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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
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ノート②

 そういえば、読めって言ってノート渡したんだった。

 思い出したのは雅人と加耶を部屋にいれてからだ。

 こんなこと忘れるなんて、我ながら相当アホやらかしたな。


「えーっと、ノートの事で間違いない?」


「おう」


「じゃ、先に言っておくけど、俺も知ったの一昨日の夜だからな?そのノート見つけたのも俺じゃなくて白亜だし」


 これ言った途端、こいつ何言ってんだ?みたいな顔されたんだが。しょーがないじゃん、事実なんだから。


「結衣は、内容も知ってるの?」


「知ってる。一昨日の夜、お前らと同じ顔して俺の部屋に来たよ。呼ぶ?」


「いや、もう寝てるかもだしやめとこう」


「ううん、呼ぼう。多分、知らないとこでこんな話してるの嫌だと思うし。結衣、そういうの気にしちゃうから」


「分かった、俺が呼んでくるよ。2人はちょっと落ち着いてくれ」


「「わかった」」


 部屋から出て、隣の白亜の部屋をノックする。

 あれ、反応ない?寝てるのかな?あ、鍵空いた。入れって事?いやいやそうじゃないんですよ白亜さん。

 まあ、入るけど。


「どしたの?こんな時間に・・・」


 やっぱ寝てたのか〜。悪いことしたな。


「ごめん、寝てたのか」


「ん〜?うん。いい、大丈夫」


「そ?じゃあ、ちょっと俺の部屋に行こっか」


「わかった〜」


 うん、寝ぼけてるね。なんの疑いも躊躇もなく了承しちゃったよ。寝ぼけてる時のこの子危ない!


キュ


「抱っこ」


「へ?」


「抱っこ〜」


 人の服掴んだと思ったら抱っこをご所望ですか。

 一瞬何言われたかわかんなかった。つかこれは本当に危ない!もし誰彼構わずやっちゃうなら、ちょっと、もう危ないわ!てかもう俺がやばい。ちょっと可愛すぎて召されるかと思ったわ。いやほんと、一昨日もそうだったけどさ!もう無理、危ないわー、この子危ないわー!

 全く、明日、いやこの後ちゃんと目覚ましたら注意しとかないと。


ヒョイ


ギュッ


スタスタ、ガチャ


「ただいま」


「おう、おかえリッ!?」


「悠?」


「ま、まて加耶!誤解だ!これは寝ぼけた白亜の要求でだな!決して無理矢理連れてきたとかそういうのじゃないから!」


 あ、信じてもらえない感じですか?ま、そりゃそうだよね!普段の白亜がそんなこと言うわけないもんね!ちくしょう!

 まあいい、想定内だ。とりあえずこの子降ろそう。

 てことで降ろした。


「んぅ〜、や!」


 幼児か!全く、いい加減目覚ませよな。


「ったく。子供じゃないんだから・・・」


ヒョイ


「「おい!」」


 っは!身体が勝手に!?


「あれ?加耶ちゃんだ。四谷くんもいる・・・なんで〜?」


「あのノート渡して読んで貰ったんだよ。そしたらぶん殴りに来た」


 ちょっと脚色して説明した。

 脚色した、はずなのに否定しないのかよ!え待って、本当にぶん殴りに来たの!?

 否定しろよと意思を込めて雅人を見たら、わざとらしく目を逸らされた。

 このやろう。


「ノート?ノート、ノート・・・まだ読ませないんじゃなかったの?」


「そのつもりだったけど、優香の遺書の時みたいに話さなくなる気がしたから」


「そっか・・・」


「ところで、目、覚めた?」


「え、あ、うん。・・・もうちょっとこのままで良い?」


「2人が居ること分かってて言ってるなら全然良いけど?」


 頭に?マークを浮かべて周りを見て、結局降りた。

 どうやらまだほんの少し眠気が残っていたらしく、そこまで気が回ってなかったみたいだ。

 本人の中でも今更って気があったのか、別に恥ずかしそうにはしてなかった。

 覚えてるうちにと思って寝ぼけて誰彼構わずあんなことしないように注意したら「誰彼構わずなんてしないよ?黒鉄くんだったからだよ?」とさらっと言われてしまった。

 あー、ずるい。反則。今のはダメ。


「2人ともごめん。ちょっと、ごめん」


「おー、ゆっくりで良いぞ」


「今のは結衣が悪いからね」


「え?」


 白亜は訳が分からないみたいだったが、言われた側はたまったもんじゃない。

 あー、顔熱いわー。

 結局しばらく顔から熱が引いてくれなかった。

 ようやく落ち着いてきたところでみんなの方を向いたら、さっきまでの雰囲気は何だったのか、重苦しい表情をしている。

 どうやら白亜は2人につられたらしい。


「はい、おまたせ。とりあえず、2人とも感想は?」


「ぶん殴る」


 何を?


「あんたの返答次第」


 何が?・・・あ、そゆこと。


「パーティから離れるとか言わないから安心しろ。離れても白亜は付いてくるらしいけど」


 ちょっと自嘲気味に言い放ったら、安心した表情の後、少し怒った顔をしていた。


「離れる事考えたのね」


「母さん探そうと思ってるからな」


「一緒に行けば良いだろうが」


「俺の私情だぞ?お前らには」「関係ないとは言わせないぞ」


 先越された。やっぱこいつらはこうだよな。

 全く、人の家の事情に親身になってくれるとこはおじさんやおばさんによく似てる。


「サンキュな。そういや最後のページも読んだか?」


「「え、何それ読んでない」


 だよな。やっぱそこは見ないよな。じゃあ何で知ってるかって?白亜が見つけたからだよ。

 母さんの一文を読んだ2人は、すっかり黙ってしまった。

 まあ表情は分かりやすく変わってるんだけどな。


「悠」


 雅人に呼ばれたからそちらを向いたらぶん殴られた。

 相当手加減してくれたらしいのでそんなに痛くはなかった。

 とはいえ殴られた事に変わりないし殴られるとも思ってなかったからとても驚いた。


「悠」


 加耶にはビンタされた。

 なんで?


「黒鉄くん」


「おい待てこら。その振りかぶった腕は何だ」


「え?そういう流れかなって」


「流れで殴るな。てかそういう流れでもないから」


 この子たまにそういう事するよね。ノリの良さが仇となっているというか、とりあえず乗っかろうみたいな考えがあるというか。

 普段は良いんだけどこういう時はちょっとな。これもいつか注意しよう。

 雅人と加耶は黙ったまま顔を伏せていた。

 出来ればツッコミをね、やって欲しかったんですけど・・・?


「なんで2人はそんなに暗くなってるの?」


 白亜さん?今日のあなたちょっとおかしいよ?


「黒鉄くんはそれ読んだ時バカみたいに落ち込んでたから、2人がそんな風になる必要ないよ?」


 バカみたいにとは失礼な。合ってるから言えないけど。

 まあいい。せっかく言いにくいこと言ってくれたんだ、乗っかろう。


「そうそう。強がりとかじゃなくて本当に落ち込んだから大丈夫だ」


「嘘つけ。お前、落ち込んだらうじうじ引き摺るだろうが」


「あー、それは、うん。白亜のお陰かな。今回のは」


「あんた結衣に何したの?」


「なんでそうなる!?ただ弱音吐いただけだよ!」


「結衣、本当にそれだけ?」


「私がちょっとキツめの事は言ったけど、それだけだったよ」


「「・・・・・」」


 2人は、顔を見合わせて諦めたような、安心してような表情になり、やれやれと言わんばかりに首を横に振った。

 こちらに向き直った2人の顔はとてもスッキリしていた。

 そして


「「で、本当は何があった?」」


「「何もないよ!」」


 通常運転に戻って、俺と白亜を弄りにきやがった。

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