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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
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一難去ってまた一難


食堂に行くと、もうみんな集まっていた。

 まだ時間には少し余裕があるはずなんだけど・・・。


「悪い。待たせたか?」


「いや、大丈夫だ。そもそもまだ時間じゃないしな」


「もういいのか?」


「ああ」


「そうか。で、あの2人は何でぐったりしてるんだ?」


 あの2人とは南雲と上月のことだ。   

 チュートリアルの後、何かあったのか?まあ俺と一緒にいるわけだから有り得ない話ではないか。いや、でもそれにしては疲れすぎじゃないか?


「チュートリアルでのゴブリンの死体が効いてるらしい」


「え?今なんて」


「ゴブリンの死体だよ」


 いや、うん。分からなくはない。分からなくは無いんだ。けど、けどな・・・


「ダメージでかすぎない?」


「オレらが受けた時との違いを考えてみろ。すぐに答えが分かるから」


「違い、か・・・」


 ・・・1つしか思い浮かばないな。

 人が多いことしか浮かばなかったのだが、これが答えになるのか?

 うーん、人が多い。でもチュートリアルは同じエリアで・・・ああ。


「目にする機会が多かったのか」


「正確には常に、だそうだ」


 なるほど、それなら納得だ。

 この2日で随分と戦って死体を目にしてきた俺でも、常に死体が視界に入っていたら気持ちが持っていかれる。

 おまけに死体を見るのなんて今日が初めてだったはずだから、ダメージにプラス補正がかかったのだろう。

 これから幾度となく目にする事になるのだが、流石に今の2人に追い打ちをかけられるほど俺も人間捨ててない。


「今自虐的な事考えたろ?」


「まさか、事実なら考えた」


「お前の場合それが自虐なんだよ」


「知るか。ところで雅人、分かってると思うが・・・」


「おう、肉は頼まねぇ」


 現在進行形で意気消沈している2人に目を向けながら、魚料理を2つ頼んだ。


 考えは同じだったらしく、白亜と加耶の分も合わせて4人前の魚料理が届いた頃に上月が立ち直った。

 遠距離構成のスキルが功を奏したのか、南雲よりはダメージが少なかったみたいだ。

 ・・・南雲は一体いくつのスキルを持っているのだろうか。

 そしていくつのチュートリアルを受けたのか・・・。

 あぁ、恐らく俺は今哀れみのこもった目をしているだろう。


「頼むから、そんな目で見ないでくれ・・・」


「・・・悪かった・・・」


 全員が半分ほど食べ進めた頃に南雲と上月の料理が運ばれてきて、少し遅れて南雲が復活した。

 そこからはグロい光景は忘れて・・・いや、忘れるように(主に雅人が頑張って)雑談に花を咲かせた。

 全員食べ終わり、各々食後のデザートや飲み物を口にしながらようやく明日の予定の話になる。

 大まかにどこまで戦うか、出発時間、そしてどういうやり方でお互い強くなるかを話し合った。

 結論から言えば出発時間は朝の10時、どこまで戦うかは白亜の様子を見ながら、やり方はその時々で判断する事になった。

 かなり適当だが、やってみないことには何一つ分からないので仕方がない。

 そのままの流れで俺たちが戦ってきた魔物の情報を南雲たちに話した。熊の話をした時は大変良いリアクションをしてくれたので、俺は満足だ。

 まあ俺が無茶をした事も白亜がちょっと怒りながら話してしまったので、南雲たちから呆れられた上にドン引きされたのだが。

 あの瞬間はあれがベストだと思ってやったのになんでこんなに言われなきゃならないんだよ・・・。


「これ以上はややこしくなりそうね。明日の方針はとりあえずこんなところでいいんじゃない?」


「そうだな。加耶の言う通り、これ以上はやめとくか。具体的にするなら続けるけど、やるか?悠」


「やらない。今くらい大雑把じゃないと動きにくくなると思うし。南雲と上月もそれでいいか?」


 2人は顔を見合わせてから顔をこちらに向けて同時に頷いた。

 どうやら大丈夫らしい。


「白亜は?」


「・・・なんで私次第なの?」


「ヒーラーはお前だけだからな」


「あ、なるほど。わかった、私もそれで大丈夫」


「よし、決まりだな」


 情報共有も済んだ。方針も決まった。ならもう解散でいいかな?

 念のためほかに何かないか確認してからにしようと思い、確認をとった。誰も何もないみたいだからひとまずこの場での集まりは解散。

 各々好きに過ごす時間になったのだが


「なんで誰一人ここから動かないんだよ」


「そりゃあやる事ないしな」


 なるほど。俺と同じってことか。

 考えてみればほとんど一日中自由な時間だったんだからやる事なんて昼間にやり尽くしてるか。

 このままゆっくりのんびりみんなと一緒に居るのもアリだな。


「ねぇ結衣。ずっと気になってたんだけど、そのネックレスどこで買ったの?」


「あ、えと、これは・・・その」


 前言撤回。今すぐこの場から消えてなくなりたい。

 だがしかしこのタイミングで立ち上がったら確実に面倒なことになる。それだけは避けたい。

 あーどうせバレるな。いや隠してる訳でもないんだけど。

 とりあえず白亜が時折上目遣い気味にこっちを見てくるので時間の問題だろう。

 ・・・いっそのこと自分から言うか?いや、白亜に任せよう。

 自分がどんな顔をしてるのかはさっぱりだが、おそらく軽く百面相でもしていたのだろう。任せると決めた途端、白亜も何かを決めたらしい。そして流石と言うべきか、雅人にはバレたっぽい。

 ので、ニヤつき始めたムカつくバカに1発デコピンをお見舞いしておいた。

 痛みに悶え苦しんでいるのを視界の端で捉えながら白亜がどう答えるか見守ることにする。

 この間約5秒。ちなみにデコピンのくだりで3秒だ。


「このネックレスは、その、く、黒鉄君に、貰ったの」


 ネックレスのことを聞いた加耶はもちろん、南雲と上月まで物凄い勢いでこっちを向いた。ちょっと怖い。


「悠が?これを?結衣に?・・・え?」


「動揺しすぎだろ。・・・そんなに変か?」


「変っていうか、想像出来ないっていうか」


「それより黒鉄。あんた何で急に?」


「あー、えーと、昨日のお礼に」


「「昨日何かあったの?」」


 女性陣が怖い!!そんなに聞いてこないで!?話せない事も含まれてるから!

 なんて答える?ちゃんと伝えようと思ったら南雲たちにも過去の話をしないといけなくなる。

 それは、ダメだ。隠すような事じゃないけど、多分この話をすると白亜が泣く。だからダメだ。


「悪い、今はまだ話せない」


「・・・分かった。いつか話して貰うからね」


「いつかな。サンキュー」


「ちょ、待ってよ加耶。それで良いの?」


「良いのよ。こうなったら悠は絶対に話さないから」


 さすが、よくわかってらっしゃる。伊達に長いこと幼馴染やってないな。

 今言ったら調子乗んなって言われそうだから言わないけど。


「加耶が言うならそうなんだろうけど・・・」


「諦めろ早苗。おれと雅人もダメだった」


「そっちは今とは違う理由だけどな」


「・・・まあ結果は同じだ」


「えぇ、アバウト・・・はぁ。もういい。諦める」


「悪いな。助かる」


 ふぅ、これでとりあえず大丈夫かな。

 これでようやく落ち着ける。


「あの・・・」


 と思ってたのに・・・。誰だよ。

 この場の誰でもない第3者の方を向いた。

 そこには例の3人組の女子がいた。



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