじゃない…けど…なんかあまり夏休みを楽しみにできないというか、別に来なくてもいいようなって気持ちが自分にあるんだよな。」
そう、単純に夏休みなんて来なくていいと感じてしまってるんだな。
「それは宿題とかあるからか?」
「…そういうのじゃないな、その辺は適当にやれば終わるし。」
できる優等生ぶりをアピールしてみた。これされたらウザいな…
「じゃああれじゃん?今年来た新任の先生。夏休み入ると会えなくなるからじゃね?お前あの先生と気が合うっていうか、よく休み時間とか二人で雑談とかしてんじゃん?それが楽しいから夏休みが来なくていいと感じてるとかじゃねーの?」
(…ぼそっ)「あるかもなー…」
ハッ、と気づき、俺は口に手を置き、今無意識で言ったなーってのを実感した。無意識って怖えーわ。
そう、今年の4月から教師が代わり、この教師がまた少し他の教師と違うタイプ?をしていたからである。恐らく普通の小学生教諭ってのは子どもに媚びるというか、子どもに合わせるってのが大半なんだが俺はそういう先生を好まない。理由は自分でキャラを作っているからだ。俺はそんな先生と話して楽しいと感じたことがなかった。だが今年来た新任の先生はキャラを作らず本音のままに喋っていた。よく言う言葉は「俺ならこうする。」この言葉はキャラ作りをしてる人は発しない言葉だ。合わせるからな…。
「お前性格が冷めてるからな。あーいう大人の話とか聞くの好きそうだもんな。まぁ俺は嫌いじゃねーけど。」
嫌いじゃねーけど、でドヤ顔してたのはなんでだ?
「冷めてるんじゃなくて大人びてるって言って欲しいな。言うのであれば」
と、澄まし顔で言った。
そう、俺は周りの奴等と違って少し冷めてるというか、落ち着いてるっていうか、まぁ…大人びてる?笑
人には話を合わせるし、自分の意見が通らなかった場合でも揉めたりしないし、とりあえず面倒事は避けたい人間である。
小学生でよくあるトラブルとしてはケンカ、悪口を言われて泣いたり怒ったり、親や先生に報告。
この辺がまぁ鉄板である。俺はこれを基本しないのだ。ケンカになりそうになったら自分から引くし、悪口を言われて特に言い返しもしないし、そのことで親や先生に報告したりもしない。その理由は簡単だ。親や先生に言ったところで誰が得する?親や先生に色々聞かれたり、相手側が怒られたりと面倒事や次の日からの関係が気まずくなったりするだけじゃね?という結論に至ったからだ。
そのことをその新任教師に伝えたら、「大人みたいな考えしてんだね。」と言われた。ぶっちゃけこのときは全く意識してなかった。