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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
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七つの大罪『憤怒』

 検証を始めて数分後、俺は防戦一方になっていた。

 記憶にある未来の俺が身につけた技術や戦い方を駆使しても、クリーンヒットを喰らわないのがやっとな状況だ。

 とは、いえ!このままじゃ、ジリ貧、だよな!?あっぶねぇ。

 つかこれどうやって止めんだよ?完全に理性失ってますけど??


「おい!こら!そろ、そろ!?止まれ!!」


「・・・」


 ダメかー。

 ですよね分かってましたよ。理性失ってんのにこんな呼びかけで戻ってくるわけ無いよねそうだよねちくしょう!

 とりあえず、動き止めねーと話もできねー。

 理性を失っているせいか、単調な攻撃が多いので、タイミングを合わせて無理矢理鍔迫り合いに持ち込んだ。

 さっき思いついた強化がなきゃ、鍔迫り合いになる前に吹っ飛ばされてたな、こりゃ。


「おい!バカ!飲まれんな!せめて制御する努力をしろ!!」


「・・・」


「ちょ、なんで力強くなってんだよ・・・!」


 マジでやばいぞこれ。どうやって止める?てかそもそも止められるのか?

 赤熊の時は制御出来てたのになんで今はできないんだ?何が原因だ?集中力?怒りの度合い?それかもっと大事な要素が欠けてるとか?

 こいつにとって大事なものは


「制御出来ねーと、加耶を、守れねぇぞ!それで良いのか!?」


「・・・っ」


「"また"後悔するぞ!?」


「・・・っるせぇよ」


「言われたくねーなら、ちゃんと、制御しやがれ!バカやろう!」


「分かっ・・・てるよ!・・・こんの・・・!!」


 ふぅ、ようやく一息つけた。

 いやー危なかった。あれで制御出来なかったらどうしようも無かったからな。


「そのまま憤怒を使うのをやめろ。検証は終わりにしよう」


「そう、したいんだがな。もうちょい、発散しねーと、収まりそうにねぇわこれ」


「・・・どうしろと?」


「的に「断る」


「「・・・・・」」


 いやだって的になれとか死ねって言ってんのと同じだからね?誰がそんな願い引き受けるかっての。

 とはいえそうしないとどうしようもないのも事実。どうするか・・・?


「一撃で終わらせられるか?」


「・・・多分」


「よし、なら的になってやる。ちょっと待てよ」


 今の今まで部屋着並みの軽装から外に出る時用の装備に切り替え、強化を掛け直す。

 プラスで闇魔術を剣に付与。さらに身体にも風魔術を付与する。


「いいぞ。来い」


「はぁ!!」


「・・・ゔっ!!」


 身体、潰れそう・・・。でも、耐えた。

 待て待て待て!なんでまだ鍔迫り合い続けてんだよ!?しかも全然力弱くなってねーし!!

 マジで身体がやばい。悲鳴あげてる。全身の筋繊維千切れまくってるだろうなこれ。ていうか骨が軋んでるんですが?

 これ以上力が加わると骨が逝っちまうな。

 抜け出す?無理。押し返す?それが出来たら身体は悲鳴なんてあげない。もう一段階身体強化が出来るか模索する?思いついても試せない。そもそもルーン文字が書けねーわ。

 現状維持。このまま耐えるしかないか。


「って!それが・・・出来たら、苦労しねーんだよ!」


「・・・」


 うぉい!?また正気失ってんじゃねぇかよ!!え、どうすんの?これどうすんの??どうすんの!?

 え、待って。また力強くなってない?あ、いや違うわ。強化魔術の効果が薄れてきたんだ。

 ・・・いや、うん。これはちょっと、どうだ?・・・やらねーよりマシか。

 手首は固定したまま腕の力を抜いて引き寄せる。ある程度引き寄せたらそこでキープして、後ろにジャンプ。同時に腕を前に押し出し雅人の力も利用して出来るだけ後方に・・・!


「何とかいけた!けど・・・『強化魔術』」


 現状出来うる限りの強化魔術を掛け直して追撃に備える。

 強化を掛け終えた直後には、もう目の前だ。

 今度はバカ正直に力勝負をせずに最初からさっきと同じ要領で後方に身体ごと受け流す。

 後ろへ、後ろへ、後ろへ。そして、壁際に。

 もう後ろへはいけないので攻撃は横に受け流す。何度かそれで凌ぎ、だんだん受け流しにも慣れてきたところで攻撃だけを後ろに受け流し、自分自身は雅人の背後に回る。

 これで、壁を背にしているのは雅人の方になった。

 膂力がかけ離れている相手との戦いにも慣れてきた。が、それはあくまで凌ぐだけならの話だ。

 耐えることは出来ても反撃がどうにもならないんじゃな。

 ってあれ?雅人が止まってる。


「おい、雅人?」


「おう。悪い、やっと落ち着いた」


「そうか。お互い、何とか怪我なく済んで良かったな」


「お前のお陰でだけどな。オレは暴走してただけだから」


「まあ、お互いいい経験になったって事にしとこうぜ」


「だな」


 身体に掛けていた強化魔術が消えた途端、数秒遅れて身に付けていた装備が勝手に外れた。

 同時に襲ってきた倦怠感に抗いながら、状況を整理する。

 まず、何故こうなったか。・・・魔力切れか。次に、装備が外れた事で今俺どんな格好してる?

 良かった。最低限ズボンとインナーくらいは残る仕様になっているらしい。

 俺自身の所持品ではない木剣は手元に残っているが、ブレザーに魔導銃など戦闘において大事なものは残らず端末に入れられている。

 これ、魔術的効果付きのズボンとか履いてたらどうなんのかな・・・。

 考えるのはやめよう。とにかく魔力切れを起こすとどうなるか知れたのは収穫だと言えるだろう。


「ってわけで、すまん。肩貸して」


「わ、分かった。って、どういう訳だよ」


「魔力切れた。すっからかん」


「なるほど、納得」


 とりあえず訓練場の端まで肩を貸して貰って移動して、座り込んだ。

 これは、しばらく動けそうに無いな。


「悪い、しばらく動けねーわ」


「見りゃ分かる」


「だよな。で、検証結果だけど」


「「とりあえず封印」」


「やっぱそうなるよな」


「当たり前だろ。実戦でオレが暴走しちまったら、こんなんで済まねーよ」


「でもある程度は制御できるようになって貰うぞ」


「は?危ねえだろ」


「ハイリスクハイリターンだ。お前が強くなる事以上に頼りになる事は無いからな」


「・・・まあ、やるだけやってみるわ」


「頼むな」


 その後歩けるくらいまで回復したら、適当な上着を端末から取り出して、食堂まで行くことにした。

 なんだかんだで陽が落ちてきてたから腹減ったんだよな。てかそんなに時間経ってたのか。


「あれ、2人もいたのか」


「あ、うん。落ち着かなくて散歩しようと思ったら、結衣と出会して、そのまま、一緒に」


「何お前。なんかぎこちないぞ?」


「逆にあんたはなんで普通にしてられるのよ?」


「あん?・・・あぁ、悠は悠だからな」


「なんでそんなに割り切れるのよ」


「・・・ああ、なるほど。言っとくけど、白亜が殺されるまでの記憶しか無いからな?この先数ヶ月程度の記憶がいくつあっても、性格までは変わんねーよ」


「いや、でも、ね」


「ちょっと戦い方や魔術の知識が増えただけだよ。ほら、あれだ。教科書の内容が経験として流れ込んできた感じ」


「分かるような分からないような」


「それで良いよ。俺もハッキリこうだって言えるわけじゃないから」


「私が殺されるってハッキリ言ってるのに?」


 そこを突っ込まれるとキツいんだが。


「それを主張するかのようにその前後の記憶ほどハッキリしてるんだ。疑いようが無いだろ?」


「「「なるほど」」」


「納得して貰えたみたいで何よりだ」


「もう一ついい?」


「いいよ。なに?」


「なんでそんな格好なのかな?」


 やべ、これちょっと怒ってるやつやん。待って。さっきのやつは正当な理由になるよね?大丈夫だよね?

 ・・・よし。最悪全て雅人に罪を被せよう。

 そんなわけで、さっきまで何をしていたのか説明した。


「つまり、魔力が無くなったから最低限の服しか出せない?」


「そゆこと」


「怪我は?」


「してない。結構危なかったけど」


「そっか。良かった」


「ん。心配かけてごめんな。さて、晩飯「待って」


 おっと、加耶さん?お怒りですね。


「危ないって分かってたよね?」


「「ハイ」」


「じゃあなんでやったの?」


「どのくらい危ないか検証する良い機会だったから」


「ふ〜ん。じゃあスキルのこと隠してた理由は?」


「あー、俺は2人に心配かけたくなかったから」


「雅人は?」


「・・・」


「答えて」


「怖かったんだ。スキルが発動してる間、記憶には残るのに理性を失うから。だから、いつか加耶を傷つけるかもしれないと思って」


「俺は良いのかよ」


「悠には、そうなった時殺してでも止めて欲しかったんだよ」


「「「・・・・・」」


 重いわ!!え、お前そんなこと考えたの?待って待ってやめてくんない?覚悟が重すぎて居た堪れない気持ちになって来たんだけど!

 今俺がどんな顔してるのか分からないが、白亜も加耶も、なんとも言えない複雑な顔をしてるから俺も似たような感じだろう。


「とりあえず、重いわバカ!」


「人のこと言えねーだろ!?」


「いや・・・そーですね!?ごめんなさい!」

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