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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
69/70

行き詰まり

 やっぱり、何度見ても慣れないな。

 今日の目覚めも最悪。あの日から、起きても忘れる事なく記憶に残るようになった例の夢。この頃は夢なんて言い方にも違和感が出てきた。

 日を追うごとに、あれが未来だって確信が増していくんだから、仕方ないけどさ。


「けど、夢であって欲しいって思っちゃうよな」


 こう思うのも、確信が増してる証拠である事も分かってる。分かっていても割り切れない。

 俺もまともな感情抱くようになったもんだ。こんな世界になる前は、あんなに無関心で無感情だったのに。環境による影響力って怖い。


「もう1ヶ月、か。まだまだ全然強くなれてない」


 まだ必死になれてないのかもしれないな。実際のとこ、時間が無いって分かってるのに全然焦ってない。

 これは俺のモチベーション、気持ちの問題だろう。いまいち白亜を守る事に命をかけるのがピンときてない。というか、記憶と現実の差に付いていけてない。

 まあ、後から焦る事になっても間に合わなくなるだろうから、今のモチベーションで出来る精一杯はこれまでもやってきたし、これからもやっていくつもりだ。

 さあ、今日も頑張るか。


「慣れてきたけど、やっぱりまだ眠いなぁ」


 毎日朝の5時みんなが起きるのが8時頃だから、それまでの3時間は1人で外に出る事にしている。

 この3時間の間での戦闘では、魔力を一切使わないという制限をかけている。これはみんなで外に出た時に魔力を残しておくためと、素の身体能力向上の目的がある。それから万が一魔力が切れた時にもある程度戦えるように、という理由もあったりする。

 さっと装備を整えて軽く伸びをしながら外に出る。学校から少し離れたところで魔力操作のみの索敵。これなら消費魔力はゼロだ。とはいえずっと広げてたら徐々に漏れていってしまうので、すぐに元に戻す。

 東に3体、西に1体、南には5体か。今日は東だな。

 西の1体はおそらく赤毛の熊と同等かそれ以上のやつ。ここ数日ずっといる上に他の魔物の反応が一度も無かったし、ほぼ確定だろう。

 1人な上魔力使わない制限でそれと戦うなんて無理。かといって5体相手にするのも無理。大人しく東に行きます。


「お、いたいた。まずは奇襲だな」


 身体強化無しの『ソニックラッシュ』で3体のゴブリンのうち1体を片づける。もちろん狙ったのは遠距離攻撃のあるやつだ。

 次に狙うのは、遊撃の役割を担うだろうナイフ持ちだ。タンクっぽい両手剣持ちの攻撃を大きめに弾いて、追撃のナイフを躱し、すれ違いざまに『スラッシュ』。


「さあ、俺の特訓に付き合ってもらうぞ」


 最後のタンクを相手に、相手の方が力が上の場合の戦闘練習をする。攻撃をまともに受けるとこちらが力負けして怪我をするので、攻撃に合わせて『スラッシュ』でパリィする。

 しばらくそれを繰り返し、大きな隙ができたところで攻勢に出る。腕を斬りつけ片腕を使えなくして、ヤケクソにぶん回された両手剣を避けて『スラッシュ』で首を刎ねる。

 1ヶ月前に比べて強化無しでも剣の重さを感じなくなったな。体力も付いてきてる。筋力は、まあ、今後に期待って事でよろしく。何にせよ随分戦えるようになったのは成長の証と言ってもいいだろう。

 でも、これじゃダメだよな。強化無しで楽々倒せるくらいにこの辺りの魔物が弱くなった。このままじゃこれ以上強くなれない。

 物足りなさを感じながら、その後も索敵に引っかかった魔物と戦い続けた。

 学校に戻って朝飯が来るのを待っていると、雅人が起きてきた。


「おはよ」


「おー、おはよ。今日も行ってたのか?」


「まあな」


「どうした?」


「足りない」


「時間?」


「敵の強さ」


「んー、危なくね?」


「だから悩んでんの」


「なるほど。お前はどうしたいんだよ?」


 どうしたいって、そりゃ強くはなりたいけど死ぬのは勘弁だしなあ。まあ、強いやつと戦う以外に選択肢なんて無いんだけどさ。

 ・・・選択肢が無いってのが、そもそも間違ってるのか?じゃあ他の選択肢ってなんだ?本当にあるのか?


「なあ、今日って何かあったっけ?」


「は?なんだよ急に」


 雅人の向いている方向をみると、確かに何かがある人の集まりがあった。

 何の集まりだ?有名人でもいるとか?いや、無いか。そんなほいほい来るような場所でも状況でもないもんな。俺たち2人ともが知らないとなると、ここ最近の昼間にでも決まった事なんだろう。誰か知り合い居ないかな。ちょっと話が聞きたい。


「雅人。あの集まりの中にお前の知り合いとか居ない?話聞いてきて欲しいんだけど」


「まあ、何人か知ってる奴は居るけど、お前が自分で聞けば良いだろ?」


「バカ野郎。俺に知り合いが居るわけないだろ」


「言ってて悲しくならないか?」


「ならねーよ。ほら、頼むよ」


「へいへい、行きますよ。行ってきますとも」


 しばらくして帰ってきた雅人にどうだったか聞いてみると、"西に行くため"の集まりという事らしい。


「うそだろ?」


「な、西に行くだけなのになんであんな人数要るんだよって話だよな」


「逆だよ。あいつらの集まりじゃ何人集まっても全滅だ」


「なんで?」


「西には赤熊と同等かそれ以上のやつが陣取ってるから」


「じゃあ大丈夫なんじゃないのか?1ヶ月前のオレたちが勝てたのと同じくらいだろ?」


「1ヶ月で俺たちみたいなペース強くなってるのは南雲たちだけだ。他の連中はほとんど変わってねーよ」


 最も、俺以外は昼間しか外に出てないけどな。

 才能って、残酷だ。俺が必死こいて戦いまくっても、俺の3分の1くらいの戦闘で同じ成長するんだから。


「だったら尚更1ヶ月前のオレたちが勝てた相手にあの人数で負けるなんて無いだろ?」


「俺たちの時は運が良かったんだ。1つは熊だった事。もう1つはお前が『憤怒』を獲得した事」


「熊だったからなんだってんだよ?」


「腕での攻撃が主体だから対処がし易くて隙も多かったんだ。動きも直線的だったしな」


「あー、言われてみれば。じゃあ『憤怒』は?」


「『憤怒』の力がなきゃあの熊の火事場の馬鹿力で全滅してたよ。まあ、その後あの熊も力尽きてただろうけど」


「・・・綱渡りすぎねぇ?」


「だから運が良かったって言ったろ」


「・・・じゃあ死ぬじゃん」


「だから聞き返したろ」


 とはいえ「お前らじゃ何人集まっても全滅するからやめとけ」なんて言っても反感買うだけだしな。ほっといても関係ないし良いんだけど、雅人が落ち込むかもしれないし。

 うーん。


「おはよう」


「ん?ああ、おはよう白亜」


「加耶ちゃんがあそこに行っちゃったんだけど、何か知ってる?」


 ・・・は?うわ、マジじゃん。加耶のやつ、聞きに行ってるよ。これで確定だな。西のやつは俺たちが倒すことになる。

 そうと決まれば、善は急げだ。あいつらより先に西に向かって、とっとと倒さないといけない。

 2人に出来るだけ急いで準備するように指示し、一足先に西に行く事を伝える。


「1人で戦う気じゃないよね?」


「戦うよ?俺の見立てが正しけりゃ、俺1人で勝てるはずだから」


「でも」


「大丈夫。心配なら、早く準備して来てくれよ」


「・・・分かった」


「ありがとう。じゃあ頼むな、雅人」


「おうよ」


 てことで俺だけは即時出発。恐らくみんなが来てから10分もしないうちにあの集団が来るだろう。つまり時間がない。西向きに走りながら擬似強化を行い、索敵を全開で発動する。

 いた。あっちだ。

 索敵に引っかかった魔物の方に軌道修正して、速度を上げる。そんなに離れていなかったのでその姿はすぐに見ることができた。


「あれは、なんだ?・・・オークか?」


 オークって単体行動する生き物だったか?いや、ゲームによって違うか。それにあくまでもゲーム知識だ。あれがそれに当てはまる対象かどうかなんてわからない。

 武器は棍棒のイメージがあるけど、曲刀か。見た目はザ・オークって感じだ。ただし装飾が豪華でめちゃくちゃガタイがいいが。結論を言うと、オークの上位種っぽい。

 となれば力比べではまず勝てないだろう。スピードなら勝てそうだけどやってみないことには分からないな。対策は戦いながら立てよう。

 時間の関係からこれ以上考えてる時間が無いと判断して『ソニックラッシュ』で奇襲を仕掛けた。

 戦闘開始だ!

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